Weps うち明け話 文:清尾 淳

#871

最終節前日

 大学が法学部だったのだが、先輩から「刑事訴訟法をよく理解するには、逮捕・起訴されるのが一番いいよ」と冗談で言われていた。
 その機会は、まだ訪れていないし、早々に法曹界を職業の目標から外したために、刑訴法はあまり覚えていない。

 しかし、今季から始まった2ステージ制については、よく知っている。
 正直に言えば、詳しく調べたのはG大阪やF東京に勝って首位を維持し、ステージ優勝の現実味が増してからだ。書けば非常に面倒だが、概念としては理解しているから、説明しろと言われればできる(と思う。先々週もNHKで話した)。万一、レッズがステージ優勝にまったく絡まないような成績だったら、この知識はなかったのではないか。

 今日はまだ大原に行っていないから、新潟戦の前日の様子はまだわからないが、先週の1stステージ優勝以来、チームの雰囲気はあまり変わっていないと思う。最近、話題になった言葉を使えば「粛々と」というやつかもしれない。まあ、森脇がいると「粛」という文字は似合わないが。

 これが04年より前なら「まだリーグは続く」「2ndも獲る」とは言いながらも、もっと大きな満足と達成感を味わっていただろう。当時は、これでチャンピオンシップへの出場権を得たわけだし、もし完全優勝を狙って失敗しても、5割の可能性は残る。他の17チームに比べて大きなアドバンテージで2ndステージに臨めるからだ。
 しかし今季のステージ優勝は違う。アドバンテージはあっても、その度合いは低い。
 20日(土)の表彰式で、優勝バナーと優勝トロフィーの間に、「チャンピオンシップへの招待状(ボード)」が阿部に手渡されたが、そこに書かれている文字は、
「CHAMPIONSHIP FINALS 2015.12.02/12.05」
 おいおい、今日の優勝で行けるのは11月25日の1回戦だろうが、と言いたくなる。

 選手はみんな、今季の1st優勝の価値を正確に知っているから、ひと通り喜んだ後は、また日常に戻って練習している。いや、いつもより「次が大事」という意識は強いかもしれない。

 ここで嫌な経験を挙げる。05年のナビスコ杯だ。
 当時のレッズは予選リーグで第5節までに決勝トーナメント進出を決め、第6節が良い意味で消化試合になった。アウェイの新潟で行われた最終節、レッズはメンバーをだいぶ替えて臨んだ。
 その試合に、それまで出場経験の少ない若い選手を多く使ったことは間違っていなかったと思う。勝敗を気にしなくていい公式戦など、めったにない機会なのだから。だが、若い選手を使ったゆえか、勝敗を気にしなくていいという状況のためか、試合は0-3で敗れた。おそらく後者の要素の方が敗因として大きかったのではないか。

 明日の試合は、優勝が決まった後の新潟戦、という意味で10年前と似ているようだが、実際はまったく違う。
 結果がどうなろうと1stステージの優勝は動かないが、もはやそれは興梠が言うように「どうでもいい」こと。一時は7差あった2位との勝点差が現在5になっているが、それを維持するための大事な試合だ。
 そして、その勝点差を貯金としておいて、ゼロから2ndステージに臨む。
 2ndステージに入ると、ステージの順位とは別に年間順位が気になるが、レッズはただ2nd優勝だけを狙えばいい。それが年間勝点1位を狙うことになる。もし2ndを逃したとしても、優勝チームとの差がわずかなら貯金にモノを言わせることができる。
 シーズンの最終節とは違うが、明日の1stステージ最終節は、その貯金高に大きく関わる試合だ。絶対に勝って欲しいし、そのためにいつもどおり臨んでもらいたい。
EXTRA
 というわけで、明日のMDPは、意外なくらい「いつもどおり」だ。「優勝記念」特集は他の新聞・雑誌にお任せする。
 そうか、いま気がついた。今季からのレギュレーションだと、MDPの通常号でリーグ優勝の喜びを思い切り満喫するのは無理なのだ。うん、どうしても特別号を出したい。

(2015年6月26日)

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