ここ数年、レッズが優勝争いの常連になることでメディアへの露出が増えてきたことは肌で感じていたが、昨年10月以降は、それが飛躍的に大きくなった。ACL準決勝~決勝、Jリーグ終盤戦、CWC出場~3位など、必ずしも望んだ通りの結果ではなかったが、一般メディア、とりわけテレビの全国放送で繰り返し報道されたことで、浦和レッズの名前とアジア制覇の事実はサッカーファン以外に広まっただろう。
年が明けてからも、昨年中は応じられなかったロングインタビューやドキュメンタリー番組に選手が出演する機会が例年になく多いし、高原の移籍を筆頭に選手の去就も大きな話題になっている。サッカーマガジン、サッカーダイジェストの表紙にレッズの選手が登場する(代表ユニのものも含めて)回数が断トツに多かった時期、「これじゃ他クラブの関係者、いい気はしないよなあ」と思ったものだったが、今回はテレビの力、それもサッカー中継でなくスポーツ番組やニュースの影響力の多大さにあらためて驚いた。
正直言えば、これまでも浦和レッズの名前くらいは全国民が知っているだろうと思っていたが、実はそれは思い込みだったかもしれない。しかし今なら多くの人が「アジアで優勝したんだっけ?」ぐらいの認識を持っているに違いない。ちょうど今、「中東の笛」と言えば「ハンドボール」と答える人が増えたようなものだ。
バブル人気、という言い方はしたくない。これは間違いなくレッズのクラブとチーム、サポーターが築き上げて結果だ。蜃気楼のような実体のないものではない。ただし、いつまでも残っている訳ではないことも事実。来年の今ごろ、「2007年にアジアチャンピオンになった日本のサッカーチームは?」という問題はカルトクイズになってしまうかもしれない。
たとえ一時的にせよ、浦和レッズに興味を持ってくれた人がテレビでも試合を見てくれるようにする。テレビで見ていた人を、スタジアムに足を運んでくれるようにする。一度、スタジアムに来た人を、二度、三度と来たくなるようなリピーターにし、ファン、サポーターと呼べる存在にしていく。こういう仕事が今シーズン必要になってくる。
同時に欠かせない仕事が、初めてレッズに触れる人に、レッズの歴史を押し付けがましくなく知らせていくことだ。チームの歴史、クラブの歴史、そしてサポーターの歴史。93年、94年の最下位、95年の躍進、99年の降格、00年のJ1復帰…。それらは過去のことであっても、違う世界のことではなく、何らかの形で2007年のACL優勝へとつながっている。
どこまで理解してもらえるか、どこまで飲み込んだ上でレッズを応援してもらえるかは人によって違うだろうが、これはレッズのイズムを継続していくために非常に重要なことだし、これまでもやってきたはず。サポーターはスタジアムに新しく来た人を仲間として迎え、クラブは様々な広報物やイベントを企画してきた。
2003年のナビスコ初優勝から、2006年のリーグ優勝まで、レッズの戦いぶりは翌年の新しいファンの獲得につながってきた。そして、スタジアムの雰囲気は毎年多少の変化を見せながらも、流れを変えずにチームを後押ししてきたように思う。しかし今回のACL優勝では、これまで以上に多くの「ご新規さま」を迎えることになるような気がする。無理にレッズ色(変な表現か?)に染めるのではなく「ご新規さま」が自然に染まっていき、少しずつ新しい流れを作っていく、というのが理想のように思う。
僕自身、いつもに増して大切な仕事に取り掛かることになるが、当然多くのサポーターと一緒にやっていかなければ成功はしない。まずは、今のうちにいっぱい話そう。 |