Weps うち明け話 文:清尾 淳

#921

二つの試験

 5月24日(水)、済州ユナイテッドとの試合を見ていて、自然と1995年の浦和レッズを思い出した。
 DFギド・ブッフバルトを中心として堅く守り、MFウーベ・バインのキラー・パスから快足FW福田正博、岡野雅行らが点を取る。93年、94年の2年連続Jリーグ最下位から、優勝の可能性を終盤まで残して3位に躍進した95年の第1ステージは、オールドファンの記憶に今も鮮明だろう。
「堅守速攻」がレッズの代名詞となり、“縦ポンサッカー”と揶揄する声もあったが、そのカウンター攻撃の威力は福田正博が得点王を獲得したことからも明らかだった。

 だが弱点もはっきりしていた。
「肉を切らせて骨を断つ」的なレッズのサッカーは、相手が前がかりになったときは威力を発揮するが、相手が敵陣に多く残っているときに、マイボールになっても、なかなか点を取れなかった。95年の前半は、おそらく相手にかつてのレッズのイメージが染みついていたこともあって、嵩(かさ)にかかって攻め込んできたのだろうが、慣れてくると、なかなかこちらの土俵に乗ってきてくれない。シーズン後半の第2ステージは8位だった。
 カウンターが利きにくい相手からどうやって点を取るかは、次の課題だった。

 今回のACLグループステージの後半になって、ラウンド16で対戦する可能性のあるチームをチェックした。
 中国の江蘇蘇寧は、ACLではグループ首位を走っていたが、中国スーパーリーグでは最下位に近かった。オーストラリアのアデレード・ユナイテッドはAリーグのファイナルシリーズに進んでおらず国内リーグは終了している。ガンバ大阪は…、まあガンバだ。
 リゾート地で知られる韓国・済州島の済州ユナイテッドはKリーグクラシックで首位を争っている。

 それぞれの国内リーグでの順位を見れば、済州が最も危険なチームということで、ガンバとの試合をテレビで見たが、たしかにカウンターが速くて鋭いチームだった。
 95年のレッズと比べていいのかわからないが、「堅守速攻」がベースのチームが、リーグ戦で一巡して首位争いをしている、というのはすごいことだと思った。そして今のレッズが、一番やりにくそうな相手だとも感じていたが、ラウンド16ではその相手と対戦することになった。

 そして今回の第1戦を見て、Kリーグ首位というのがうなずけた。
「堅守速攻」というのは、なかなか勝てないチームが、まず失点を防ぐために守備に人数を掛け、結果としてカウンターによる速攻(か、セットプレー)でしか点が取れないという状況にも使われる言葉だ。
 済州のそれは、次元が違うように感じた。
 守備陣は引いてはいるが、それはレッズの攻撃からいかにボールを奪うか虎視眈々と狙っているようで、決して守っているだけではない。またボールを奪ったら、誰が何をするのか、その役割が徹底しており、一気に形勢を逆転させる。済州が主導権を握って自分たちから攻撃を仕掛けたときの成功率が高いのか低いのかはわからないが、カウンターだけでも「Kリーグ最多得点」が納得できる。

 自分たちがボールを保持し、人数を掛けた攻撃で得点も多いが、失点も少なくない。そんな今季の浦和レッズは、済州にとって実に“おいしい”相手だろうし、特にレッズ点を取りに行かなければならない第2戦の埼スタは、済州にとって三つ星レストランのようにとらえているかもしれない。

 だがレッズも、むざむざと相手の腹を膨らませるだけの存在にはならない。
 二度目の対戦で、同じ轍は踏まない。
 第1戦0−2は、やや予想外ではあったが、今季のレッズは公式戦20試合中10試合で3点以上取っているチームだ。「1点取られたら、かなりヤバい」と言うなら、4−1で勝てばいい。4点以上の試合だって6試合の実績がある。
 また、今季のACLはアウェイでは1勝3敗だが、ホームでは3戦全勝だ。済州が「勝ったも同然」と思って取り出したナイフとフォークを奪って、相手を食ってやることは十分可能だろう。

 そして第2戦は、0−2からの逆転勝ちという、バルサ対パリ・サンジェルマンの再現(点差がだいぶ違うが)が焦点になっているが、レッズにとって大事な意義がある。
 同じタイプのチームとの戦いではない。言わば「矛」対「盾」の激突だ。あの済州のカウンターを防ぎながら2点以上取ることができたら、レッズはひと皮もふた皮もむけたと言えるのではなかろうか。それはJリーグを始めとする他のタイトル獲得に向かうときの、大きな財産になるはずだ。
   
 水曜日はACL8強を懸けた「選抜試験」であると同時に、レッズにとって「学力試験」なのだと思う。ぜひ合格して欲しい。

 なおテスト中、保護者、友人、サポーターの応援は可です。

(2017年5月30日)

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