Weps うち明け話
#132
横浜へ
 ミランの監督が来日記者会見で「時差ボケがない浦和が有利」と発言したらしい。
 それは間違いないことけど、レッズのアドバンテージはそこだけじゃない。日本で、それも関東でやる公式戦で、それもクラブ世界一決定戦のファイナリストをかけた一戦で、レッズのサポーターたちがどれだけのパワーを出すか、彼は知らない。でか、僕も知らない。まだ経験したことがないから。

 昨日の豊田スタジアムは、今季のJリーグ第12節(5月19日)の名古屋-浦和戦とほぼ同じくらいの入場者だった(Jリーグ時は34,347人、昨日は33,263人)。AFCじゃなく、FIFAだし、日本で開催しているのだからこの数字は正確だろう。しかし来場したレッズサポーターは、Jリーグのときより昨日の方が多かったのではないか。レッズ側のゴール裏は空きがあったが、バックスタンドや反対側のゴール裏に回ったサポーターを合わせればおそらくそうなるだろう。
 Jリーグ中心、日本代表中心、海外中心…。サッカーファンにはいろいろな志向があるだろうが、レッズサポーターの場合は、クラブ中心と言える。クラブが上のステージで強豪と戦うときに、応援に行かなくてどうする、そういう考え方をしている人が圧倒的に多い。これが他のクラブのサポーターとの決定的な違いだ。言い切っていいのか?いいよ。だって、ACLでアウェイに出て行くサポーターの人数がはっきり証明してる。
 他のクラブが日本で開催されるCWCに出たとき、そのサポーターがどれだけ応援に行くのか知らない。しかしレッズに関して言えば、Jリーグの横浜M戦に行くよりも「行きたい」サポーターが多いと思う。もしかしたら2004年のチャンピオンシップ第1戦よりも多いかもしれない。「行きたい」とカギカッコをつけたのは、「行かない」のではなくチケットがなくて「行けない」サポーターが山ほどいるだろうから。

 11月14日のACL決勝以来、5試合ぶりの得点を、僕は後ろから見た。
 CWCの取材では、フォトグラファーの撮影位置は、試合前に自分が決めたポジションから動けないことになっている。前後半でエンドが換わってもそれに応じて動けないのだ。悩んだ末に、レッズサポーターが多い方のゴール裏にした。光の関係で、タッチライン沿いから斜めに撮影したことはあるけど、レッズの攻撃を真後ろから撮影したのはたぶん初めてだ。いつもと違う見方ができて新鮮だった。全体を見ることが多く、レッズの中盤、長谷部、啓太、阿部らが運動量豊富に相手をチェックに行っているのがよくわかった。ああ、かなり戻ったな、と感じ、体力が万全なら負けるはずがない、と確信したものだった。Jリーグの終盤とはだいぶ違った。今なら横浜FCや愛媛FCにはもちろん、鹿島にだってきっと勝てる(悔)。
 中2日でACミラン戦、というのは楽ではないが、みんなそのためにここまでやってきた選手たち。あの7連戦をこなしたことを思えば何とか踏ん張ってくれるはずだ。午後から大原に行って雰囲気を見てこよう(珍しく、試合翌日の新幹線の中で書いてます)。

 ACミランは、セリエAやチャンピオンズリーグで大ブーイングには慣れているだろう。しかし、もしかしたら、日本人はほとんど自分たちのファンだと勘違いしているかもしれない。実際、これまで日本に来たときはそうだったろう。いや今回も成田や練習会場では大歓迎を受けているはず。よしよし、今のうちに居心地の良さを十分味わっていてくれ。
 13日の日産スタジアム、じゃない横浜国際総合競技場では、ACミランの選手たちがもう日本に来たくなくなるくらいのブーイングが起こる。そして話にだけは聞いているレッズサポーターの凄さを生で感じるだろう。今季、アジアで振りまいてきたレッズの香り、それをテレビを通じてではあるが、世界に示す日。浦和の誇りを世界に見せつけるのはこれからだ。

 俺たちは、カカやマルディーニを見に行くんじゃなく、彼らと闘うために横浜に行く。
(2007年12月11日)
〈EXTRA〉
 試合が十二日まちとズレてくれて良かった…。
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