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Weps うち明け話
#196
無理を利かせる
 レッズユースがFC東京U−18に勝った。9月6日(日)から始まった高円宮杯第20回全日本ユース(U−18)選手権。浦和レッズユースは1次ラウンドでFC東京U−18と同じグループFに入り、初戦がそのF東京戦だった。

 FC東京U−18と言えば、7月5日に行われたプリンスリーグ関東の第10節で、レッズユースが1−6と大敗した相手であることは、もちろん知っていた。7月5日は、ジュニアユースの試合とレディースの試合がさいたま市内であったので、僕は見ていないが、ユースはプリンスリーグであと1勝すれば高円宮杯出場権が得られる、という状況だったので、結果を聞いて二重に悔しかった。

   そんな相手だから当然雪辱を期待していたし、高円宮杯で決勝トーナメントに進むためにもレッズユースに勝って欲しかった。だがF東京は強い。レッズに6−1で勝ったというだけではない。簡単に言えば、U−18の今季公式戦で90分以内に負けた試合が1つもないのだった。
 プリンスリーグ関東では11戦して8勝3分けの負けなしで1位。
 日本クラブユース選手権の関東予選では、二次リーグを5勝0敗でグループ1位。グループ1位チームが関東1位から4位を決める順位決定戦では1回戦で東京ヴェルディユースに1−1のあとPK負けしているが、2回戦は三菱養和に3−0。
 関東3位で臨んだ第33回日本クラブユース選手権では、グループリーグを2勝1分け。引き分けた相手はG大阪ユースだった。決勝トーナメントでは準々決勝、準決勝を勝ち抜き、決勝でセレッソ大阪U−18と対戦。延長後半にオウンゴールで決勝点を与え、優勝をC大阪に譲ってはいるが、シュート数を見るとF東京が16本でC大阪が3本。圧倒的に攻めていたようだ。
 合計すると、今季はU−18の公式戦で18勝4分け2敗。2敗はPK負けと延長負けだから、90分以内(日本クラブユース選手権のグループリーグは80分だが)では負けがないということになる。高円宮杯の優勝候補筆頭は、クラブユース選手権優勝のC大阪ではなく、準優勝のF東京だと言う人がいるのもうなずける。
 ちなみにレッズユースを同様のデータで言うと、9勝2分け7敗となる。うちPK勝ちとPK負けが1つずつある。試合数が6つ少ないのは日本クラブユース選手権に出場していないからだ。単純に比較できるものではないが、かなり力に差があると言われても仕方がない。

 だが試合が始まってみると、そんなデータは関係なかった。レッズユースはしっかり戦っていたし、つなぐところと大きく蹴るところを使い分けて攻めていた。最後の部分でミスもあって点は取れなかったが、前半を終えて五分五分以上の出来、と言っても贔屓目過ぎることはないだろう。しかし後半10分、少し寄せが甘くなったのか、先制点を奪われた。
 僕の頭を、前日のオランダ―日本戦がよぎった。戦前の予想を覆す日本善戦の前半。しかし1点取られてからはやられ放題のような後半。終わってみれば下馬評どおりの3−0という結果。サッカーは途中経過がいかに良くても90分戦った結果で勝敗が決まるものだということをあらためて思い知った。それと同様、前半は健闘したレッズユースだったが、後半ついに先制されると一気に流れが東京に傾いてしまうのだろうか、と。
 違った。一時、劣勢が続いた時間帯もあったが、レッズユースは踏ん張って追加点を与えず、粘り強くチャンスをうかがっていた。そして31分、右サイドバックの岡本の右クロスにファーサイドで礒部裕基が飛び込みヘッドで同点。そしてロスタイム。左サイドでもらった矢島倫太郎がドリブルでマークをかわし折り返したところへ、ゴール前に走り込んだ途中出場の鈴木大輝が押し込んで決勝点。勝った。

 FC東京U−18が今季初めて90分以内に負けた。相手は浦和レッズユース。グループリーグの初戦だから、これで何が決まるものでもないが、双方の選手たちの心には何かが刻まれたに違いない。
 試合後、レッズユースの堀孝史監督が囲まれて取材を受けていた。かなり、いろんなことを話してくれたが、その中で印象に残ったのは、「無理を利かせる」という言葉だ。
 暑さでスタミナが消耗する中、レッズの方が頑張って攻め、相手が戻りきれないうちにフィニッシュに持っていった。それが2点を取れた要因に思える。走り勝ったという感じはするか?と聞いたところ、堀監督は「足をつっている選手もいましたし、走り勝ったという感じはない。ただ、ここというときに積極的に後ろの選手が上がっていく、前の選手が飛び込んでいく、最後のところで無理を利かすようなことをやっていこうよ、ということで、点が取れたというのはあると思う」と答えてくれた。
 そうなのだ。無理をずっと続けていたら、どこかにひずみが来てしまう。だけど、ここぞというところでは無理でも何でもしなければ、欲しいものは手に入らないのだ。
 世の中って、そういうものだと思う。
 スポーツは、もっとそういうものだと思う。
(2009年9月8日)
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