もう8月。今年が早く過ぎていくような気がするのは、決して自分の年齢のせいだけではないと思うのだが。
人間は学習する。同じ過ちを繰り返さない、とは限らないが、少なくとも同様の過ちを犯しかけたとき、ああ前にもやったな、と思い出すくらいの記憶の蓄積はある。
過ち、とまではいかなくても、何か選択の岐路に立ったとき、以前は右へ行ったら、これこれこういうことがあった。だから、今度は左へ、あるいは今度も右へ。というように、経験を判断の材料にすることもよくある。
そういう意味では今季のレッズの変革について、多くのサポーターは過去の経験を生かしたスタンスを取っているのではないか、と思う。
2002年からの3年計画が2年で終わったとはいえ、その後のタイトル奪取のための基礎をしっかり築いたことは間違いないのだから、変革には時間がかかるものだし、時間をかけただけの成果は必ずついてくる。そういうことがまず経験として蓄積されている。もちろん、その前提として、性急に結果を求めて結局うまくいかないチーム強化策はもう無理だ、という苦い経験もあるのだが。
次に03年から毎年タイトルを獲得する、という経験もした。その最大の要因は、築いたベースに力のある選手を獲得して上積みしたことだということも知っている。そして、そのやり方では長続きしないし、一度歯車が狂うと修正が難しいことも去年身をもって知った。
そういう学習を積んできた我々だから、サッカーのスタイルを監督任せにせずクラブとして掲げる、ということを聞いたときに納得しやすかった(今ごろ言うなよ、と思った人もいただろうが)。新しく来た監督が「コンビネーションサッカーを新しくチームに浸透させるには時間がかかる」と宣言しても、そりゃそうだろう、とうなずけた。今回は○年計画、と銘打ってはいないが、少なくとも今季は、成績ではなくチームの変化の度合を評価の第一項目にするべきなのだろう、と。そして開幕数試合で、レッズが目指すサッカーの「完成図」がおぼろげながら見えてきたことで、半信半疑だった気持ちも、これはじっくり待っていれば何とかなりそうだ、と固まった。
公式戦4連敗、しかもゴール無し、というのはつらい。だが、もっと早く来るはずだった壁がいま現われたということかもしれない。もっと大胆に言ってしまえば、リーグ17節を終えて勝点34という前半戦の結果が後半戦でも出るならば、今季は何の苦労もいらないに等しい。過去の例を振り返っても、そんなにうまくいくわけはない。たとえば02年には終盤公式戦8連敗という不名誉な記録がある。あれも今思えば、それまで何とか勝てていたのが、相手に対策を取られて壁にぶち当たったということだったのだろう。
多くのサポーターは、そう思っているはず。負けた後は、チームに文句の一つも言いたい。しかし今季の最大の目標を誰もが理解しているし、上で述べた学習もしているから、根本的には待つ。そういうスタンスなのではないだろうか。
だけど、それでは面白くない、という人たちがいるのだろうか。レッズがガンガンに強くて優勝戦線に顔を出すようならそれでいいが、そうでないならばネガティブなことで話題が続いた去年のようになってくれないと困る、という人たちが。それともフィンケ監督の存在が面白くなくて、何か足を引っ張るネタを探している人たちがいるのだろうか。
ファン、サポーターの希望や提案、疑問はどんどんクラブにぶつけていけばいいと思う。多少なりとも僕も代弁者になっていきたい。そしてクラブ、あるいは監督からの情報発信は昨年までに比べて飛躍的に増えている。レッズが今まで弱かった部分―、数万人のファン、サポーターとクラブのコミュニケーションが困難、―ということを少しずつ克服し、クラブ、チーム、サポーターが一丸となって新しいレッズを作っていこうとしている今季、外部からそれを邪魔されるのだけは願い下げにしたい。
できれば試合でも相手DFに邪魔されたくないが…。
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