Presented by 埼玉縣信用金庫
Weps うち明け話
#152
期待値
 負けが続いているとき「試合前の選手たちの威勢の良いコメントは見飽きた、聞き飽きた!」とよく言われる。

 MDPで言えば、それを文字にしているのは僕たちなので、何やらこちらも「できもしないことを書くな!」と叱られているような気になる。だが、現実には選手たちは、あのコメントを口にしているわけで(口調や語尾は多少手直ししているが)、僕たちは選手の肉声で聞いているのだ。僕の場合、というかMDPの場合は、試合の日にサポーターが読んで「よし、選手と一緒に闘うぞ」という気持ちになってほしいと思っているから、コメントの取捨選択が多少は恣意的になるのは否めない。だからと言って勝手に作っているわけではなく、すべて選手の言ったことが材料になっている。
 僕たちからすれば、負けた試合の後は選手に対して、「お前ら、調子の良いこと言うなよ!MDPの記事がウソになっちまうじゃないか」と憤慨しそうなものだが、それはない。何故かと言えば、彼らがそれを話す表情や口調を聞いているから。決していい加減に言っているわけではないことを知っているからだ。

 だけど、コメントと現実の試合でのプレーにギャップがありすぎると、なまじ試合前に威勢の良いコメントを聞きたくない。それもわかる。実際には、試合前の決意とそれほどかけ離れたプレーをしていることなどあまりないと思うが、期待値が高い分だけ、プレーでうまくいかないことがあると、見る側はギャップを感じてしまうのだろう。

 *    *    *

 柏戦の後半18分、高原が永井に交代した。
 僕は「え?」と思った。高原替えちゃうの?と。永井を投入するのはよいが、引っ込めるのは高原なの?
 この試合の高原は、僕の主観ではレッズに来てから一番良いんじゃないか、という動きをしていた。ゴールに向かう形がバリエーション豊かで、これぞFWという動きだったと思う。もったいないな、もっと見たいな。そう思ったのは僕1人ではないようで、取材仲間も、あとで話したサポーターもそう言っていた。替えるならエジじゃないの?と。

 そのことを2〜3日考えていた。そして1つの考えが浮かんだ。
 僕は、高原に活躍してほしいと思っている。そして中断前から高原の動きがだんだん良くなってきたのを見ている。負けはしたがナビスコ杯の名古屋戦でのオーバーヘッドシュートなど、キレていなければ出ない。そして柏戦でさらに良くなったのを目の当たりにした。高原を生かすであろうロビーも復帰している。1つには期待値が高いこと。1つには調子が右肩上がりだということ。この2つが「何で高原替えちゃうの?」という不満になったのだろう。
 一方、エジミウソンは中断前とあまり変わらない感じだった。と言っても悪いわけじゃない。中断前に公式戦で8得点しているエジミウソンがいたと思う。惜しいシュートも放っていた。だから期待値もある。
 シビアに見て、柏戦での高原とエジミウソンを比べてどっちが良かったかはわからない。同じくらいかもしれない。そして実績はエジミウソンの方がある。じゃ、どっちを残す?うーん。

 高原自身が言っていた。柏戦でのパフォーマンスは、レッズに来てから一番良かったかもしれないが、自分としてはようやく普通に戻った感じだ、と。つまり酷な言い方をすれば、3か月半前はマイクロ高原だったのが、だんだんミニ高原になり、プチ高原になって、ここへきてようやくFW高原直泰というレベルに戻れた、と。それをずっと見てきたから、柏戦の高原がすごく良く見えたのだろう。もしかして何の先入観もなく、あの試合の2人を見ていたら、どう思ったかわからない。
 ただ高原自身も、ようやくいろんなことができるようになったのに、しかも同点になったところで替えられて不満を感じたに違いない。というか、僕は交代を告げられたときの彼の態度で、本人の調子の良さを感じた。

 *    *    *

 試合前に選手が「難しいと思うけど、できるだけ勝てるように頑張る」というような、控えめ目なコメントではなく「100パーセントを出し尽くし、勝点3を取る」という威勢の良いコメントを、僕たちを通じてサポーターに披露するのは、引けないところへ自分を追い込んでいることもあると思う。決意を口にすることで、よりモチベーションを上げる、ということもあるはずだ。サポーターの、自分への期待値を上げることは、自分が試合で高いパフォーマンスを発揮する手助けになるのだから、まずは「証文」としてしっかり受け止めてやってほしい。
 少なくとも政治家の選挙公約よりは、実現に向けて努力していると思うぞ。
(2008年7月4日)
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