Weps うち明け話 文:清尾 淳

#846

勝つための我慢

 某テレビ局が日本代表戦の中継を告知するとき、「絶対に負けられない戦いがそこにある」というキャッチフレーズを使う。
 ふだんは聞き流しているが、たまにテレビの前で突っ込む。
「負けられない、じゃないだろ。勝たなきゃダメだろ」
 日本語で、絶対に負けられない、というと必死感が出るし、勝とうというときに使いたくなる。だが、厳密に言えば「負けられない」というのは、サッカーにおいては引き分けも含んでいる。それは「絶対に」という言葉をかぶせようがかぶせまいが同じだ。勝つか負けるかしかない引き分けなしの試合は別にして。
 だから、勝たなければいけない試合のときに「絶対に負けられない」と言われると、「じゃ引き分けでもいいのか」と突っ込みたくなってしまうのだ。
 だけど、それは屁理屈。言葉の意味はともかく、語感として「絶対に負けられない」というのは、イコール「勝つ」という意志に通じるものがある。イメージが大事なキャッチフレーズとして、あの言葉は悪くはないと思う。

 何で、そんな話をするかというと、先日の横浜F・マリノス戦について「レッズは負けない戦い方をしていた」という論評がかなり多いからだ。その表現自体、間違いとまでは言わないが、レッズが引き分けでも良しという姿勢でいたとしたら、正解には遠いと思う。
 11月2日の試合が終わった時点でレッズとG大阪との勝点差は2。3日の試合でレッズが勝点1を積み上げるにとどまったら、勝点3差で22日を迎え、G大阪は直接対決でレッズに勝てば得失点差で首位の座を奪うことになる。
 そういう状況にはしたくない。レッズはどうしても、1試合分より多くの勝点差をつけたかった。だから、どうしても横浜Mには引き分けでなく勝ちたかった。引き分けは常に視野に入れているし、試合の推移によってはドローやむなし、という状況も出てくるが、あの試合は最初から「引き分けでも良し」というシチュエーションでは、とうていなかった。

 しかし横浜M戦の前半は、攻撃に得点の匂いがあまりしなかったことは間違いない。#845にも書いたので繰り返さないが、レッズの守備がより必死だったことで、「負けない戦い方」と思われたのかもしれない。だが、レッズを良く見ている人ならそんな結論にはしないだろう(自慢か?)。
 横浜M戦は、言うならば「絶対に失点しない戦い」をしていた。
 なんだ、同じじゃないか。
 違う。
 先制されると試合運びが苦しくなる。特に守備が強い横浜M相手には、絶対に先に失点してはいけない。その意識が前半の戦いぶりになったが、それは「負けないため」ではなく、「勝つ」ためだ。
 この試合の前まで、レッズの無失点試合は全部で15試合。そのうち7試合が1−0だ。0−0で我慢していれば、必ず点を取って勝てる。選手たちにはその信念がある。甲府戦のように、0−0のまま終わってしまった試合も2試合あるが、それも最後まで得点を目指していた。
 どうしても勝点3を取るために、絶対に失点しない戦い方をした。それが横浜M戦のレッズだったと思う。
 ここまで一緒に闘ってきたサポーターもよくわかっていた。
 だからこそ、関根のゴールが生まれたときの喜びの爆発ぶりはすごかった。

 我慢の時間は我慢する。すべては、その先にある勝利のために。それがチーム全員はもちろん、スタンドのサポーターにも浸透しているのが、浦和レッズの最大の強みだと思う。

(2014年11月12日)

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