1. TOP
  2. Weps うち明け話

Weps うち明け話 #1027

再開の準備(2020年5月26日)

 

 「一を聞いて十を知る」という言葉がある。

   偉そうに聞こえるかもしれないが、僕は一を聞いたら十とは言わないが三とか四ぐらいまでは応用できると思う。つまり何かヒントがあれば、それを膨らますのは得意なのだ。

 しかしゼロから一を生み出すのは苦手だ。想像力はある方だと思うが、創造力には欠けていると自覚している。

 若いころから何か新しいことを始めるときには、アイデア会議を行うのが好きだった。できるかできないかは別にして、やった方がいいこと、やったら面白いことを何でも挙げて、それについてみんなで楽しみながら膨らませる。実際に何をするかは、別途議論する。

  若いころからこのやり方が好きで、これをブレインストーミングと呼ぶのは、だいぶ後になって知った。

  ブレストのときに「清尾はアイデアマン」と言われることが多かったが、自分では「それは違う」と感じていた。僕が提案することには、必ず何かのヒントがあったのだ。だから突拍子のない思いつきでも、ゼロからそれを生み出す人は素晴らしいと感じていた。そして、その素晴らしい思いつきに色を付け、実現させるのが自分の仕事だと思っている。

 

 Jリーグが、いよいよ再開へ進んでいる。

 先週、5月22日(金)にJリーグと日本野球機構の連絡会議が開催され、その後、両団体合同記者会見、Jリーグ実行委員会、村井チェアマン記者会見などが行われて、まずは無観客だがJリーグを再開できる見込みが示された。29日(金)に具体的な発表があると思われるが、決定してから再開までに準備期間を約1か月設けることになっているから、早ければ6月27日~28日、または7月4日~5日、遅くとも11日~12日の土曜日曜には約4か月ぶりのJ1が開催されることになりそうだ。密接に連絡を取ってきたプロ野球が、一足早く6月19日(金)の開幕(無観客)を発表しているから、まず間違いないだろう。また本日、当面は18クラブを地域によって3つに分け、遠征の際の移動をなるべく短くする案が検討されているとの報道があった。

 

 1か月間、チームはベストな状態で戦うための練習を行うわけだが、その間にクラブも周到な準備をしなくてはならない。練習および試合の際に選手やスタッフの健康を守るための措置を十分に行わなくてはならないし、通常とは違う取材対応の用意も必要だ。いつになるかはわからないが、無観客試合の次のステップ、50パーセント入場への備えもしないといけない。

 僕たちメディア関係者も準備が必要だが、どんな取材対応になるのか。そもそも取材での入場は可能なのか、メディアのカテゴリーにより制限されるのか、アウェイの取材は可能なのかがわからないので、それは29日を待つしかない(29日に取材についても発表があるかどうかわからないが)。

 

 ファン・サポーターはどうなのだろう。

 無観客試合での再開が確実な状況だが、その中でサポートする気持ちをどう選手に届けるか、少しでも選手の力になるにはどうしたらいいか、仲間たちとの一体感を味わいながらテレビ観戦するやり方はあるのか…、あれこれ思案している人がいるのではないだろうか。ブンデスリーガでは客席にサポーターの写真を置いたクラブもあったようだが、それも雰囲気作りには有効かもしれない。レッズにふさわしいかどうかはともかく。

 

 先日、クラブのスタッフとZOOMミーティングしたときに、「ウォーミングアップのとき、通常なら選手のメッセージを場内放送の朝井夏海さんが読み上げているが、無観客試合のときは、ファン・サポーターから募集したレッズへの応援メッセージを読み上げてはどうか」「試合中、テレビの前で応援しているファン・サポーターが自撮りした写真をクラブにメールしてもらい、オーロラビジョンに映していったらどうか」などと提案してみた。だがこれらが決してベストなアイデアだとも思っていないのは、冒頭に述べたように僕はクリエーターではないからだ。

 

 Jリーグが再開したら、こうしたい、ああしたい。

 今は、ファン・サポーターのいろんなアイデアを出し合うときではないだろうか。その中で良いものを実現させていくことで、無観客試合という、我々には少し痛みを伴って聞こえるその開催方式が、楽しいものに変わっていくように思う。

 クラブもいろいろ考えているだろうし、できることには限りがある。ただ、その発想にぜひサポーター目線を入れて欲しいのだ。どうやって募集するのか、どうやって議論するのか、難しい部分はあるだろうが、何百年に一度という非常事態が続いているいま(「宣言」は解除されても非常事態は継続していると思っている)、滅多にやらないことをやってもいいのではないか。

 Jリーグが延期になってから、この3か月間。ファン・サポーターの中で溜まりに溜まったものを、再開の試合に向ける。そういう準備をする1か月でもあると思う。

 

(文:清尾 淳)