Weps うち明け話
#108
ナンバーワン
 もうシドニー話はタイミングを逃してしまったので、一言だけ。
 なんだか知らないが、シドニーのメディアは、「金持ちレッズ」というスタンスでいたようだった。新聞にもそんな記事が載っていたし、試合前日の監督記者会見でも、オジェックに対し「浦和はアジアで一番の金持ちクラブだが」という質問があった。
 だから何だよ?それが悪いのか?石油王のポケットマネーでクラブを運営している訳じゃなく(それが悪いということでもないが)、みんなサポーターが買うチケットとグッズの売り上げ、そして多くのファンを意識したスポンサーからの収入だぞ、と思っていたが、そんな僕の低レベルな反発よりも、オジェックがちゃんと答えてくれた。
 まず「お金で成功は買えない」とピシャリ。(収入の多くは)「素晴らしいスタジアムがあり、毎回応援してくれる多くのサポーターがいるから」とサポーターに支えられたクラブであることを強調。そして「サッカーを日本でナンバーワンのスポーツにしようと支えてくれている人たちがいるから、成功しているのだろう」とまとめてくれた。

 そうか、ナンバーワンか。
 いまの日本でナンバーワンスポーツと言えば、やはり野球なんだろうか。何をもって基準にすればいいのかわからないが、たとえば試合の延べ観戦者数、マスコミの扱い、競技人口(埼玉県や静岡県は別だろうが)などで見れば、間違いなく野球が一番の人気スポーツだ。
今まで、浦和レッズを日本で一番にしたいとは思ってきたが、サッカーを日本でナンバーワンにしようとは正直言ってあまり考えたことがなかった。だけど、これからはそういうことも念頭に置いてやっていった方がいいのだろう。
 今回のシドニー戦で勝ち点1をもぎ取って帰ってきたことが、どれだけ大きな出来事なのか。レッズサポーターがACLのアウェイ戦としては過去と比べ物にならないくらい大勢現地に駆けつけてチームを応援したことが、それにどう関わっているのか。サッカーに関心のない人たちにも知ってもらいたいと思うからだ。そのためにはレッズだけでなく、サッカー自体を日本の中で押し上げていかないと。
 今回、僕はシドニーにいたから見てはいないけど、21日の深夜のスポーツニュースでは取り上げられたようなので、それは良かった。でも週一の特集番組では中継局以外はやらなかったように思う。別に「天晴れ!」が欲しい訳じゃないけどさ。
 日本のサッカークラブがアジアで勝ち抜いて世界へ行けるかどうか、という大会。
 その結果を報道することの価値がもっと高くなれば、権利の問題などをクリアしても流してくれるようになるのではないだろうか。
 もっとも、会社を休むときに「レッズの応援でシドニーへ」とは言いにくい人にとっては、あまり有名にならない方がいいのかもしれないけど。
(2007年3月26日)
〈EXTRA〉
 外国を一人旅しているときなど、日本語を聞いてもすぐには耳が受け付けない。他人の会話を聞き流すクセがついているのだろう。でも、それが日本語だとわかったときは、すごくうれしい気分になるものだ。
 今回は3泊5日という短い旅だったし、取材仲間と一緒だったので、日本語から離れることはなかった。今回、懐かしく、うれしく感じたのは試合当日、開門(6時)の少し前に聞こえてきた「浦和レッズ」コール。オージースタジアムの正面には午後4時過ぎからレッズサポーターが集まり始め、5時半ごろには相当な人数になっていたが、あの太鼓と野太い声のコールを聞いて、さあ、始まるぞ!と奮い立った。シドニー関係者もびっくりしていたようだが。
 外国における日本語と同様なのが、今の僕にとっての石川弁。いや「石川弁」というものはないはず。「小松弁」「大聖寺弁」「金沢弁」などともっと細かく分類される。でもアクセントは同じだし、言い回しも微妙に似ている。石川県地方の言葉を、浦和にいて聞くのはうれしいものだ。
 だけど今回のように、能登沖地震のテレビ中継で、石川県の地名や言葉を何度も聞くなどという状況は悲しくてならない。災害はどの地方で起こっても痛ましいものだが、それが自分に染み付いていた言葉で語られるのは辛いものだ。亡くなった方のご冥福と、被災者の一日も早い原状回復を祈るとともに、ささやかだが自分にできることをしようと思う。
 なお昨日から何人もの方に「清尾さんのご実家はいかがですか?」とメールなどをいただいた。忙しかったこともあって、返事を出せなかった人もいるので、この場を借りてお礼を申し上げます。僕の実家のある加賀市や多くの知り合いがいる小松市は震源地から遠い南西部にあるので、揺れはしたが直接の被害はないようです。
 私事、失礼しました。
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