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Weps うち明け話
#127
レッズユース
 昨日、10月14日(日)。埼スタ第2グラウンドでJサテライトリーグ、ザスパ草津戦が行われたが、この試合で草津のセンターバックとして最終ラインをまとめ、後ろから盛んに指示を出していた28番は、金生谷仁(かなおや・じん)。
 知っている人も多いと思うが、ジュニアユース時代から6年間レッズの下部組織に在籍した選手だ。今季、J2のザスパに新加入。レッズユースから他のJクラブに進んだ初めての例となった。ユース時代は守備的MFで1年生からほぼレギュラー出場。昨年はキャプテンを務めていた。
 草津での活躍を期待していたが、5月から2ヵ月間、北信越2部リーグの大原学園JaSRA(長野県)に期限付き移籍し、そこで試合経験を積んだ。現在は草津に復帰しているが、トップ公式戦出場はまだない。
 14日のサテライトリーグではレッズの小池をスライディングで倒したり、中村祐也を踏んづけそうになったりと、レッズユースの先輩たちと盛んに“絡んで”いた。試合後はレッズベンチにやってきて、選手や関係者と笑顔で握手を交わしていた。ちなみに、この試合は1−0でレッズが勝ったが、その1点は赤星のミドルシュートによるもの。金生谷の絡んだプレーで失点はなかった(それを喜んでるのか?お前!)

 レッズユースは、現在Jユースサハラカップを戦っている。今季の全国規模の大会はこれが最後。Jユースカップは夏過ぎから始まり、予選リーグ8試合を経て、12月24日の決勝まで長期間にわたる大会で、その間に高校3年生は進路の関係で練習に来られなくなったりする。高校2年生が中心になっていく過程のような時期で、来年が楽しみでもあり、これまで頑張ってきた3年生の姿が減っていくのが寂しくもあり…。
 その上、今季は知っての通りトップチームの試合が日曜になることが多く、例年に比べてユースの試合を見に行けることが少ない。先日終わった高円宮杯も、レッズの全6試合中3試合しか見られなかった。
 その分、今年から仕事の相棒として働いてくれている高野和也が6試合全部を取材した。MDPやLittle Diamonds(レッズの下部組織公式リポート)の記事は彼の力によるものが大きい。
 浦和レッズユースの第18回高円宮杯全日本ユース(U−18)選手権を終えて、高野和也が書いたコラムをこの場で読んでほしい。


<高円宮杯が終わって>

 10月6日(土)、高円宮杯全日本ユース(U−18)選手権でベスト4まで駒を進めていた浦和レッズユースは、国立競技場で流通経済大学付属柏高校に4−1で敗れ、ユース年代日本一への挑戦を終えた。ちなみに流経柏は、2日後の決勝戦でサンフレッチェ広島ユースを破り、優勝した。
 僕は、今回、MDPの取材のため、この大会のグループリーグから準決勝までのレッズユースの6試合を、全て見るという幸運に恵まれた。レッズユースに関する率直な感想を言えば、準決勝の試合では、不用意に浴びてしまった序盤の2失点の影響で、本来のサッカーをしきれなかったが、非常に質が高く、素晴らしい力を持ったチームだったと思っている。

 今大会の中でベストゲームを挙げるとすれば、9月24日に行われた準々決勝、市立船橋高校との試合ではないだろうか。市船は、今年の全国高校総体王者。高校サッカーの頂点は、冬の全国選手権で決まるとはいえ、この時点で、ユース年代のトップクラスの実力を持ったチームと言っていい。その市船を相手に、延長戦までもつれはしたが、内容で圧倒していたのだ。
 市船の選手たちは前半、明らかにとまどっているように見えた。レッズユースの速いパス回しにボールが奪えず、なんとか最後尾でマイボールにしても中盤でのプレスにかかって、ボールを前線に運ぶことができない。前半、レッズユースが8本のシュートを放ち、流れの中から先制したのに対し、市船はわずか1本のシュートを打つだけで精いっぱいだった。その後、立て直し追いついたのはさすがだったが、それでも試合の主導権を握っていたのは、レッズユースで、結局、延長戦に入ってからレッズユースが2得点し、3−1でインターハイ王者を下した。

 レッズユースは大会を通じて、まず気持ちの部分で戦うというレッズの育成部門が持つ哲学をベースに、どの選手が出ても、それぞれの特徴を生かし、チームとして戦うことができていた。それは選手が個々の性格まで理解し、ピッチ上で個の力をチーム力に昇華させなければ実現できない高いレベルのサッカーだった。総合的に見てもユース年代のトップレベルに到達していると思わせるに十分なパフォーマンスを発揮していたと思う。
 今年の8月1日にレッズユースが、日本クラブユース選手権の決勝トーナメント1回戦でサンフレッチェ広島ユースと対戦し、1−5で敗れたときには、スコアほどの差はないにせよ、正直、トップレベルとは、もうワンランク開きがあるという印象だった。
 それがわずか1ヵ月あまりで大きな成長を遂げていたのには、この年代にとって夏が成長の場であるという認識はしていたが、正直驚かされた。

 レッズが、育成に関して現在のような体制を整えたのは2002年からだ。この年から小学6年中生のスカウティングを行い、ジュニアユースに入れる選手たちを時間をかけて精査し始めた。その第1期生が世代別の日本代表にも選ばれる逸材が揃う今の高校2年生たちだ。この世代はこの大会でも、常時9人から12人がメンバー入りして戦ってきた。一方レッズユースには、3年生が12人所属しているが(トップに二種登録されているGK大谷を除く)、彼らの多くは大会を通じて試合に絡めなかった。最後の試合となった流経柏戦でも、メンバー入りした3年生は先発出場した3人だけだった。

 しかし、僕は3年生がチームに与えた影響は大きかったと思う。

 ポストプレーと前線からの守備で献身的な働きを見せたFWの林容平、中盤の底に位置し、左右へボールを散らして攻撃を組み立てたMF矢部雅明、そしてバイタルエリアでの仕掛けで妙を見せたキャプテンのMF鈴木秀史。みな夏のころよりもレベルの高いプレーを見せて、この大会におけるチームの躍進に貢献した。
 そして、流経柏戦に敗れた後、堀孝史監督はこれからのチーム作りについて聞かれ、この年代のトップレベルの試合を2年生や1年生が経験できたことが来年につながるという話をしたあと、次のように述べている。
 「3年生がこのチームでは非常に重要な仕事をしてくれていました。そうしたパーソナリティを持っている選手が抜けてしまうので、そうした人材も育てていかないといけないと思っています」

 チームは、試合に出場している選手だけ、メンバーに入っている選手だけが戦えばいいわけではない。たとえ試合に出られず、ベンチにすら入れなくとも所属する選手たちが一緒に戦っているチームでなければ、強いチームにはなれない、と僕は思う。そして、その一体感を与えられるのは、ユース年代で言えば、高校3年生だ。高校年代最後の年、最年長という立場が、個人ではなく「FOR THE TEAM」の精神を生み、人間としても成長を促すからだ。
 レッズユースは、そういう意味でもまとまりのあるチームだったと外から見ていても感じられたし、堀監督の言葉はそれを裏付けているとも思う。

 高校3年間という短い期間だが、同じ時期を、同じ目標に向かって過ごす。それはかけがえのない濃密な時間だ。これから先、彼らが歩む人生の中で、時に身を焦がすほどに打ち込む体験など、もうないかもしれない。
 レッズの場合、ユースからトップチームへと昇格できるケースは多くない。他のJクラブということもありうるが、3年生たちの多くは、大学やサッカー部を持つ企業に進路を求める。レッズユースでは、特に引退という制度を取っていないから、3年生は、秋以降もレッズユースで練習を続けるか、大学受験の勉強やセレクションなどに専念するか、本人たちの判断に任される。

 「青春」

 それは人生の中で、春の時代を指す。春は新たな命が芽吹く季節だ。
彼らがどの道を選ぶにせよ、きっとこの時期に体験し、得たものが今後の人生に大きな影響を与えることだろう。
 3年生には、自分の道をしっかりと見つけ、歩んでいってほしいし、2年生や1年生にはそうした先輩たちの姿を見て、来年さらなる高みを目指してほしい。
(高野和也)

 ここから清尾だよ。
 レッズユースの存在目的は第一義にトップで活躍できる選手の育成だ。だが、ユース年代でレッズを代表して戦ってきた選手たちが、トップに上がらないからといって、はいお疲れさん、ではこちらの気が済まない。彼らの進路は非常に気になるところだし、別の見方をすれば、レッズのトップに上がらない高校3年生たちのその後も、後輩たちのモチベーションとなるに違いないのだ。レッズのアカデミーセンターの総務担当、児玉さんはレッズ出身者の足取りについて細かく情報を集めているし、時には相談に乗ったりしている。卒業していく選手たちには「レッズを離れても、ずっと見てるからな」と声をかけている。金生谷が昨日の試合に出ることを教えてくれたのも児玉さんだった。
 昨日、僕はゴール裏で写真を撮りながら、ボールボーイをしているジュニアユースの中学1年生に声をかけた。
 「ザスパの28番、知ってるか?」
 「…いいえ(?)」
 「去年までユースにいたんだよ」
 「レッズの?!」
 レッズのサテライトにユース出身者(もしくは現役)が多くて当たり前だが、相手チームに自分たちの先輩がいることに、その子は驚いていた。そのうち自分の進路を考えるとき、そういう道もあることに思い当たるだろう。
 だから仁、早くトップの試合に出てくれ。
(2007年10月15日)
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