Weps うち明け話 文:清尾 淳

#896

同じ日

 基本的に朝ご飯は食べる方だ。というよりも朝から食べないと落ち着かない。できることならご飯と味噌汁がベスト。でなければ、うどん・そば。それが無理ならパンでもいいが、とにかく腹に何か入れたい。朝は結構早起きなので、6時ごろから仕事をしているが、朝ご飯を食べずにずっと仕事をしていると、何か中途半端な気分で、1日が始まった気がしないのだ。

 ちょうど今がそんな感じだ。何かというと、リーグ戦のホームで勝利がないこと。
 ACLの開幕戦で勝ち、埼スタで「We are Diamonds」を歌ったし、Jリーグの開幕戦でも柏に勝った。もうシーズンが開幕して勝利も挙げているのに、リーグ戦のホームゲームで勝たないと、何だか100パーセント始まった気がしない。大相撲でいうと「初日を出す」というやつだ。僕の感覚ではホームでの勝利が「初日」なのだろう。

 2011年も初日が、なかなか出なかった。
 負け続けたわけではない。3月6日(日)にアウェイで神戸と開幕戦を行って敗れ、12日(土)に埼スタで第2節・G大阪戦を控えていたが、その前日に起こった東日本大震災でJリーグが長期中断し、再開したのは4月24日(日)だった。日程も変更され、名古屋との第7節がレッズのシーズン第2戦となり、埼スタで3−0の完勝を収めた。そう意味で2011シーズンのレッズの「初日」は4月24日までお預けだったのだ。

 5年前の3月11日からの数週間。いろんな体験をした。僕の周りに地震による直接の被害はほとんどなかったが、間接的な影響は知ってのとおり大きく、不自由な生活も経験したが、あのころは、そういう不便な中にありながら、もっと比べものにならないくらいの環境や人生の変化を余儀なくされた被災者に対して、日本人てこんなに優しかったのか、と思えるほど、みんな自分にできる支援をしたのではないか。自分自身に関してもそう思う。

 だが、それはなかなか長く続かない。僕も、あのころはコンビニなどで小銭が出ると当然のようにレジの横の募金箱に入れていたが、今はそうしていない。節電の意識は今もあるが、ときに野放図になって忘れてしまうこともある。
 そういう意味では、テレビや新聞を中心とするメディアで「3.11」が近づくといろいろな特集を組んでくれるのは、正直言ってありがたい。忘れてはいけないとは思っていても、日常生活の中で優先順位が低くなっていたものを、また上位に戻してくれるきっかけになるからだ。
 特に今日は、5年前の記憶が蘇ってくるJリーグサポーターが多いのではないか。
 アウェイ遠征の準備をしていた人。あるいはすでに出発していた人。ホーム開幕に備えてダンマクを用意し、新しいレプリカを袋から出していた人。3月11日が試合の前日になるのは、あれ以来初めてなのだから。特にレッズはホームゲーム前日だから、僕はこの3年間とはまったく違う「3.11」を迎えている。
 いま14時16分。正直言って、あの時間になるのが少し怖い。それほど、鮮烈な記憶だった。

 東日本大震災を、後世にどう伝えていくか。
 いまのうちはまだいい。それぞれ程度や状況が違うにしても、ほとんどの人が自分の体験として「3.11」を知っているから、どんなきっかけでも、それを思い出すことができる。
 だが、あと10年、15年すれば、当時のことを知らない大人が増えてくる。記録でしか「3.11」を知らない人たちが親になり、教師になり、政治家になっていく。だから、あらゆる形で残さなくてはならないと思う。今は映像や画像の記録メディアも発達しているし、文章や音での残し方も容易になっている。多くは行政やメディアに頼るにしても、自分たちでしかできないこともあるのではないか。レッズサポーターにはレッズサポーターなりに、未来の「同志」に残すものがあるかもしれない。
 特別な、5年前と同じ「3.11」を迎えて、そう思った。来週、提案したい。

EXTRA
「サッカーができる幸せ」「Jリーグがある幸せ」ということが当時言われた。
 そのとおりだと思う。自然災害に限らず、日常からサッカーやJリーグがなくなるような事態は絶対に嫌だし、それが人智による動きだとしたら、断固として反対する。
 だが、Jリーグがこのまちに、浦和にあることを前提として、その上にある幸せを我々は求める。
 明日のホームゲーム。絶対に勝とう。

(2016年3月11日)

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