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Weps うち明け話
#161
痛みシリーズ 3・グリコ以上
 ここ数年は優勝が至上命令だったとはいえ、チームの強化策を移籍だけで済ませてきたわけではない。2003年以降に加入した新人選手は合計20人いる。現在もレッズに在籍しているのは12人(期限付き移籍中の大山と赤星は除く)で、そのうちJ1での公式戦出場経験者は8人だ。そして、細貝、セルヒオ、堤の3人が先発候補として成長してきた(堤はケガのためにしばらくリハビリが必要だが)。そのほかにも現在期限付き移籍で出ている選手を含めて何人かが来季のレギュラー争いに加わってくるだろう。
 5年間でレギュラー候補が3人というのは多くない。これはもちろん「先輩」選手の壁の厚さによるものだろう。壁といっても別に意地悪をしているわけではなく、実力の世界なのだから、当時の監督が現レギュラーに代えて使ってみようと思った選手が8人しかおらず、使ってみた結果が3人だったということだ。若い選手が公式戦でどこまでできるのか見てみたいという気持ちは僕にもあるが、優勝が至上命令とされているレッズにおいて、使って「みる」という試しが許されることは少なかったのだろう。
 若手が使われるかどうかは、監督の志向だけでなく、選手のケガやポジションの適不適など、そのときのチーム状況にもよる。タイミング、運不運に左右される部分も大きい。昔、レッズに加入を決めた理由として「レッズなら、すぐに試合に出られると思ったから」と堂々と答えた新人選手がいたが、そういう理由でレッズに入ってくる新人は現在皆無だろう。逆に「レッズに入ってもなかなか出られないからなあ」と二の足を踏むことがあるかもしれない。

 若手の獲得は新人だけではなく、下部組織からの昇格も大事なルートだ。大事というよりは、こちらが主流になっていくべきだろう。
 レッズの下部組織でサッカー人生をすごすことで、第1には浦和レッズというものに対するこだわりの気持ち、いわば愛情が培われる。第2には浦和レッズのイズムというものを選手に浸透させることができる。第3には本人の個性、特長を伸ばした上でレッズのサッカー(今のところレッズの下部組織のサッカー、だが)を見につけさせることができる。第4に、プロになるんだという意識を高校生時代から強く持たせることができる。
 つまり、高校生、大学生の新人がレッズに入ってから身につけなくてはいけない要素をすでにしっかりと持った選手が入ってくるわけだ。もちろんサッカーの素質や技術における基準はクリアしていることが前提だ。
 レッズの下部組織については2つのことがはっきり言える。1つはマイナスの指摘になってしまうが、プロの下部組織として確立するのが他のクラブに比べて大きく出遅れたということ。
 もう1つは、2002年のリスタートで明確にプロ選手育成の機関として変化し、その成果が出始めたこと。これについては、特に今季あちこちで言われているから繰り返す必要はないだろう。付け加えておけば、2002年から変革されたとはいえ、一気に体制が確立されたわけではなく、年々充実してきたということだ。練習場、指導者の人数、専門性を持ったスタッフの増員、海外遠征、スカウティング、その他いろいろ。それほど遅れていたのか、という指摘もされそうだが、やるなら徹底してやる、というレッズらしい部分が見られると僕は思う。毎年のように、今年は何があるかな?とワクワクする部分だ。来季に向け、未決定の話も耳にしているが、それは楽しみにとっておこう。

 トップチームについては今季の結果から見れば、チーム作りが成功しているとはいえないが、クラブとしてチーム強化のための重要な柱の一つはしっかり立っている。そこを指摘したうえで、僕なりに下部組織の楽しみ方を。
 まずは1年のうちに何度か行われる、Jリーグでの前座試合。レッズのホームゲームでいうと、サッカー少年団のボーイズマッチが定番だが、たまに関東のクラブとのカードがあるときには、お互いのジュニアユースの1年生チームが対戦するU−13マッチとなる。アウェイで行われるときもある。これは情報を事前につかむのが大変だが、ここで今季の新人たちをチェックする。彼らにとっては埼スタのピッチ初見参となる。このピッチでプロとしてプレーしたい、そういう動機付けをする第一歩でもある。ちなみに12月6日の最終節でも、開門40分後の12時10分から横浜F・マリノスジュニアユース追浜とのU−13戦が予定されている。
 その後は、時間が許す限り、ジュニアユース、ユースの試合を取材に行く。前線からの守備、味方への素早いフォロー、ダイレクトパスでのチャレンジなど、どの年代の試合でも目指すサッカーが同じであることに気づく。もちろん相手や、そのとき出ている選手によって違いは出るのだが。ジュニアユースの選手は成長年代の子どもたちだから、ちょっと見ないうちにずいぶんと強くなったりうまくなったりしている。相対的にその逆もあるが、取材に行った試合で新しい選手が活躍しているのを見るのは、トクしたような気分になる。
 ユースの場合は、当然誰が翌年トップに上がるか、という楽しみがある。またジュニアユースもそうだが、全国大会でのチームの活躍も楽しみだ。今季は高円宮杯で、11年ぶりの全国優勝を味わわせてもらった。

 そしてユースの場合は、もう一つの楽しみがある。残念ながらほとんどの選手はトップに昇格しない。えー、どうして彼が上がらないの?と思うこともあるが、それは外部が口を出すことではない。専門家が集まって決めたことだ。だがそれは、18歳のこの時期では上がれない、または上がらない方がいい、と判断されたということであり、プロの道が閉ざされたわけではない。元々はプロになれる可能性を秘めた選手たちなのだ。大学に進んだ選手が、4年後に新人としてレッズに加入してくることも十分考えられる(レッズ以外、ということもあるだろうが)。
 ここで言っておきたいのは、大学でサッカーを続けている選手たちのことを、レッズは見続けているということだ。アカデミーセンターで総務をやっている児玉さんは、彼らとよく連絡を取り合い、現状を強化部に報告している。大学選抜やユース代表候補になったとかいうことはもちろん、公式戦に出ているのかいないのかなどをクラブは把握しているのだ。なぜなら彼らは大卒新人で獲得する選手の有力候補でもあるから。まだレッズユースから大学を経由してレッズに戻ってきた選手はいないが、今後は出てくる可能性も高くなるはずだ。
 そして、もう一つ。プロを目指す若い世代にとって大事なことの一つに、プロになりたいという気持ちを強く持ち続けることがある。レッズの下部組織にいれば、その環境はある。元プロ選手の指導者がいるし、クラブのスタッフからも日常的に声をかけられる。そもそも仲間もみんなプロを目指しているわけだし、着ているユニフォームや練習着が環境そのものだ。しかし大学の環境は違う。どうかすると、気持ちに揺らぎが出ないとも限らない。そんなときに、レッズが自分のことを見てくれている、という意識が彼らのモチベーションを維持することになるはずだ。

 レッズユースの3年生は、全国大会での活躍を見る楽しみ、トップに上がるかどうかという楽しみ、大学に進んでから戻ってくるかもしれないという楽しみ。三度楽しめるのだ。グリコより多い。
(2008年12月3日)
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