Weps うち明け話 文:清尾 淳

#932

リヤドでの楽しみ

 サウジアラビアに一緒に来ているカメラマンの今井秀幸さんに「秀ちゃん、お酒は飲むの?」と聞いたら「飲みますよ!」と答えが返ってきた。そんなに大威張りで言うことでもないと思うが(笑)、そうすると彼もずっと禁酒というわけだ。

 11月15日(水)の21時20分に成田を出発し、ドバイ経由でこちらの朝8時過ぎにリヤド到着。当然15日の日中は飲んでいないし、飛行機の中では寝るか仕事。サウジアラビアには酒がない(あるところにはあるらしいが、普通に買えたりするものではないらしい)から、もちろん夕べも飲んでいない。これで土曜日の試合が終わり、日曜早朝のチャーター機で帰るのだが、おそらく機内でもまた仕事か寝るだけだから飲まず(勧めないでね)、月曜の未明に帰宅してから寝酒で飲むとしても、通算で5日間以上、アルコールを摂取しないことになる。

 別に「飲酒日記」をつけているわけではないから定かではないが、こんなに1滴も飲まない6日間を過ごすのは、おそらく本気でダイエットしていた(3か月で13キロやせた)、97年の12月以来だから、20年ぶりということになる。
 あのときは健康診断の数値が悪く、医者に「このままだと早死にしますよ」と言われたことで、一念発起したから飲まずに済んだ。年末で忘年会シーズンだったが、コップ1杯か2杯をチビチビと2時間掛けて飲みながら付き合っていた。

 今回は、飲もうにも周りにないから、少なくとも帰りの飛行機に乗るまでは飲めない。別にこれを機会に禁酒しようとまでは思っていないが、120~130時間、アルコールを抜いたらどうなるのか。久しぶり飲む酒がすごくうまくなるのか、逆に酒を飲みたい気持ちがなくなるのか、あるいは禁酒4日目ぐらいに落ち着かなくなるのか、楽しみだ。

 中東という大きなくくりで言うと9年ぶり3度目の来訪になる。10年前のイランや9年前のクウェートをはっきり覚えているわけではないが、予想以上に暑くない。夜は涼しく感じる。長袖がないと風邪を引くかもしれないと心配になるほどだ。
 9月に代表戦があったときには相当厳しい環境だったらしいが、それから2か月も経つとさすがに中東でも変わるのか。試合はナイトゲームだから暑さの心配は思ったよりしなくて済みそうだが、やはり乾燥はすごい。昨日の夕方からの練習時は湿度19パーセントだった。これは10年前のイランと同じで選手たちは給水を十分に行わないと、持たないだろう。もちろんサポーターも同様だから気をつけて欲しい。水はドバイの空港では500mlが日本で300円と目をむいたが、サウジの空港では30円だった。この差について現地の方に聞くと、30円が妥当な値段であり、ヨーロッパから輸入したミネラルウォーターは高いという。スタジアムがペットボトル持ち込み禁止というから、準備に工夫が必要だろう。

 レッズは14日~15日の2日間ドバイで練習。16日にリヤド入りし、軽く練習。土曜日のACL決勝第1戦に備えている。時差と気候にはだいぶ慣れたようで、気温はドバイよりもやや低めだから事前調整はうまくいっているのだろう。

 ここまでのノックアウトステージ、第1戦はいずれも負けか引き分けで、ホームの第2戦で勝利することで勝ち上がってきた。第2戦では相手の長所を消すサッカーをしながら得点する、という難しいタスクをしっかりこなしてきた。そのためには初対戦となるアルヒラルの特徴をつかみ取ることが必要で、第1戦はそれが最重要課題となる。とはいえボコボコにやられてしまっては、いくら第1戦の負けは負けではないと言っても逆転勝ちの余地がなくなる。また相手の特徴を全部出させるためにも、守備にも全力を挙げなければならない。相手もレッズを十分にスカウティングしているだろうが、お互いにやってみなければわからないというところがある。

 僕自身、これまでホーム&アウェイ方式のトーナメント第1戦は、どんな結果になってもそれで決着が付くわけではないので、試合前のワクワク感はいつもの8割ぐらいだったのだが、今季のレッズの勝ち上がりを見て、別の楽しみが増えた。
 相手を丸裸にする第1戦。そんな試合が見たい。

EXTRA
 自分の20年ぶり5日間禁酒とレッズの第1戦を同じにしてはいけないが、どうなるかわからないが、どう転んでも今のレッズならそう悪い方にはならないのではないか、と思っている。全ては第2戦の勝利のためにある。
 そういう意味では僕の禁酒明けも、悪い方には行かないはずだ。そして酒を飲まない分、仕事もはかどる。それだって、第2戦の勝利に少しは貢献できると思っている。

(2017年11月17日)

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