Weps うち明け話 文:清尾 淳

#910

プラスはプラスとして

 小田嶋隆さんが自著の中で「読者は誰も(休載の)弁解なんかを聞きたいと思ってはいないのだし、(中略)弁明や申し開きみたいな非コラム的な要素のために行数をついやすのは愚の骨頂…」と、ある回の冒頭で「弁明」していた(「小田嶋隆のコラム道」/ミシマ社)。

 僕も何日か(何十日か)、このコラムがあいたときに、釈明から入ることがあるが、今回はくどくど言わなくてもいいかもしれない。ここの読者なら。いや、そもそも10日間、ここをのぞくこともしなかったのではないか。
 最初に、僕の10日間もみなさんと同じ心境だったと言っておこう。
 その上で、今季のレッズをシャアシャアと振り返っていこうと思う。最大の目標が潰えてしまうと、他に獲得したすべてのことが無意味に感じられてしまうが、それは正しくない。プラス100点とマイナス100点で差し引きプラスマイナス0、というのとは違う。今季のプラスはプラスとして残っている。マイナスのダメージもしっかり続いているのだが。

 今季、最もレッズの強みを感じたのは、チームの誰かが不調または不在のときに、別の誰かがそれを埋める、あるいは埋めてあまりある結果を出したことだ。

 たとえば、5年連続2ケタゴールと通算100ゴールを達成した興梠慎三がリオ五輪で不在だった4試合、武藤雄樹と李忠成の2人で計7得点し、不安視されていた五輪期間中を全勝した。武藤は、その直前の大宮戦で挙げたゴールがリーグ戦12試合ぶりと調子が上がっていなかったにもかかわらず、だ。ちなみに、この興梠不在の時期に高木が先発起用され、チームへのフィット感を高めていった。またリオから帰国してからの数試合「燃え尽き症候群」(興梠談)で不調だったが、その高木がルヴァンカップ準々決勝2試合で得点にアシストに大活躍した。高木は、興梠が不調から脱却したF東京戦以降も好調を維持していた。興梠の不在および不調が、結果的には高木をレギュラー格に引き上げたわけだ。

 那須大亮は、遠藤航に3バック中央のポジションを奪われた格好だったが、もちろん腐ることなどなく、練習で凄まじいほど自分を追い込んで出番に備えていた。1stステージ最終節の神戸戦で、出場停止の槙野に代わり森脇が左へ、遠藤が右に回り、那須が中央で今季初先発。その試合で遠藤が右手を痛めて欠場した2ndステージ開幕の福岡戦でも那須が先発し、セットプレーからゴールを挙げた。槙野の退場によりレッズが10人になり、PKで先制された20分後の貴重な同点弾だった。槙野が出場停止の第2節・柏戦でも2−0の勝利に貢献した。遠藤が不在の五輪期間を迎えても、もはや3バックには何の不安もなかった。

 駒井善成のリーグ戦初先発は1stステージのG大阪戦。次の広島戦でも出番が来たがいずれも黒星だった。最終節の神戸戦は先発で勝利したが途中交代。次の先発の機会は2ndステージの川崎F戦、神戸戦だったがいずれも敗れた。なかなか結果に結びつかなかったが、出場時間が長くなってコンディションを取り戻してきた。残念ながら梅崎がケガで長期離脱したことで左右のワイドは宇賀神、関根、駒井の3人の中からチョイスされることになった。その後、槙野がケガあるいは代表で欠場した試合では宇賀神が左DFを務め関根が左ワイドに、駒井が右に入った。槙野がケガから復帰した試合では関根が警告累積で出場停止。終盤3試合は宇賀神がケガで欠場した。こうしてチーム事情が駒井に先発の席を用意してきた。そして徐々に得点に絡み出した。 

 ベンチ入りは18人、先発は11人と決まっている。同じポジションの2人がいかに拮抗していても、1人しか選ばれない。誰もケガせず、出場停止にもならず、調子を落とさず、代表にも選ばれず、それで勝利が続いていけば、全く顔ぶれは変わらないかもしれない。だが、そうはいかない。メンバーを変更せざるをえない状況になったとき、代わりに出た選手が遜色のない活躍をする。それは偶然ではなく、それだけ選手たちが高いレベルで競い合っているからだ。そういう意味では「メンバーを変更せざるをえない状況」というネガティブな表現は正しくなく、「違うメンバーを自然に起用できる状況」と言い換えた方がいいかもしれない。

 今季は、いろいろな顔ぶれのレッズを楽しませてもらった。

(2016年12月14日)

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