Weps うち明け話 文:清尾 淳

#875

運のことを言うと

 サッカーには運不運が付きものだ。
 多少の不運など関係なく勝ち倒す強さや、多少の幸運があっても勝てない弱さ、というのもあるだろうが、それほど大きな力の差がないチーム同士の試合――たとえば今のJ1リーグなどでは、運不運が結果を左右することもある。
 試合の中で運と不運はどちらかのチームに偏ることなくやってくると思うが、たまには55対45とか60対40ぐらいに天秤が傾くことがあるかもしれない。そして相手の不運=こちらの幸運のときにそれを生かせば得点=勝利につながるし、逆にときにミスがでれば失点=敗戦につながることになる。

 チームの結果が良くないときに運不運の話をするのは、言い訳にしか聞こえないから好きではないのだが、第2ステージの5試合を終わり、この中断の間に少し落ち着いて考えたことがある。運営会社が夏季休暇に入る前に、できるだけ書いておこう。

 高木俊幸は第1ステージで途中出場が多かったが、第2ステージでは梅崎の離脱もあり、第2節の山形戦で途中出場すると、翌節の広島戦から第5節の甲府戦まで3試合連続で先発した。知ってのとおり、広島戦では関根のゴールにつながるパスを出し、名古屋戦でも柏木に出した好パスがオウンゴールにつながった。点には絡んだが自身のゴールはなく、広島戦では自分が得たPKを蹴って失敗するなど、「不運な高木」が目立った。
 FWの選手をMDPの表紙にするときは、点を取ってから、という意識が僕の中にあり、そういうわけでこれまで高木は表紙の対象になっていなかった。しかし今回は考え方を変え、肉薄しているゴールへの最後の壁を破ってもらおうと期待を込めて、甲府戦でMDPの表紙になってもらった。とにかく何かを変えたい、という気持ちだった。
 だから甲府戦の前半16分、立ち上がりから何度からあったチャンスに続いて、高木がシュートを放ったときは、記者席で立ち上がってガッツポーズをやり掛けた。ボールがバーに弾かれたときは、上げた手をそのまま頭に持っていって抱えた。
 バーやポストに「嫌われた」というのは、あくまで表現方法であり、実際にはわずかにコースが外れているから入らないのだ。全く同じコース、同じスピード、同じ回転でバーに当たったボールが、そのときによって中へ入ったり外へ弾かれたりすることはないだろう。「全く同じ」という検証はできないが、運不運というより、蹴った瞬間に入るか入らないかは決まっているはずだ。

 しかし、このときは「高木って何てツイていないんだ!」と心の中で思ったものだった。
 結局、高木は甲府戦で今季リーグ戦初めての先発フル出場を果たしたが、レッズでの初ゴールは生まれなかった。そしてチームも、前半に阿部がPKを決め先制したが、後半追いつかれて、そのまま引き分けた。連敗はストップしたが、第1ステージでは全勝したホームで、追いつかれてドローというのは、上向きとは言い難かった。
 中断期間に入り、少しゆっくり考えて、本当に今のレッズは不運に見舞われていると思った。
 何かと言うと、高木のシュートがバーに弾かれたのは先述したように仕方がないにしても、約1か月前には同じような形でリバウンドを武藤が決めていたではないか。第1ステージ最終節の新潟戦、前半21分だ。その試合で武藤は後半5分にも興梠のシュートがポストに弾かれたのを詰めて2点目を挙げている。しかも武藤のシュートも一度はポストに弾かれ、ほぼ真横に飛んで反対側のポストに当たってゴールインした。あれほど「ポストに好かれた」ゴールは見たことがない。
 シュートがバーに当たって跳ね返り、近くに味方も大勢いる。そのときに、どの選手の前にどのタイミングでボールが転がるかは、試合では運に任せるしかない。そこが新潟戦と甲府戦では大きく違っていた。
 
 もう一つある。
 新潟戦でPKを決めて先制していた興梠は、後半12分、柏木のスルーパスに抜け出し、GKと1対1になった場面で冷静にシュートを決めた。4−0と相手を圧倒するゴールだった。
 一方、甲府戦では後半20分、武藤のスルーパスに抜け出した興梠がGKと1対1になった。やや体勢が崩れたものの、シュートのうまい興梠なら決めていておかしくなかった。しかし、それがGKにセーブされ、跳ね返ったボールは甲府の選手にわたり、そこからロングパスを送られ同点ゴールを決められたのだった。片や試合を決定付けるレッズの4点目となり、片や試合を振り出しに戻す相手のゴールにつながった。シュートがセーブされるかどうかも運不運があるが、さらにそのリバウンドがどこへ飛ぶかで状況ががらりと変わったのも、甲府にとって幸運。レッズにとって不運だった。

 まだある。
 その幸運な展開を、甲府の伊東がしっかり同点ゴールにしたのだが、そこでもレッズにとって不運があった。伊東についていた岡本が切り替えされて相手に右手を掛けた際に、肩がはずれ転倒してしまった。衝撃のある接触には見えなかったので、初めは脚がつったか肉離れしたのかと思った。そうではなく肩の脱臼とは不運以外の何物でもない。しかも、過去に二度脱臼している左肩ではないのだから。
 岡本は、この試合そこまでほぼ完璧に守っていたし、前半は攻め上がりも見せて先制点となるPKも取っていた。あのまま1−0で勝っていれば、試合後にインタビューされていただろう。本人は「チームに迷惑を掛けた」と語っていたが、失点の場面は不可抗力だった。脱臼がなければ、あんなにきれいなシュートは打たせていなかっただろう。岡本本人とチームにとって不運だった。
 岡本は森脇の出場停止があって先発したわけだが、その出場停止の理由となった名古屋戦の退場処分は、「微妙」を超えた不可解な判定によるものだった。岡本にとって先発出場が回ってきたこと自体は不運ではないが、結果を見ると名古屋戦の不運がまだ尾を引いていたとも言える。

 運の悪さばかり嘆いていても仕方がない。
 冒頭にも書いたが、不運など関係のない強さを身に付けたいものだし、その前に幸運を呼び込む動き――たとえばリバウンドやセカンドボールを先にコントロールするには、読みと運動量が必要だが、それを取り戻したい。その力は相手の幸運を自分たちの失点にしないためにも欠かせない。
 この中断期間を、仕切り直しの単なる「仕切り」にするのではなく、しっかり強運体質に「直す」期間にして欲しいものだ。

 ところで、こう書いてくると、今のレッズの運は下降線をたどっており、傾向として良くないと言っているようである。僕も途中まではそうかな、と思っていたが、甲府戦のアディショナルタイムにあった大ピンチを西川が右足で防いだ場面。もちろん西川の能力の高さがモノを言ったのだが、西川は相手のシューターが完全にフリーなときより、味方のDFがついている方が決められることが多い。ブラインドになったり、タイミングが計りにくかったりするからだろう。このアディショナルタイムの場面も味方のDFがついていて「ブラインドだった」(西川)のだが、そのシュートをセーブしたのは、運が戻ってきたと言えるかもしれない。

(2015年8月3日)

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