Weps うち明け話 文:清尾 淳

#856

美園からの道、美園への道

 13日、埼スタで今季の新加入選手記者会見および新ユニフォーム発表会があった。
 出掛けになって、車のトラブルがあり、急きょ電車で行くことにした。
 考えてみると埼スタへ行くのに、浦和美園駅から歩いたのはおそらく10回もないはずだ。試合の日は機材があるから駐車券をもらって車で来るし、試合でない日は駐車券がなくても大丈夫だからやはり車だ。サポーターを撮影するというような特別な用事か、今回のような事情でもなければ、歩くことはない。

 風が強くて帽子が飛ばされるかもしれなかったので、ややうつむき加減で早足で(そういうときは、いつも木枯らし紋次郎のサブテーマ曲が頭の中に流れる)、歩行者専用道路を歩いていると、道路のところどころに茶色の染みがあるのに気づいた。試合のときにたまに歩くときは、周りを見ているので気づかない場所だった。
 おそらく油染みか何かだろうと思ったが、ふと「レッズサポーターの汗か涙が重なってこんなに濃くなってしまったのかも」などという、あり得ないことを思い浮かべた。さすがに、文章にするにも恥ずかしい陳腐な表現だ。
 だが、そう思ったとたん、誰も歩いていない歩行者専用道路に、埼スタに向かう大勢のレッズサポーターの姿が浮かび上がった。仲間連れ、親子連れ、年配のご夫婦、黒いTシャツにサングラスのコワそうなお兄さん、中学生か高校生のグループ…。
 いま自分たちが向かっているスタジアムで、これから繰り広げられる試合へのワクワクする期待、あるいは闘う気合などを抱きながら、約20分の道のりを月に何回か歩く。ホログラムのように僕の前に現れた人たちの心情を思い浮かべた。

 そして、もっと強く思ったのは、昨年何度、行く道に抱いた思いが遂げられたのだろうか、ということ。
 埼スタから浦和美園までの帰り道、どんな心情で約20分(帰りは込むからもっと時間がかかるか)を歩いたのだろうか。決して満足のいく結果の試合ばかりではないことはもちろんだ。特に11月22日の、行きと帰りの落差が思いやられた。あるいは最終節の行きは11月22日ほど大きな期待ではなかったかもしれないが、帰りはそれをさらに下回る無念さがあったはずだ。

「埼玉スタジアム2002」の看板が見えてきたころ思った。
 今日は、公開記者会見だからファン・サポーターがこの道を歩いてスタジアムに向かうだろう。その人たちが抱いている期待を上回るほどの喜びを、今シーズンの最終節に持ってもらって帰り道を歩いてもらいたい、と。それが浦和レッズの責務だ。

 記者会見が終わって抱いた一つの感想。
 平日のこの時間に多くの人が来られるわけではないが、集まってくれたファン・サポーターの前で新加入の選手が一人ひとり挨拶し、抱負を述べる。その際に送られるナマの声援や拍手は、この日が実質レッズ初日となる選手たちにとって、心地良い響きだろう。
 ファン・サポーターへのサービスとして行われている、この公開システムだが、逆に選手たちにとってもプラスになっているように思う。
 この日だけは、来た道で抱いた期待をもっと膨らませて帰ったファン・サポーターがほとんどだったと思う。
 今季のすべての試合日でも、そして最終節でも、帰り道に多くの人が満面の笑みを浮かべていることを願う。そのための努力を誓う。

EXTRA
 1月31日(土)に予定していた「2015レッズサポーター開幕準備集会」は、10日の段階での申し込みが少なかったので、取りやめにしました。すでに、申し込み者には個別にメールしましたが、参加を考えてくれていた方々にもお詫びします。

(2015年1月13日)

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