Weps うち明け話 文:清尾 淳

#880

誇りある決意

本当に啓太らしさを感じた。

 昨季は坪井慶介が、一昨年は山田暢久が、2012年には田中達也が契約満了となった。
 経験ある選手の去就に関することは、いつの間にかメディア関係者の知れるところとなり、つかんだメディアはそれが「特ダネ」のうちに報道しようとする。限られたメディアだけで流れる情報は、サポーターを動揺させ、後追い取材が殺到することでチームを刺激する。そういう現実を何度か見てきた啓太は、特にファン・サポーターを混乱させたくない、という思いが強かった。だから、レッズを今季で離れることを自分から発表した。

 自分の去就問題でシーズン最終盤の戦いに向かうレッズに悪影響を及ぼしたくない、という思いは、10月21日(水)の大原での囲み取材ではっきりと伝わった。
 16年の中で一番の思い出を問われると「そういうことは終わってから何か感じるものがあると思う。いま考えていることは、とにかくタイトルが獲りたいということだけ。できれば、素晴らしい16年間の中で、選手としてレッズでの最後のシーズンを強く刻み込みたい。まずは、残りの試合を良い形で戦いたい」と、この時期に過去を振り返ることを拒み、さらに来季のことについても「いま集中しなければいけないのは、シーズンが終わるまでしっかり戦うこと。その後に考えても十分時間はあると思うし、そこに気を取られる必要もない」と、この話題を封印した。

 今は、16年間の過去も、来季以降の自分も、語るときではない。とにかくチームがタイトルを獲るために、浦和レッズでの残りの選手生活を捧げる。その決意を啓太はこう表現した。
「優勝できるのであれば、僕はサッカーができない体になっても何も問題ないと思っている。足がとれても、手がとれても(構わない)、そのくらいの気持ちで最後まで戦いたい」

 ここ2〜3年、啓太がしみじみとした口調で「優勝したいですよ」と心情を吐露するのを耳にしてきた。J2時代の2000年に加入し、J1昇格、その後のタイトル獲得の原動力となってきた啓太は、もう一度優勝することをレッズでの現役生活の「締め」にしたいと考えるようになったに違いない。
 今季がその最後のチャンスになったいま、直接ピッチで戦う機会は少なくなったが、自分の持てるものすべてをチームの優勝のために注ぎたい。
 今の鈴木啓太はそれしか考えていない。

 もう一つ。忘れられなくなりそうな言葉がある。

 チームを辞める決意をした動機を問われて、トップコンディションでなかなかプレーできないことを啓太は挙げていた。
 大原に行っていると、練習試合や紅白戦で「さすが」と思わせる啓太のプレーを何度も見せられる。その部分を切り取れば、リーグ戦で先発して何もおかしくないと思われた。しかし、そのベストのプレーが「常に」出せるか、「公式戦で」出せるか、「90分」出せるか、と言われると、僕にはわからなかった。
 人によっては、自分の「最大瞬間風速」「最長到達点」、つまり自己ベストをアベレージと勘違いしてしまうことがある。そう思いたくなる気持ちはわかる。
 だが啓太はこう言う。
「浦和レッズは、Jリーグでトップを争っていくチームで、アジアのトップを目指していかなければいけないチーム。今の自分はレッズの選手として戦うレベルにはないと思った」
 プロ選手として、一番認めたくないことだろう。そう口にするには勇気がいっただろう。それをはっきりと述べた啓太に心から敬意を表する。
 そして、これから浦和レッズで戦う選手たちすべてに残したい言葉だ。
「浦和レッズの選手として、恥ずかしくないプレーをしているか」と。

 今は啓太の思い出も将来も語らない。啓太の誇りある決意を最大限大事にしたい。そのために、明日のFC東京戦を絶対に勝ちたい。

(2015年10月23日)

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