Weps うち明け話 文:清尾 淳

#927

熱い鉄

 堀監督は「うれしさ半分、寂しさ半分」と語ったが、それは以前、浦和レッズの育成指導者として関根に関わった立場に戻った発言であり、浦和レッズの監督という立場からすれば、「痛さ」が半分で、残りの半分をうれしさと寂しさが分け合う、そんな心境ではないか。

 8月6日(日)、関根貴大の移籍を聞いたとき、力が抜ける思いだった。
 関根の海外志向は知っていたし、それはサッカー選手として大事なことだし、その日が来るのはそれほど遠くないと思っていた。7月1日(土)の広島戦で、関根が50m超のドリブルの後、決勝ゴールをたたき込んだときは、「ヤバい! ドイツに持って行かれる」と真剣に思った。翌日大原で関根に「移籍金(違約金)置いてけよ」と言ったときはまったくの冗談だったのだが、そう口にしたとたん、何パーセントかの真実味を感じてしまったのは、「言霊」というやつなのだろうか。
 そのとき関根は「そうですね。今だったら移籍金置いていけますね(笑)」と返しただけだったが、まさか、それから1か月も経たないうちに現実のものになるとは…。

 7月2日から昨日までの37日間で、
①首位との勝点差が9から14に広がった。
②ミシャ監督から堀監督に交代した。
③関根のFCインゴルシュタット移籍が決まった。
 浦和レッズに大きな変化が3つもあった。どれも受け容れがたいが、最も喪失感を覚えているのは③だ。②も喪失感は小さくなかったが、ミシャ本人も言うとおり、この世界にはあることだし、ある程度の覚悟もしていたようだ、と直近の言動に思い当たる。だが③は…。

 関根とは、彼が中学1年生の2008年から、9年以上の付き合いになる。1年生でジュニアユースの公式戦に出場し、点を取っている関根を見て、数年前の原口元気を思い出したものだった。
 このコラムの「#270」でも書いたが、関根たちの学年は非常に結束が強く、当時の池田伸康担当コーチが1年生から3年生まで持ち上がった「伸康チルドレン」だった。
 当時の僕は、クラブが発行していた「LITTLE DIAMONDS」という育成部門の媒体を請け負っていたこともあり、今よりアカデミーの取材に重心を置いていたのだが、特にこの年代が中学3年生のときは、行ける限り取材に行った記憶がある。
 たとえば2010年の8月は、15日(日)から始まった日本クラブユース選手権(U-15)の取材で何度もJヴィレッジまで往復した。17日(火)には仙台とのJリーグホームゲームが19時半から埼スタで行われたのだが、10時半からのFCみやぎバルセロナとの試合を取材してからでも何とか間に合ったし、22日(日)の清水ジュニアユースとの準決勝は14時からだったので、車ではなく特急に文字どおり飛び乗って帰り、その日の18時45分から西が丘で行われていた、なでしこリーグカップ決勝を後半から取材した。
 トップチームの公式戦取材とMDPの製作が最優先だったが、どれだけ強行軍でも可能な限りこのチームの試合を見たかったし、写真として記録して置きたかった。そう思わせる伸康チルドレンたちだったし、その魅力の中心が関根貴大だったことは間違いない。

 関根のトップチーム昇格や、1年目からの活躍、2年目からの先発出場などは、うれしさを持ちながらも、正直言えば「織り込み済み」と思っていた。もっともっと、毎試合アシストやゴールの結果を出してチームを牽引していく。関根がそんな存在になっていく確信のようなものがあった。僕は指導者ではないから、「信仰」と言った方がいいか(笑)。
 ただ一つ、それを阻むものがあるとすれば、その前に海外移籍してしまうことだった。本人の希望でもあり、クラブもおそらく認めるであろう、海外からのオファーがいつ来るか。いつか来るだろうし、来て欲しいが、今はまだ…。それが7月1日以降の僕の心境だった。
 
 正直まだ、力が抜けたような思いは残っている。だが現実は現実。切り替えよう。
 機は熟している。かつては先発して白熱した試合になると、必ず後半スタミナ切れを起こしていたのが、今季はそれがなくなった。それどころか、どこに補助の燃料タンクを隠していたんだ、と思えるようなパワーを終盤に出す。そして、あの広島戦である。またドイツ2部のシーズンはもう開幕しており、合流するなら早い方がいい。鉄は熱いうちに打て!だ。
 関根のインゴルシュタットでの活躍と来季の昇格。そして日本代表として埼スタへ帰還。それがこれから我々の楽しみとなる。

 そして関根貴大が9年半、赤いユニフォームを着ていたことを、次のMDPで記録に留めておく準備中だ。
 今日の甲府戦、勝って送り出したいのはもちろんだが、関根が我々にゴールという置き土産をくれる予感が十二分にしている。
EXTRA
 書き終えたら「Jリーグ7月度月間ベストゴール」の発表が。当然すぎるくらい当然かもしれない。この感想は明日聞こう。

(2017年8月9日)

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