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Weps うち明け話
#151
三日会わざれば
 当たり前のことだが、レッズジュニアユースよりレッズユースの選手の方が付き合いが長くなるからよく知っている。ジュニアユースの場合、2年生のときから公式大会に出ていた選手はまだ覚えやすいが、3年生になってから試合に出るようになった選手とは、春が初顔合わせだ。毎年4月から6月にかけて顔と名前とポジション、それに体つきやプレースタイルを覚えるのに忙しい。
 だが楽しみもある。ジュニアユースの選手はちょっと見ない間にグンと成長するのだ。もちろんユースの選手も成長はするが、その度合いは14歳〜15歳の方が大きい、ということだろうか。

 レッズジュニアユースに入るのは、それまで小学生時代は各チームのエース級だった選手。それが、いきなりベンチにも入れなくなる。中学1年生、2年生のころは悔しい思いもするはずだ。3年生になってレギュラーを獲得したり、試合に出るようになったときの喜びはかなり大きいだろう。
 また中学2年生のときから出ている選手でも、最上級生となって自覚が一気に高まる。そういう環境や立場の変化が気持ちの変化を生み、サッカーにおける成長を促すのかもしれない。
 ユースの試合はレベルが高いから見ていても面白いが、ジュニアユースの試合には個々の選手の成長を確かめるという楽しみが大きいのだ。

 6月22日(日)は、あいにくの天候だったが、ヴェルディのグラウンドに出かけた。日本クラブユース(U−15)選手権の関東予選3回戦だ。U−15の関東予選は52チームの一発トーナメント。レッズは1回戦シードで2回戦から出場だった。
 関東からの全国出場枠は9だから、ベスト8まで進めば全国行きの切符が手に入る。1回戦で52が32、2回戦で32が16、3回戦で16が8。要するに2試合連続で勝てば全国に出場できるのだ。そして3回戦で負けた8チームは、残り1枠をめぐって9位決定トーナメント(敗者復活戦)を行う。9位になるには3試合連続勝ち抜かなければならず、これはきつい。どのチームも通常のトーナメントでカタをつけたいところだ。
 だが相手は東京ヴェルディ。強いし、どちらかと言えばレッズはこれまで分が悪い。記憶に新しいところでは、昨年12月25日、ひたちなか市総合運動公園陸上競技場で行われた高円宮杯全日本ユース(U−15)選手権準々決勝。このときの東京V戦は、初め互角の戦いだったのが徐々に東京Vがペースをつかみ、後半6分に失点。その後の反撃をうまくいなされ負けてしまった。惜しい試合ではあったが、力の差も感じた。
 それからチームは代替わりしているが、お互いに何人か選手も残っており、嫌なイメージがなくもない。だが選手たちがどう思っているかは別問題。こっちは見守るしかない。

 少し寝坊して(夕張キャンプの疲れがあった、と言っておこう)、前半の終わりごろようやく到着。東京VのCKのようだ。入れられた!相手の喜び具合からして、同点か先制に違いない。ハーフタイム。聞くとやはり0−1だった。
 後半はゴール裏でカメラを構えた。やはり東京Vは試合運びがうまい。ビハインドを追うレッズに対してラインを上げラストパスをオフサイドにかける。FW矢島慎也が何度も引っかかっている。微妙なタイミングだから、一瞬でもズレれば何とかなりそうだが…。
 40分ハーフの半分が過ぎた。斜め後方から矢島にパスが来る。トラップすればすぐに寄られてしまうポジションだった。と、矢島がそれをスルー。横を走っていた野崎雅也にラインの裏で渡る。オフサイドはない。野崎は慌ててチェックに来るDFを難なくかわして同点ゴールを叩き込んだ。あまりにも鮮やかな連係プレーに東京Vは動揺したのか、レッズはその3分後にもオフサイドラインを破って今度は堀田稜が逆転ゴール。その後は相手の反撃を抑えてレッズが2−1で勝利。ベスト8の座と全国大会出場権を手にした。

 野崎は昨年まで公式大会のリザーブにも入っておらず、今年から攻撃的MFで出るようになった。どちらかと言えば途中出場が多い。出たときに結果を残せないと家に帰ってから泣いて悔しがることもある。この試合の前日もそうだったらしい。
 「だから後半から出たら持っているものを全部出そうと思った」と語ってくれた。
 確かに僕の撮った写真には一番多く写っており、いかに動いてボールに絡んでいたかがわかる。
 同点ゴールにつながる見事なスルーを決めた矢島は、監督の名取篤が「あれは、スルーじゃなくて触れなかっただけだろ(笑)」とからかうのを横目に「狙いました」ときっぱり。自分がオフサイドに何度もかかっていたのも自覚していて「二列目から飛び出せばオフサイドにならない。ボールが来たときに雅也が見えたので、自分がオトリになればいいと思った」。矢島は昨年の東京V戦で先発していて、失点後の後半13分に交代している。「あのときは体がきつくて、もう駄目だった。今日は最後まで頑張ろうと思っていた」。昨年は、どこかひ弱なイメージがあった。しっかりした3年生に交じって、スピードとキレで勝負するタイプだった。3年生になるとこんなにたくましくなるのかと、言葉だけでなく、近くで体を見て驚いた。
 2人だけではない。それぞれが昨年までとは違う自分をピッチで表現していた。
 もちろん、この時期に成長するのはレッズだけではない。東京Vの選手たちも今回の逆転負けを糧に、1つ大きくなるだろう。9位決定戦にはFC東京深川、柏レイソル、FC東京むさし、横浜FMなど名だたるチームが参加する。そこを勝ち抜いて全国に出てくるチームは底知れぬたくましさを身につけているかもしれない。

 「男子、三日会わざれば括目してこれを見よ」とは言うが、この時期のジュニアユースはまさにそれだ。これから関東大会の上位トーナメントを戦い、さらに練習を積んで全国大会に出てくる彼らを見るときは、目を皿のように開いておかねばならない。
 第23回日本クラブユース(U−15)選手権は8月9日からJヴィレッジで。
(2008年6月23日)
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