Weps うち明け話 文:清尾 淳

#912

年末年始

12月31日(土)
 パソコンの調子がおかしくなった。何をどうしたわけでもないのに、画面が小刻みに揺れて、あらゆるキーが利かなくなった。ハードディスクの作動を示すランプは消灯したままで、「Ctrl」+「Alt」+「Del」を押しても無反応だった。もう電源を切るしか手段がなくなったが、一応説明書を見るとメーカーの「相談センター」というところが「365日」とあったので電話してみた。
 こういう電話はたいてい丁寧な言葉遣いの「ただいま電話が大変混み合っております。このままお待ちいただくか、しばらく経ってからお掛け直しください…」という録音が流れ、「じゃ、いつなら通じやすいかも言ってくれよ!」と突っ込みたくなるのだが、今回はほとんど待たずにオペレーターと話ができた。そして、オペレーターの指示に従って操作を進め、何かを削除して何かを入れ直したら(このあたりをおぼえていないのが情けない)正常に戻った。非常に助かったし、それが大晦日だったことで、ありがたみが2倍になった。

 実は、数日前にプリンターの調子がおかしくなり、これは修理しかないと思って説明書を見ると、そのメーカーは修理の受付自体が年末年始は休みだった。まあ、それが世の中で一般的と言えばそうなのだが、機械はカレンダーに合わせて不調になってはくれない。ユーザーからすれば、機械を使用している、「まさにいま!」のタイミングで助けが欲しい。それが土日祝日や夜間は休みだし、平日でも電話がなかなかつながらない。下手をすると電話応対窓口が見当たらずメールによる問い合わせのみ受け付けているところもある。
 そういう経験をふだんしているから、このトラブル解決は非常にうれしかった。もし解決できなくても、専門家による診断がタイムラグなく受けられるというのは、気持ち的に納得できるし、次善の対策も早く取りやすい。「お客様満足度」のアンケートがあったら「非常に良い」に◯を付けるだろう。
 そのメーカーが日本の企業であることが誇らしく、某Jクラブの親会社であることをちょっぴり残念に思った大晦日のひとときだった。

 ひるがえって浦和レッズはどうなんだろう。
 もちろん成績は万人を満足させるものではないし、クラブ経営に全てのファン・サポーターの希望や意見を取り入れることなど不可能だが、少なくともこういう対応の早さや親切度合いでは「好感度ナンバーワン」であって欲しいと思う。
 オフィシャルサイトでの告知など、昔に比べれば迅速になったが、みんなのかゆいところに手が届いているかどうかはわからない(届いていないとも断言する気もないが)。情報を「知りたい側」の立場でものを考えるというのは、けっこう難しいものなのだ。


1月1日(日)
 一年に一度だけ(たぶん)、朝から酒を飲む日だ。それがここ数十年で培った一番の正月らしさだ。ただし元日に試合のあるときは夜まで飲まない。あ、皇后杯決勝のときは、午後から飲んだか。
 しかし朝から酒を飲むと昼を過ぎた頃から猛烈に眠くなる。今年もついつい寝てしまい、テレビの天皇杯決勝は前半の途中までしか見ていない。起きたら、鹿島の選手がピッチ周りを歩いて一周しているところだったので優勝したとわかった。何だ1時間も寝ていないのかと思ったら延長だったんだね。
 記憶にあるのは、テレビ中継の解説者がやたらに鹿島を持ち上げることだった。聞いていると、天下無双、百戦錬磨、向かうところ敵なし、比類なき強豪のように思えた。
 たしかに天皇杯4回戦からの公式戦11試合を9勝2敗という好成績であり、その2敗も、結果として致命的なダメージにはならなかったチャンピオン決勝第1戦と、クラブワールドカップ決勝だけだ。11月12日からの鹿島は強かった。それは間違いない。
 そして実況のアナウンサーは解説者が鹿島を持ち上げるたびに必ず「たしかに、シーズン終盤の鹿島は強かったです」と言っていた(録画していないので、正確にはおぼえていない)。さすがNHK。正確を期すために「補足」を怠らない。「第1ステージと、第2ステージ終了後の鹿島は強かった」と言えばもっと正確かもしれない。
 
 2016年、シーズンを通して最も強かったのは浦和レッズ。それは間違いない。12月3日に、あと1点取っていたら、こんなふうに元日から愚痴ることもなかっただろうな。


1月3日(火)
 大阪の堺に来ている。全日本女子ユース(U−18)選手権。毎年、この時期はこれがあるので、年末に「1月は3日から仕事なんですよ〜」と、さも働き者のようなセリフを吐ける。
 特に2016年はアカデミー関係の取材に行くことが少なかったので、比較的あいている時期は極力行きたかった。だから12月17日〜19日の、プレミアリーグ昇格戦も行って、レッズユースのプレミア復帰にも立ち会えた。今年は無理しても取材に行く回数を増やしたい。
 さて、会場のJ−GREEN堺を歩いていると、「清尾さん」と声を掛けられた。渡辺隆正さんだった。彼は現在FC今治でジュニアユースの監督をしており、この日レッズレディースユースが1回戦で対戦するFC今治ひうちレディースを見に来たのだった。
「ひうち」という名前が付いていたので気がつかなかったのだが、そのとき初めてFC今治の育成チームであることを知った。そして一昨年、中学生でスタートしたばかりで、高校2年生以上の選手がいないということも聞いた(登録を見ると在籍はしているようだが、この大会のメンバーには入っていないということだろうか)。そういうチームが、四国の地区予選を勝ち抜いて、全国の場に出てきたことが素晴らしいし、来年、再来年が楽しみでもある。
 渡辺さんは「何点取られるか、という試合になるだろうけど、最後まで諦めないことと、1点だけでも取れと選手たちには伝えました」と言い、実際、試合は10−0の大差でレッズレディースユースが勝ったが、今治の選手たちは最後まで1点を目指して食らいついてきた。点差は開いたが、レッズの選手たちは決して楽ではなかったと思う。正直、2回戦以降のことを考えたら、これだけ強く当たりに来てくれてありがたい、と思った。

 渡辺さんと言えば、このコラムの#155「日本一」で書いたが、浦和レッズジュニアユースレディース時代が全日本女子ユース(U−15)選手権で初優勝したとき、監督を務めていた。その彼と女子の大会の場で会うことは、自然な感じがしたが、実はかなり奇遇なことに違いない。
 会えて良かった。
 あ、今治の選手が写っている写真を送ると約束したんだった。

1月4日(水)
 MDP増刊号の仕事を抱えて来ているので、ギリギリまでホテルで作業をして、会場にはレッズの試合が始まる直前に行く。
 2回戦=準々決勝の相手は日テレ・メニーナ。僕の知る限り2回戦で当たったことはない。関東大会でレディースユースが4位になったため、こういう組み合わせになるのは仕方がないが、正直厳しい相手だ。
 試合はやはり苦戦だった。決して一方的にやられたわけではないが、レッズの攻撃がうまく封じられてしまう。1人をかわしても、必ず2人目がフォローに来ていて、良い形を作れなかった。後半11分に、相手のミスを逃さずワタリユキが決めたと思ったらオフサイドだった。
 40分ハーフの前後半が終わってPK戦になったとき、僕は勝てるような気がした。80分の中でレッズのGK鈴木佐和子がファインセーブをした場面がたしか3回。それ以外にもボールにたくさん触っていたからだ。GKのコンディションはレッズの方が良い。あとはキッカーがしっかり決めるだけだ、と。
 先蹴りはレッズ。1人目は両チームが成功。2人目はメニーナが左ポストに当てて失敗。3人目は両者成功。4人目、レッズの高橋はなが決めたのでメニーナが失敗すればレッズの勝利。僕は鈴木にカメラを向けていた。キッカーがボールを蹴る音でシャッターを切る。鈴木が左へ飛ぶ。シャットアウト! 選手たちが駈け寄る! 何度もこのJ−GREENで見た光景だ。

 メニーナとは公式戦で勝ったり負けたり、互角だと思うが、この大会で勝ったのは、僕の知る限り2008年の準決勝だけだと思う。
 風が強かったせいで、なんとなく涙もうっすらと出てきたが、まだベスト4。「ここで泣いてるよ、あいつ」とは思われたくなかったので、こっそり拭った。そう、あと2試合、取材する楽しみが続く。
 そしてPK戦が決着した瞬間、ベンチから真っ先に飛び出していったケガ明けで試合に出ていない南萌華(3年生)の出番は来るだろうか。

1月5日(木)
 3日から7日までの大会日程だが、中日の5日は休み。いつも、この機会に石川県の母親に会いに行くことにしている。北陸新幹線が出来てからは浦和から加賀温泉まで4時間足らずで行けるようになったが、やはり大阪からの方が近い。
 予想どおり母はチャンピオンシップ決勝のことをくどくどと言って残念がった。たぶん加賀市塩屋町に住む年寄りで、一番Jリーグに詳しいのではないかと思う。Jリーグというより、浦和レッズに詳しいのだが。
ちなみにチャンピオンシップという大会名までは知らないだろうが、もう覚える必要もない。いかにこの制度が、生類憐れみの令かマイナンバー制度並みに理不尽か説明しようかと思ったが、耳が遠い母に理解してもらうまでに相当な体力を消費しそうだし、2017年から元に戻ることも背景を含めて伝えるとなると、さらに一苦労だ。断念した。それは村井さんの仕事だ。

 2年間だけ行われたチャンピオンシップ。2回とも出場したのは浦和レッズだけ。そして2回とも、勝点では下のチームに敗れ、本来の順位とは違う順位を記録されたのも浦和レッズだけ。
 大阪に戻るサンダーバード(特急です)の中で、またそんなことを思い出してしまった。
 鹿島の選手が「本来のチャンピオンは浦和」と発言していることには、1割の悔しさもあるが9割の好感を持って受け止めている。だからこそ2017年にはしっかり結果を出したい。
 そうだ。いっそ目標を「リーグ優勝」でなく「年間勝点1位」としたらどうだろう。
EXTRA
 明けましておめでとうございます。
 年末年始にやったこと、感じたことを書いてみました。
 本年も浦和レッズ、MDP、うち明け話をよろしくお願いします。

(2017年1月6日)

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