Weps うち明け話 文:清尾 淳

#891

今さらだが言っておかないと

 ちょっと昨季の振り返りから横道にそれます。いや、振り返りは振り返りだけど、レッズではなくJリーグの2ステージ制について。

 もう「2ステージ制」と呼ぶことさえ、違うような気がする。
 2004年まで行われていたJ1リーグの方式は、1stステージ優勝チームと2ndステージ優勝チームが戦ってチャンピオンを決める、という正に「2ステージ制」だった。年間勝点で1位だったチームが、どっちのステージでも優勝しなかった場合に何の救済策もないのが欠点だったが、もともと通年制のリーグを変更すること自体に無理があるのだから、仕方がない。それに当時は「両ステージ共に同じチームが優勝した場合はチャンピオンシップを行わず、そのチームが年間王者となる」という、至極まっとうなルールもあった。

 新「2ステージ制」スタート2シーズン目となる今季、早くもレギュレーションの変更があった。
 チャンピオンシップ出場資格の優先権を、昨季の「年間勝点1位→ステージ優勝(年間勝点が上の方が優先)→年間勝点2位・3位」から「年間勝点1位・2位・3位→ステージ優勝(年間勝点が上の方が優先)」にするというものだ。「わかりにくかったから」というのが変更の理由だが、もともとわかりにくいレギュレーションなのに、何を今さら。

 だが、たしかにこれでスッキリした。
 2015シーズンも、ステージ優勝だけでチャンピオンシップに出場したチームはなく、「ステージ優勝!」とメディアが騒いだわりには、ステージ優勝の価値は実質的に高くなかった(賞金は大いにありがたかったが)。そのことを、ルール変更で明確にしたものであり、「2ステージ制」という呼び名はもはやふさわしくない。
 今のJ1リーグは、18チームで全34節の長い予選リーグを行い、上位3チームがノックアウト方式のプレーオフでチャンピオンを決める、というものだ。ただし4位以下のチームでも(16位以下を除き)、どちらかのステージでトップの成績を出していれば、チャンピオンシップ1回戦で2位か3位のチームに挑戦できるという特別措置があるが、それが適用される可能性は高くない。

 僕は、通年制のリーグに戻す以外には、どんな改革も小手先のものであり、何をどうしても五十歩百歩だと思っているのだが、昨年の末に、テレビで何人かの解説者が「チャンピオンシップ、盛り上がりましたね」と発言しているのに驚いた。
 チャンピオンシップが盛り上がるのは、初めからわかっている。
 ふだんプロ野球をあまり見ない僕も、クライマックスシリーズの最後や日本シリーズの結果は気になるし、たまたま家にいるときにテレビでやっていれば見るかもしれない。
 議論の焦点はそこではなく、チャンピオンシップ2~3試合に世の注目を集めるために、それまでの34試合の価値を下げてしまっていいのか、と言っているのに、チャンピオンシップだけの注目度や面白さを取り上げても、根本的な議論から外れてしまう。

 もう一つの変更点は、チャンピオンシップで、規定の試合時間を終えて同点の場合は、延長、PK戦を行わず、年間勝点上位チームの勝ちとされること。
 このことについて、どっちが妥当だと言う気はない。だったら最初からそうしておけばレッズが決勝に出られたのに!と目をむく気も全くない。言いたいことは2つだ。
 まず、J1昇格プレーオフでこの方式が何年も試されていたのに、2014年までの議論の段階で導入は検討されなかったのか、というのが不思議でならない、ということ。
 そしてこの変更は、上位チームのアドバンテージを高めたものとされているが、延長をなくしてテレビ中継の時間をはっきりさせるため、というのが本音ではないのか、ということだ。

 2015年のJリーグの総入場者が1,000万人を超えたという。
 昨年までなかったチャンピオンシップの3試合(約9万人)を入れないと、8ケタには届かないのだが、それを除いても過去最多入場者があったようで、それは非常に喜ばしいことだ。
 ただ昨季から導入されたリーグ戦の新方式の影響が出たとはタイミング的に考えにくい。逆に、2ステージ制の検討がされ始めた2013年からの各クラブの努力が実を結び始めた、と考える方が妥当なのではないだろうか。

 これからもリーグ戦の方式についての議論は、より高まっていって欲しい。
 長いものに巻かれないで。

(2016年1月23日)

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