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Weps うち明け話
#174
31人
 今日でレッズの指宿キャンプが終わる。僕は1日早く浦和に戻ってきた。

 「シーズンを通して試合に絡む選手は22人〜25人。その中で、20試合以上出場するのが15人〜17人。そしてケガをしないということが条件だが、ほぼ全ての試合に出る選手が5人〜7、8人。これが通常だ」と2月24日、フィンケは言った。
 昨季の出場リストを見て数えてみた。28人。フィンケが言うより多いが、監督が途中で交代したことは影響しているだろうし、またこのうち3人は二種登録の高橋峻希たちだった。07年は24人、06年は26人だった。
 だいたい見当はついていたが、監督の口からはっきりそう言われると、ちょっと複雑な気持ちだ。
 レッズの今季所属選手は31人。1試合でも出る選手が最多で25人というなら、6人は1度も試合に出ることなくシーズンを終えてしまうことになる。あらためて誰がその6人(もしかすると7人、8人)になるのだろうか、と思うと気の毒になってしまうが、現実はそうなのだろう。
 何だか数字の関係だけみると、試合に出るというよりも、その6人に入らないための戦い、まるで町議会議員の選挙みたいだ。だが、選手本人は「試合に出る」ことを常に目標にしていられると思う。今季は1月12日の始動からそういう練習が続いている。

 まずは個人の体力レベルを測定して、それに合ったフィジカルトレーニングメニューを課したこと。これにより「ついていけない」とか「無理したためにどこかに痛みが出た」ということが少なくなった。そしてこのトレーニングを非公開(宮崎キャンプ)としたことで「誰は誰より体力レベルが下」など、よけいな情報が外にもれることもなかった。

 練習試合では、極力全員の選手を同じ時間使うようにした。2月24日まで10試合あったが、はっきりとした差をつけたのは18日の浦項スティーラーズ戦と24日の蔚山ヒュンデ戦だけ。徐々に公式戦メンバー候補が絞られてくるのは当たり前だが、この指宿キャンプ最後の蔚山戦のあと、フィンケは記者の前でこういう話をした。
「もし今日が開幕戦だったら、今日の先発11人(都築、細貝、闘莉王、坪井、阿部、啓太、原口、林、高原、達也)と、後半入ったロビー、エジミウソン、堀之内らがメンバーに入っていただろう」
 名前の挙がった14人のモチベーションを高めると同時に、入っていない選手の名前も出してフォローしている。小さな故障で出場しなかったセルヒオも名前が挙がったし、山田暢久と山田直輝も開幕2〜3日前に復帰できればいい、とメンバー入りの可能性を示唆している。
 こんなこと言っていいの?と一瞬思ったが、「もし今日が開幕戦だったら」という前提は小さなものではない。もともと「少なくともあと1試合の練習試合をやり、開幕戦の2〜3日前にメンバーを決める」と言っているのだ。セルヒオ、山田暢、山田直の復帰が万一間に合わなかったら、他の選手に出番が回ってくるし、他の誰かにアクシデントがあっても同じことだ。考えたくはないが万一そういうことがあってもチームとして戦えるようなトレーニングはしてきたようだ。練習試合のメンバーをベテラン組と若手組に真っ二つに分けず、ミックスして使っているのは、若手のモチベーションを落とさないこともあるが、実際に公式戦で若手が出ざるを得なくなった場合にも違和感なくできるように、ということもあるはずだ。

 腰を痛めてリハビリが続いている梅崎の名前も挙げて「ポテンシャルのある選手なので1日も早い復帰を」と配慮した発言をフィンケはしているし、左ヒザ半月板の手術をすることになった近藤に対しては「4人目のセンターバックとして貴重な存在。だから早く手術して早く戻ってきてほしい。その間、何かあれば阿部がセンターバックをやることもあるから」というようなことを話したようだ。「チームのことは心配しないでいいからゆっくり治してこい」と優しく言われるより「いない間は他の選手で何とかするから、手術するなら早くやって早くチームに戻ってきてくれ。お前は試合に絡む位置にいる大事な選手だから」と言われる方がモチベーションは維持できる。
 実際、身体のケアに関しては非常に注意を払っている監督だ。これまでも2〜3日別メニュー、という選手がずいぶんいた。どちらかというとケガを隠して無理してしまう傾向のある選手たちに対して「自分の身体の調子をきちんと報告することも大事な練習の一つ」(宮崎キャンプで)という言い方をして、ちょっと違和感があったら、すぐに自分かコーチに言わせるようにしている。
「ケガをしていても努力をして試合に出る、練習に出るということが日本という国では美化されているように感じる。ドイツでも、ケガをした選手が努力の末に何とかピッチに立つということが、とても褒めたたえられた時期が長い間あった。だが自分の考えは違う」
 この考えが選手たちに徹底されてくれば、別メニューの選手が皆無、という状態は今季1日もないかもしれない。その代わり、試合でのアクシデントは避けられないにしても、長期離脱の選手は減るだろう。

 今週末にあるという練習試合(非公開らしい)で選手たちにはだいぶ察しがつくだろう。そして3月5日か6日、遅くとも7日にははっきりする。11人と7人とそれ以外の13人。この後、7人あるいは13人のモチベーションを維持していくフィンケのやり方が楽しみだ。フィンケは「試合に絡む選手は1シーズンで22人〜25人」というが、試合に絡む選手と絡めない選手の力の差は、昨年までに比べてグンと縮まっていることは容易に想像がつく。
 本来、1シーズンの中で大勢の選手が出場するというのはチームが良くない状態なのかもしれないが、それとは違う意味で、31人が全員出てもおかしくないぐらいになっていけば、レッズのポテンシャルは格段に上がるはずだ。
(2009年2月26日)
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