Weps うち明け話
#202
負けて失うもの
 天皇杯の松本山雅戦は、どんなに批判をしても批判し足りないような試合になってしまった。
 相手にとって勝つにはあれしかなかったであろう戦術で早々と失点してしまったこと。しかも開始1分に攻められたときと同じような形でやられたこと。
 レッズの20本のシュートのうち、決定的な形は何本かあったのに、それを入れられない決定力のなさ。
 絶対にやられてはいけない2点めを、ミスをいくつか重ねて与えてしまったこと。
 0-2になってからは、敗色が濃くなったとは言え、それまでのような可能性を感じる攻撃が減り、バラバラになってしまったかのように感じさせられたこと。
 試合の内容を振り返っても、いっぱい出てくるのだが、僕はこのことが一番悔やまれる。

 たとえば相手が川崎フロンターレだったら、あんなやられ方をしただろうか?まあ、そもそも川崎のカウンターの形は違うのだが、とにかく攻撃のボールを奪われてカウンターを食らうことはあり得るわけで、その備えは万全だったのだろうか?相手が攻めてきてから対応すればいい、と思っていなかっただろうか?
 カテゴリーが下のアマチュア相手に、守備重視の戦い方などできるか!攻め倒さないでどうする!という考え方もあるだろう。大相撲で、横綱が平幕相手に立ち合いに横へ飛んだりすると、批判されるようなものだ。
 だが、初めて対戦する相手に対し、しばらく出方を見るのは恥ずかしいことではない。まずはしっかり守備から入って、相手に攻めの糸口を与えないようにするのも力の差を示すことになるはずだ。90分が終わった時点で、J1と地域リーグの差はあったな、という試合であれば十分だった。

 失礼な言い方だが、“格下”と思いたければ思えばいい。カテゴリーが3つ下なのは間違いないのだから。だが、ある意味で、そういう絶対に負けてはいけない相手、であるからこそ、少なくともこちらが1点でも取るまでは、Jリーグのときよりもさらに集中し、さらに運動量を多くしなければいけなかったのではないか。
 試合前に負けることを考えるのは良くないのかもしれない。だが今回は、万が一にもこの相手に負けたときに失うものの多さを選手たちが想像するべきだった。そうしたら、違った結果になっていたのではないか。
 リーグ戦で優勝の可能性が低くなってきた中で、天皇杯は絶対にタイトルを獲ろう、というムードがチームの中にある、と関係者から聞いていただけに、本当に悔しくてならない。

 天皇杯の初戦で敗れるのは02年、03年、07年に続いて4回目だ。
 03年はナビスコ杯優勝という栄冠を得ていたし、07年はACLを獲り、リーグ戦でも首位にいるという楽しみがあった。
 02年は、ナビスコ杯で初の決勝進出という、成長の兆しが見えたシーズンではあったが、12月15日に行われたアビスパ福岡との天皇杯初戦は、リーグ戦で終盤6連敗した後であり、さらに負けた時点で福田正博が赤いユニフォームを脱ぐという試合でもあった。その試合で負けたのだから、12月の残り半月は極めて暗い気分だった。
 今回、02年の初戦敗退に比べて、救いがあるとすれば、Jリーグが6試合残っていることだ。レッズの第89回天皇杯は終わってしまったし、J1クラブが初戦で地域リーグのクラブに負けるという不名誉な記録は残るが、今季、ファン、サポーターの年末を暗い気持ちから救える機会は十分にある。その機会を名誉挽回のチャンスとしてとらえ、それを現実のものとするのは選手自身だ。
(2009年10月14日)
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