Weps うち明け話
#120
どっちが使おうと構わない!
 よく「使う選手」「使われる選手」という言い方をする。普通に考えれば、パスを出す選手は「使う」側で、パスを受ける選手が「使われる」側だと思う。だからトップ下のMFは「使う選手」、FWは「使われる選手」になるのだろう。
 でも見方を変えると、FWが「ここへ出せ」と言って、MFがその通りにパスを出せば、FWがMFを「使った」ことにならないか?いちいち言葉で言わなくても、阿吽の呼吸でMFが前線にパスを出しても同じことだ。ああ、わからなくなってきた。サッカーで「使う」「使われる」という言葉は意味がないのか?
 ウイングバックにしてもそうだ。ボランチからサイドのスペースへ長めのパスが出る。それをウイングバックが必死で追いかけて追いつきクロスを上げる。こう書くと、完全にウイングバックはボランチに「使われて」いるようだが、今のサッカーで縦パスが出てから追いかけ始めても遅くないか?相手にカットされるかラインを割るかどっちかだ。ボランチが蹴ったときにはウイングバックはすでに走り出していなくてはならない。見方を変えると、ウイングバックが走り出したから、そのスピードと位置から判断してちょうど良いところにボランチはパスを出さなくてはならない、とも言える。これ、どっちが「使われて」いるのだろう?

 「巨人の星」の飛雄馬は(また、古い漫画か!)、あまりの速球の持ち主ゆえに、同年代の野球選手にはちゃんと捕球できるキャッチャーがおらず、しばらく途方にくれたことがあった。そこで柔道の猛者、伴宙太がスカウトされる訳だが…。

 田中達也がレッズに帰ってきた。かつてのプレーをそのままひっさげて、もしくはもっと凄みをまして、戻ってきた。すでにJリーグで復活ゴールを挙げているし、前半のうちに2回PKを獲得するなど、チームの3連勝に大きく貢献している。
あのドリブルからのゴールがいつ見られるかと思うと楽しみだが、もう一つの大きな楽しみ。それは小野伸二との絡みだ。
 今季、リーグ戦すべてに出場している伸二だが、周囲が期待する輝きはまだ放っていない。その理由の一つは、相手のDFラインの裏に抜けてパスをもらう選手があまりいない、ということだろう。いたとしても山田や相馬、左右のウイングバックが多く、伸二からパスをもらってGKと一対一、という場面は少ない。
 ワシントンの1トップにロビーと伸二の2シャドーという今季多く見られたフォーメーションでは、どちらかというと伸二がFW気味にゴール近くでプレーしていた。
 もちろん小野伸二の魅力はラストパスだけではないし、ゴールも見たいが、あの99年に日本平で見せたような糸を引くような福田へのパスをそろそろ披露してほしい。そのためには、それを受ける選手が必要だ。

 伸二は、達也が復活したA3を内転筋痛で欠場。Jリーグ再開3試合はいずれも途中出場で、当の達也と交代したのが2試合。8番と11番を同時にピッチで見たのは神戸戦のわずか5分間だけだった。
 明日の磐田戦はロビーが警告累積で出場停止。スタメンが発表された訳ではないが、伸二のトップ下にワシントン、達也の2トップという可能性はかなり高い。
 ちょっと前で言えば、「使う選手」小野伸二と「使われる選手」田中達也だったろう。だけで最初に書いたように、どっちが使おうが使われようが、そんなことはどうでもいい。いや、今の立場で言えば、小野伸二の力を最大限に引き出す田中達也、という言い方でもおかしくないだろう。

 レッズの試合はいつでも楽しみだが、こんなにドキドキして前日を過ごすのは久しぶりだ。いつ以来だろうと考えてみたら、やっぱり99年、ワールドユースでチームを離れていた伸二が戻ってきて最初の試合。福田とのコンビが8試合ぶりに見られるという、あの清水戦以来だった。
(2007年6月29日)
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