Weps うち明け話
#187
山形
 カメラマンの山添敏央さんと議論になった。

「日が長くなりましたね。山形でも7時でまだ明るいんだから」
「そうだね。浦和だともう暗いかも…、あまり変わらないか」
「九州なんか、前半途中までかなり絞れるでしょうね…。山添さん、今ヘンなこと言いませんでした?浦和の方が日が沈むのは遅いでしょう?」
「何言ってんの。西に行くほど日が沈むのが遅くなるんだよ」
「…、そうですよね。浦和の方が山形より西でしょ?」
「そうじゃないよ。山形の方が少し西のはずだよ」
「えー!東でしょ。地図で見ても」
「違うよ。角度をちゃんとして、よく見てごらん」

 僕は、山形は浦和より完全に東に位置していると思っていた。だが7月4日の出張から帰って調べてみて驚いた。
 山形市の東経は東経140度21分49秒、さいたま市は東経139度38分55秒。ありゃ、山形の方が「東」にある。7月4日の日の入りは山形が19時7分、さいたま市が19時2分ということだった。地図は上下を南北に正しく合わせて見ないといけないな。

 山形へ行ったのは4度目でいずれも仕事。だがJ1のリーグ戦で行ったのは初めてだ。今回は過去の3回と違う経験をした。多くの人が感じたように、ホームタウンの歓迎ぶりだ。話には聞いていた。浦和レッズだから、ということではないらしい。だが、あれほどとは思わなかった。
 Jクラブの地域での役割は、それなりにわかっていたつもりだ。だが浦和にいると気がつかないことがあったようだ。そのクラブがあることで、ホームゲームにたびに全国からホームタウンを多くの人が訪れる。そこにも大きな存在意義があるのだ。
 7月4日はおそらく8,000人以上のレッズサポーターがスタジアムにいたはず。全員は泊まらないにしても、食事やタクシー、宿泊代など、浦和からの交通費を除いても5千万円か6千万円は山形市、天童市に落ちたに違いない。その日に、地元に大きなお金が落ちる、というだけではない。おそらく山形は初めてという人も少なくないはずで、この機会に山形に縁ができ、試合でなくても、もう一度行ってみようか、というきっかけになった人もいるだろう。

 Jクラブのホームタウンで観光を産業にしているところは山形だけではない。だが山形は文字どおりホームタウンをあげて、ビジターサポーターを歓迎している。その点では日本中のどこもかなわないと思う。
 ホームタウンの人たちが地元のクラブを応援しているのは当たり前だ。だが個人を相手に商売をしている商店や企業は、試合のときのビジターサポーターも大事なお客。心情的に「このやろう」と思っていても、それを表には出さない。そのギャップを感じるのが嫌で、僕はアウェイに行ったとき、食堂や居酒屋を利用するときにはなるべくレッズ側の人間であることがバレないようにしている(笑)。
 しかし山形ではそんな配慮など必要がない気がする。街の人は心からビジターサポーターを歓迎しているし、かつモンテディオを愛している。それが矛盾しない関係もあるに違いない。

 一度しか行ってないお前に何がわかる?そりゃそうだ。そのムードが来年も再来年も続いているかどうか、ぜひ確かめたいものだ。
 ちなみに7月18日の大分の日の入りは19時37分らしい。
(2009年7月15日)
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