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Weps うち明け話
#123
タナボタ
 タナボタ、とは「棚からぼたもち」の略。最近、何人かのレッズ関係者からこの言葉を聞いた。
 間違えると恥ずかしいので、正確な意味を調べてみた。「労せずして幸運を得ること」「思いもよらない幸運を得ること」とある。だいたい想像していた意味で合っていた。タナボタとは、「棚から牡丹餅が落ちてくるのを期待して、側でじっと待っている」というのとはちょっと違うのだ。もちろん「達也が仲間と牡丹餅を食べた」という意味ではない(田中ら牡丹餅)。
 だとすれば、浦和レッズユースは「タナボタ」ではない。

 8月4日、全国高校総体サッカーで、市立船橋高校が神村学園に勝ち、決勝進出を果たした。この大会の決勝進出チームは、高円宮杯全日本ユース選手権への出場権を得ることになっている。市立船橋高校は、プリンスリーグ関東で同選手権への出場権を獲得しているから、この場合はプリンスリーグ関東の上位チームが繰り上げ出場になる規定だ。

 先刻承知の人には以下の説明は退屈だろうが、知らない人のために記述しておこう。
 全日本ユース選手権(U−18)というのは、18歳以下のチームの日本一を決める大会で、高校チームとクラブチームが交じって争う。高校総体や高校選手権は高校のサッカー部だけ、クラブユース選手権やJユースカップはクラブチームだけの大会だから、全日本ユースが真に年代別日本一を決めるということになる。マスコミの注目度は別にして。
 全日本ユースは今年で第18回だから、それほど長い歴史がある訳ではない。そもそもユース年代のクラブチームというのはJリーグが発足するまでは全国に数えるほどしかなかった。小学生年代や中学生年代よりも教えるのが難しいということもあるだろうし、高校サッカーという華やかそうな世界の求心力が強かったという理由もあるだろう。そんな「校高ク低」の状態の時期でも「年代別の日本一を決める大会は高校選手権ではない!」と全日本ユース選手権を発足させた日本サッカー協会はさすが、である。皮肉ではなく、サッカー協会のいろいろな決め事が極めてスジが通っていてわかりやすいところは素晴らしいと思う(人事とかは別にして)。
 そうはいっても全日本ユースの発足後しばらくは、地区予選もなく、高体連とクラブ連盟の推薦で出場チームを決めていたはずだ。そして優勝の座には第9回大会まですべて高校チームが就いていた。「校高ク低」は人気だけではなく実力的にもそうだったのだ。
 しかし徐々に力をつけてきたクラブチームが全国で上位を占めるようになり、全日本ユース選手権の出場チームの資格は変わってきた。2003年から、全日本ユース選手権の実質的な地区予選としてのプリンスリーグができたのだ。つまりそれまでは高校から何チーム、クラブから何チームという選び方をしてきたのが、初めて地区段階から高校とクラブが一緒になって予選を行い、それぞれの地区のユース年代で上位のチームから出場チームを選ぶようになったのだ。
 全国が9の地区に分かれており、それぞれの地区の実力によって出場枠が違う。この出場枠は前年のその地区の成績によって変わることがある。たとえば今年でいうと北海道は1だし、関東は4だ。算定方法は面倒なので覚えたくない。
 で、このプリンスリーグに参加できるチームは、というと03年の発足当時は過去数年間の公式大会での成績をポイントにし、上位チームに資格を与えたはずだ。関東では20チームがプリンスリーグに参加しており、成績によって入れ替えがある。来年からプリンスリーグ2部もできるそうで、単に全日本ユースの予選ということではなく、高校、クラブの枠を越えた公式のリーグ戦というものが、選手の成長に有効だということなのだろう。
 さて全日本ユース選手権(U−18)は24チームの参加で行われる。プリンスリーグの各地区上位が計20チーム。残り4枠は高体連枠とクラブ連盟枠に2ずつ割り振られ、高体連枠は夏の全国高校総体(インタハイ)の決勝進出チームに、クラブ連盟枠はやはり夏の日本クラブユース選手権の決勝進出チームに与えられる。もしこの4チームがすでに各地区のプリンスリーグで出場権を得ていたら、その地区の上位チームが繰り上がって出場する。

 やっと話が戻せる。
 浦和レッズユースは、今年のプリンスリーグ関東で5位になり、4位以上に与えられる全日本ユース出場権を逃した。プリンスリーグ関東は20チームが10チームずつ2グループに分かれ、それぞれリーグ戦を行い、各グループの順位に応じて総合順位決定戦が行われる。上位で言うとこうなる。
 ・グループ1位vsグループ1位=総合1位と2位を決める
 ・グループ2位vsグループ2位=勝った方が総合3位、負けた方は4位決定戦に回る
 ・グループ3位vsグループ3位=勝った方が4位決定戦に回り、負けた方は6位
 グループ2位vsグループ2位が総合3位・4位決定戦とならないのがミソだ。グループ1位になれば、その時点で総合2位以上が確定するから全日本ユース出場が決まるが、グループ2位になっても総合4位は確定しない。逆にグループ3位でも全日本ユース出場の可能性が残る、ということだ。グループリーグの最後までモチベーションを下げないように、という配慮だろうか。もしくは、より実力のあるチームを全日本ユースに送るための方策だろうか。
 今年の順位決定戦はこうなった。
 ・1位同士=○市立船橋高校3−2流通経済大柏高校●
 ・2位同士=○東京Vユース2−1浦和レッズユース●
 ・3位同士=○横浜FMユース5−2湘南ユース●
  4位決定戦=○横浜FMユース0−0(PK6−5)浦和レッズユース●
 東京Vユースとの3位決定戦(7月14日)で優勢に試合を進めながら勝てなかったレッズユース。2日後の横浜FMユースとの4位決定戦では途中、GKが退場になり、延長を含めた約40分を10人で戦い0−0。PK戦で敗れた。グループリーグでは開幕から4試合連続引き分けで勝点が伸びず(トップと同じ、とか言うなよ)一時は順位が危ぶまれたが、その後3連勝。終盤2試合を1勝1分けで、グループ1位の流経大柏に勝点1及ばず2位になった。

 勝負の結果だからレッズがプリンスリーグでの全日本ユース出場権を得られなかったの事実。しかし苦労した末に占めた5位の座。そこにいなければ、繰り上げ出場になることはなかった。もし出場枠が空くことがあれば、最初に獲得できる位置を実力で確保して、他の大会の結果を待っていたのだから、これは「労せずして幸運を得ること」「思いもよらない幸運を得ること」ではない。レッズの関係者は自力で全日本ユースに出た訳ではないからと謙遜して「タナボタ」と言うが、自力で5位にいたのだから、謙遜することはないだろう。大事なのは9月から始まるこの大会で、出場にふさわしい試合をすることだ。

 クラブチームとはいえ、18歳以下という年齢制限があるのだから、高校サッカー部と同様、「最後のシーズン」となる高校3年生たちがいる。今のレッズユースの先発メンバーは3年生より2年生の方が多い。先日の日本クラブユース選手権では登録25人のうち3年生が9人、2年生が13人、1年生が3人だった。試合に出られない3年生がいるのは仕方がないと思うが、Jヴィレッジに取材に行って、3年生が仲間のためのドリンク運びなどをやっているのを見ると、何とか彼らにチャンスが回ってきてほしい、と思うこともある。
 クラブユースの準々決勝で広島ユースに敗れたとき、「ワンモアチャンス!」と思った。もちろんチームとしても全国大会に出場してほしいのは当然だが、今回のJヴィレッジで出番のほとんどなかった3年生たちのためにも、全日本ユースという全国大会の場がもう一度レッズユースに与えられることを祈っていた。インタハイに出ている市立船橋高、流経柏高ガンバレ!という訳だ。
 もちろん全日本ユースでも彼らの出番が必ずあるとは限らない。それは、これからの練習(現在はスペインに遠征しているが)で自分自身がアピールするしかない。だがプリンスリーグ5位に位置したことについては、良くも悪くも彼らの力によるものだ。最後の部分は市船のおかげかもしれないが、お膳立てをした人間が料理に箸もつけないのではなく、ぜひ腹を満たしてほしいものだ。
 ところで「棚から牡丹餅」でなければ、どういう表現が妥当なのだろう?「人事を尽くして天命を待つ」かな?人事に失敗して天命を受けた人は、いま苦労しているようだが。
(2007年8月8日)
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