Weps うち明け話 文:清尾 淳

#931

ACLとJリーグ

 11月5日、鹿島に敗れ、来季のACL出場がなくなった。
 順位表だけを見るとわずかな可能性がありそうだが、残り節の組み合わせを考えると、上位の“勝点剥奪”でもない限り、レッズは4位になれない。上位同士の対戦は「勝点の減らし合い」でもあるのだが、「必ずどちらかに勝点1以上が入る」ということでもあるのだ。
 ACLの出場権が得られない悔しさを、ここまで強く味わうのは今季のレッズが一番だろう。ACLを、まだ“罰ゲーム”的にとらえている他チームのサポーターもいそうな中で、その価値を最も早く、最も深く認めているのはレッズサポーターだと思うし、2013年以降の5年間で4回出場していることで、「ACLはあって当然」という感覚になっている。この2つだけならG大阪サポーターも同じかもしれないが、今季のACLファイナリストになっている、という現実が大きな違いだ。決勝第1戦まであと10日。そう考えるたびに「来季は…」という思いが後から付いてくるに違いない。だからこそ、今季優勝したい。優勝しなければならない。「来季は…」という悔しさを完全に塗りつぶすことはできないだろうが、それを上回る喜びと栄冠を手にしたい。

 それにしても誰もが思う。
 上海上港に勝って○○に勝てないのはなぜ?(○○に入るチームは多い)
 数えてみた。
 堀監督になってからのリーグ戦が、12試合で5勝5分け2敗。意外かもしれないが2敗しかしておらず、しかも完封負けは鹿島戦が初めてだ。良くはないが、決して悪くはない。堀監督が引き継ぐ前の12試合は3勝1分け8敗だったから、間違いなく向上している。こういう比較をすると、ミシャ前監督を批判しているようだが、そういう意図はまったくない。データとして示しているだけだ。ちなみに、その前の8試合は6勝1分け1敗と、優勝ペースだった。
 一方、今季ACLはこれまで12試合戦っている。これは比較するのにちょうど良い。12試合の勝敗は7勝1分け4敗だ。
 もちろんACLの成績の方が良いが、勝点に換算すると堀監督のリーグ戦が20で、ACLが22。いま立っている位置の差に比べれば、それほど大きな差ではない。なぜだろう。

 ACLのノックアウトステージでの負けは、負けではないからだ。別に負け惜しみではなく、ホーム&アウェイ方式のトーナメント戦では、1試合ごとの勝敗ではなく2試合トータルの得点差で勝ち上がりが決まるから、「2勝」とか「1勝1分け」なら勝ちははっきりしているが、「1勝1敗」の場合は合計得点まで見ないと、勝ちとか負けに意味はない。逆に、たとえば99年や01年のナビスコ杯準々決勝第1戦で、レッズは鹿島に勝っているが第2戦で敗れ、準決勝行きを逃しているから、あの勝ちは「勝ち」とカウントするときにむなしさを感じる(データとしては勝ちなのだが)。
 もちろん第1戦のスコアは第2戦に影響を与えるが、1試合の前半が後半に与える影響よりは少ない。試合時間が45分残っているか90分残っているかの違いは大きいし、対策を10分少々で立てるか1週間以上の時間があるかの差も大きい。ノックアウトステージに入ってからのレッズは、第1戦で必ず負けか引き分けなのに、第2戦では引き分けで延長勝ちか90分勝ちを収めているから、第1戦の負けが実質的に負けではなくなった。もしラウンド16や準々決勝の第2戦が2-1とか1-0の「勝利」だったら、逆に勝ちではなくなっていた。
 これがACLとJリーグの違い(の一つ)なのだろう。他にもいろいろあるが。

 そんな分析めいたことを言ってみても、ACLでは勝たなくてはいけない第2戦に必ず勝っているのに、Jリーグでは勝ち切れていない、という事実は変わらない。
 リーグ戦で引き分けた5試合。大宮戦、磐田戦、鳥栖戦、神戸戦、G大阪戦のうち、磐田戦を除いた4試合はみんなホームゲームだった。そのせいか内容も含めて「相手がよく頑張った」というのが客観的な評価だったと記憶している。磐田戦はエコパだったから名波監督は追い付かれて悔しかっただろうが、内容的にはレッズに押されていたと認めていた。
 決して選手がリーグ戦では勝ちきる気持ちを持っていないなどとは思わない。ACLとの違いがあるとすれば、Jリーグではレッズへの対策がかなり各チームとも深く進んでいるということかもしれない。それを上回る強さを見せていかないといけないのだから楽ではないが、そうであってこそのプロであり、優勝にふさわしいチームなのだ。

 あの5試合、勝ち切れていれば、今ごろは3位。3試合だけでも勝っていれば、3位を狙える4位にいた。
 そんな愚痴を言うのは、今季限りにしたい。

(2017年11月8日)

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