Presented by 埼玉縣信用金庫
Weps うち明け話
#150
制裁金
 だいぶ前の話だが、こんなエピソードを思い出した。
 その当時、レッズでは練習に遅刻した選手は罰金を取られることになっていた。あるとき、監督が遅刻してきた。その監督は都内に住んでいたから、途中の道が混んでいて遅れたそうだ。そして、その監督は「交通渋滞は不可抗力だから遅刻は仕方がない」と選手たちに言ったらしい。そのときの詳しい状況は知らないが、交通渋滞を計算に入れていても、その予想をはるかに超えたアクシデントで遅れることもあるだろう。そういう意味では不可抗力の場合もたしかにある。
 だが監督という立場なら、例えばこういうふうに言うべきではなかったか。
「監督自ら遅刻して申し訳ない。実はいつもは交通渋滞を考えて、30分前には着くように家を出ているのだが、今日は交通事故で完全に道がふさがっていて、動きが取れなかった。事情はともかく遅刻は遅刻だから罰金は払う。こういう場合もあるのだから選手諸君は十分に余裕を持って練習に臨むように」
 制裁を下す側は、自らの責任が問われるときには、それ以上の厳しさと明朗性をもってあたらないと信頼は得られない。その監督も、選手たちと強固な信頼関係を結べていたとは、残念ながら言い難かったことを思い出す。

 今回、レッズは2000万円の制裁金という処分をJリーグから受けた。昨年度の収入が約80億だったレッズとはいえ、経常利益は2億ちょっとで純利益は6200万円だから、決して安い金額ではない。A契約前の選手なら5〜6人分の年俸だろう。
Jリーグ規約の「制裁金」の節には「1億円以下」「5千万円以下」「2千万円以下」「1千万円以下」「500万円以下」「100万円以下」という段階があり、それぞれ該当する違反行為が挙げられている。
 今回のレッズの場合は、第51条「Jクラブの責任」の「ホームクラブは、選手、…(略)…、観客等の安全を確保する義務を負う」「ホームクラブは、観客が試合の前後および試合中において秩序ある適切な態度を保持するよう努める義務を負う」「ホームクラブは、前2項の義務の遂行を妨げる観客等に対して、その入場を制限し、または即刻退去させる等、適切な措置を講ずる義務を負う」という部分に違反したということで、その中の最高額である2000万円を課せられたわけだ。過去に、この「2000万円以下の制裁金」に該当する制裁はなかったようだから、5月17日のガンバ戦で浦和レッズが主催クラブとして問われる責任は、これまでJクラブが犯したどのミスに比べても、度を越えて重いと判断されたということになる。まさか「浦和だったら、これくらい払えるよな」ということで決まったわけではないだろう。
 Jリーグも慎重に検討した結果の裁定だろう。「主催クラブとしての責任」ということを聞いたとき、いろんな事例が頭の中を飛び交ったが、叱られた者が「だったら、あいつはどうなのよ?」「あのときはどうだったのよ?」と他人のことを言うのは見苦しいし、レッズも制裁金を課せられたことに対し「真摯に受け止める」と言っている。そもそも、処分が出る前から自らの「甘さ」を認めて改善案を出しているのだから、これについて今さら異議をはさむものではない。規定を見れば、やむを得ない処分だと納得せざるを得ない。
 だけど、冒頭のエピソードが頭に浮かんでくるのも止められないのだ。
(2008年6月16日)
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