Presented by 埼玉縣信用金庫
Weps うち明け話
#148
A&J
 UEFAチャンピオンズリーグ決勝は、最後までどうなるかわからない試合、というか、「こっちの勝ちだろう!」という見通しが行ったり来たりする試合だった。
 となると、佐藤さんは、やっぱり前半が終わったぐらいで寝たのだろうか?(これについては、「MDPはみ出し話No.18〜19」を読んでもらわないと何のことかわからない)。

 たしか9年前のUEFAチャンピオンズリーグ決勝も、僕は後半の途中で起きてテレビを見た記憶がある。今回も録画はしていたけど、つけっ放しのテレビの前で寝ていたから途中何度か起きて、ところどころ見ていた。そのたびに点が入ったシーンのリプレーをやっていたから、おそらく青嶋達也さんの声が「おい!いまは見るところだぞ!」と起こしてくれたのだろう。後半になると、もう5時を過ぎているからどっちみち起きる時間。完全に覚醒して腰を据えて見た。またもや劇的な結果だった。

 UEFAチャンピオンズリーグとイングランドプレミアリーグの2冠を獲得するというのは、AFCチャンピオンズリーグとJリーグの両方を制覇するより大変なことだ、と口にしただけで笑われるかもしれない。「一緒にするなよ」と。
 しかし日本のチームがUEFAの大会やプレミアリーグに出られるわけじゃないし、逆もないのだから、マンチェスター・ユナイテッドが今回達成した偉業は、日本のクラブに当てはめれば、ACLとJリーグの2冠、ということになる。それに一番近い形は99年のジュビロ磐田だと思うが、当時のアジアクラブ選手権は97年のJリーグ優勝クラブが、98年から始まるアジアの大会に出て99年の4月に終わる、というサイクルだったこともあって、ジュビロが99年にJリーグ優勝を果たしても「2冠」というイメージが薄かった。もちろん大会そのものの形式も違ったし。
 そういう意味では、昨年のレッズはA&J2冠(いま作った言葉)に最も近づいたと言えるが、どれだけ近づいても到達したことにはならない。今季、「4冠」「4冠」という声が盛んだが、たしかに目指すのは4冠でも、本当に欲しいのはA&J2冠だ。昨年、たどり着けなかった峰に再挑戦という意味もあるし、国内3冠よりも厳しい道だということを実際に味わってその価値の高さを知ったからでもある。今季のACLノックアウトステージの組み合わせが決まるのは明日5月24日。それを見て、またアジアでの戦いが本格的に始まることを実感するだろう。

*    *    *

 今回はUEFAチャンピオンズリーグ決勝の顔合わせが同国(イングランド)のクラブで、しかも国内リーグでも優勝を最後まで争っていた、という珍しいことが起きた。それだけマンチェスター・ユナイテッドとチェルシーの力が抜けていた、ということでもあるのかもしれない。
 それを思うと、どうしても連想してしまう。赤・白・黒のクラブが青いクラブとACLでもJリーグでも優勝を争うという図式を。ついでに言えば、ACLの準決勝では青いクラブが、もう一つ同国から勝ち進んだ赤(っぽ)いクラブに勝つ、という絵も想像できる。チェルシーがリバプールにUEFAチャンピオンズリーグの準決勝で勝ったとき、そう思った人も少なくないだろう。
 クラブカラーのことや勝敗までは空想(しかも希望的)に過ぎないが、ACLとJリーグの優勝を日本のクラブ同士が争う、ということは十分ありうる。それがレッズとガンバになったとしたら、両チームの因縁もまた1つグレードアップするな、と思っていた。5月17日の試合の前までは。
 しかし、因縁は増えたものの、グレードアップとはとても言えない、汚点になってしまった。

 あの日の出来事について、両クラブから経過報告と謝罪が公式に出された。同じことを重ねて言っても仕方がないが、あとに残るものとして何点かだけ指摘記しておきたい。

 まず、多くの報道で誤解を生みそうな点があったこと。
 一つはガンバサポーターがスタンドから落ちて足をケガしたということについて。
 「両サポーターがもみ合いになった」とか「衝突した」という記述の後で、「ケガ人が出た」とくれば、普通はその「衝突」によるケガ人だと受け取られる。ケガをしたのがガンバサポーターならばレッズサポーターにやられたのか、と思う人が多いだろう。スタジアムの様子を知っている人なら、周りにいたサポーターが巻き添えを食って落ちたのか、と想像するかもしれない。だが、事実はどちらも間違いで、このサポーターはスタンド前面のフェンスに立ち、さらに身を乗り出して選手に(たぶんレッズの)、あるいはレッズサポーターに食って掛かろうとして誤って落ちたのだ。ケガしたことは気の毒に思うが、ほとんど本人自身の行為に起因する事故なのに、あたかも騒動の被害者と受け取られているとしたら、そこはだいぶ違うと言っておかねばならない。

 もう一つは「レッズサポーター5〜6千人がガンバサポーター1千人を軟禁した」という論調について。
 たしかに16時すぎに騒動が始まり、17時半ごろにほぼ収束するまで、南広場には数千人のレッズサポーターがいた。しかし南広場というのは浦和美園駅への帰り道であり、ふだんでもアフターバーがあるので人が溜まっているところ。実際のところは帰りかけた人が事の推移を見守っている、という状況だったのだ。事実をことさら面白おかしくせず、記事にするとこういう感じになるはず。
 「ガンバサポーターの物の投げ込みに端を発する、南サイドスタンドでの騒動を見た北サイドスタンドのレッズサポーターが、自分たちの仲間に加勢しようと、あるいは騒動を止めようとしてペデストリアンデッキを回り、Dゲートからビジタースタンドに入ろうとしたが、両サポーターの直接の衝突を防ごうとした警備員、警察官により阻まれ、そのままDゲート前のペデストリアンデッキ上に約200人が残った。Dゲートは施錠されたため通行ができず、帰り遅れた一般ガンバサポーター数百人も2時間近く南スタンドに取り残された。スタジアムの出口につながる広場には数千人のサポーターが帰りの足を止め、推移を見守っていた」
 話が大きければ大きいほど面白くなるということで、より大きな数字に飛びつきがちになるのもわかるが、南広場の人たちまで計算に入れてしまうのは無理がある。

 自分もそういう仕事に従事しているからわかるが、事実を寸分違えずに知ることは簡単ではないし、それを広く伝えるのはもっと難しい。だがこういう場合は、できるだけ誤解されないような配慮をぜひお願いしたいものだ。
 報道に関してだけでなく、僕の所感も記しておきたいけど、それは別項で。
(2008年5月23日)
〈EXTRA〉
 ここまで書いて、22日のうちにアップしてもらおうと思ったが、遅くなってできなかった。そしたら昨日の夜遅く、佐藤さんから「今朝は最後まで見てました」とメールが来た。まるで、これを読んだかなのような反応にびっくりした。
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