Presented by 埼玉縣信用金庫
Weps うち明け話
#194
直接言えるから言う
 2005年に埼玉新聞社を辞めてからしばらくたって、ある人にこう言われた。
 「清尾さん、クラブにより近くなって、逆に言えないことが増えたんじゃないですか」

 実は、そのことはフリーになるしばらく前から感じていた。埼玉新聞社でMDPを作り始めたときは、他の会社の業務をこなしながらやっていた。2001年に会社の組織変更があり、それまで対外的なものだった「MDP編集室」という名称が、僕の唯一の肩書きになった。つまり埼玉新聞社の業務として、MDPの製作だけをやっていなさい、ということになったのだ。ごくたまに他の仕事をすることもあったが、それはあくまで手伝い。01年の春から、本業はMDPオンリー、浦和レッズオンリーという立場になったのだ。

 当然レッズに関わる時間が増えた。その中でクラブのスタッフと話をする時間も長くなり、クラブのコンフィデンスに近いことも情報として得られるようになった。02年、03年と進むうち、たしかにMDPの最後のページや、このコラムに書くことが変わってきたような気がする。
 それまでは、けっこうクラブへの苦言めいたことを書いてきたと思う。苦言でなくても、自分が思いついた提案、あるいはサポーターと話して出てきたアイデアなどを書いたこともある。それをクラブのスタッフが読んで、対応してくれたこともある。
 だが一方で、クラブのスタッフと話ができるのだから、メディアを借りて提言しなくても、直接言えばいいじゃないか、ということが増えてきた。たとえば「MDPはみ出し話」の#211に書いた「記念レプリカ」などもそうだ。あれはまだ過渡期だったから、苦言めいたことを書いてある。あの#211は、クラブスタッフと「福田正博の記念レプリカが限定生産というのは絶対におかしい。何とかすべきだ」という話をじっくりして、布からの生産が決まった時点で書けば、違うニュアンスで、良い話になったはずだ。

 自問自答した時期がある。
 「お前はクラブに対してモノが言えるんだから、言いたいことがあれば直接言えばいいじゃないか」
 「でも、それだと書くネタが減る」
 「お前が望むのは、メディアに書くことで、自分はこんな発想ができるんだぞ、とか、自分が書いたことでクラブが何かを改善したぞ、と手柄顔することか?それともレッズが少しでも良いクラブ運営をしてサポーターがストレスなく応援を続けていけることか?」
 格好をつけるのが好きな僕だから、答えは明らかだった。
 もちろん僕の意見にしっかり耳を傾けてくれるクラブスタッフがいたからでもあるが。

  僕の書くことにクラブへの苦言が減ってきたのは、正確にはフリーになったからではなく、10年間この仕事を続けてきて、僕のことをスタッフ同然に扱ってくれる人がクラブに増えたからだろう。ぶっちゃけた話をすれば、仲良くなった人の批判めいたことは書きにくい、という人情も確かにある。だが、このコラムやその他の媒体に書いてはいないが、その分、言うべきことは直接言うようにしている。何か問題に気づいたら、メディアを通じてコトを大きくするより、直接言えるんだから言って早めに解決すればいい。その方がレッズとレッズサポーターのためになる。そういう道を選択した時点で、僕はジャーナリストという区分にはもちろん入らない。
 これからも、クラブが聞く耳を持ってくれている限り、それは続けるだろう。
(2009年9月2日)
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