Presented by 埼玉縣信用金庫
Weps うち明け話
#170
3冠
 2007年、マスコミはレッズに「8冠」という目標をつけた。ブルズ杯、ゼロックススーパー杯、A3チャンピオンズ杯、ナビスコ杯、ACL、Jリーグ、天皇杯、そしてFCWC。
 2008年初頭、レッズはクラブの代表が「すべてのタイトルにチャレンジする」と言ったとき、それは「4冠」という表現になった。クラブが具体的に「4冠」という言葉を発したことはないが、いつしかその言葉が1人歩きするようになった。
 おかしくないか?シーズンが始まって僕は疑問に思った。なぜ「4冠」なんだ?どうして「5冠」じゃないんだ?2007年にあって、2008年にない大会は、ブルズ杯、ゼロックススーパー杯、A3チャンピオンズ杯の3つだけだぞ?

 誰もFIFAクラブワールドカップ優勝を、目標に入れていないのか。正直僕自身もそうだった。FCWCでは、決勝進出が最大の目標、もしかしたらまずは準決勝で1点取ることが目標だったかもしれない。それが07年のFCWCを戦って後の、08年の実感だった。
93年も94年も、僕は常に優勝を頭に描いていた。少なくともシーズン前、シーズン開幕後しばらくは。2ステージ制だった時代は、1stステージが駄目でも2ndステージではまた同様の夢を抱いていた。「優勝」ということを思わなかったのは99年の2ndステージ開幕時ぐらいだ。
 だが、90年代に思い描いた「優勝」と、04年以降に口にした「優勝」は違うものだったように思う。目標という名の夢だったものが、本当の目標になった。90年代の「優勝」は、山の5合目くらいまでしか登る力がないのに、麓から頂上を眺めて「あそこまで行くぞ!」と叫んでいたようなものだったかもしれない。
 きちんと準備をし、手が届くところまで何度も近付き、そしてようやく手にすることができる「優勝」。今季、クラブが優勝という目標を言葉にしないし、そのことにサポーターの多くも不満を抱かないのは、何度も優勝争いをし、その難しさを実感しているからこそだろう。

 試合が始まれば、勝利を目指して戦うのは当たり前のこと。そして1試合1試合が積み重なったものがリーグ戦の成績なのだから、勝利の積み上げは優勝。すなわち、どのチームも究極には優勝を目指してJリーグ開幕を迎えることになるのだ。
 「優勝」を目標に掲げていたころでも「1試合ずつ戦っていくだけ」と監督や選手たちが言っていたことが、あらためてよくわかる。2009シーズンは、何も優勝を放棄したとか、ACL出場権を得る3位以内に入れば御の字、とかいうことではない。試合に臨む原点に戻ってしっかり戦っていく、ということなのだ。
 クラブが掲げるのは毎試合の内容。人もボールも動く、という最近流行の言葉が、実際に目の前で展開されゴールを奪う、というシーンが増えていくのかどうか。それは目標ではなく課題だ。それが達成されていけば勝点も積み上がっていく。気がつけば…、ということもなくはない。02年の2ndステージがそうだったし、03年もそうだった。

 僕は周りから、今季のレッズの目標は何だと思うか、と聞かれたときに「毎試合勝利を目指して戦うのだから、目標は優勝ですよ。今季は3冠しか可能性がないけど。個人的にはUAEでFCWCを開催しているうちに出たいから来年のACL出場権は欲しいけど、それもマストじゃないです。一番の課題は、毎試合面白いサッカーを見せてくれて、そういう場面がシーズンが進むにつれて増えていくことだと思います」と答えることにした。

 自分個人の目標と課題は違うけどね。僕?違う3冠。
(2009年1月23日)
TOPWeps うち明け話 バックナンバーMDPはみ出し話 バックナンバーご意見・ご感想