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Weps うち明け話
#204
ハイリスクハイリターン
 18日(日)の浦和レッズレディース優勝凱旋試合と、その後の優勝セレモニーを取材した。去年の高円宮杯全日本ユース(U−18)選手権優勝でもそうだったが、僕はこういうとき、写真撮影や被写体探しに没頭して、必要以上に感情移入しないようにしている。何かをしていないと目が潤んでしまう可能性があるからだ。
 このコラムの#138で村松浩監督のことを書いた。その結びの文が現実になったことがうれしい。これからはジュニアユースレディースも含めたレッズの女子部門を将来にわたって磐石のものにしていく仕事を成果につなげていくことが求められる。ジュニアユースレディースは、U−15、U−18とも全国大会での結果を出してきており、レディースのトップチームに昇格する選手も増えているから、すでに成果は出つつあると言っていい。
 トップの下部組織(アカデミーセンター)では、そのカテゴリーでの全国制覇とトップへの選手昇格という形ではっきりとした成果が出ている。昨年の高円宮杯U−18優勝や今季のユース出身5人組の活躍などは、間違いなく村松さんの功績だ。その裏づけも#138に書いてある。
 レッズの2つの部門で成功しているムラさんに乾杯!

 さて、この仕事をしていて一番うれしいのは、レッズあるいはレッズファミリーの、良いプレーを見ることだ。もちろん勝利に立ち会えれば大満足だ。
 その集大成が優勝で、幸せが何層にも重なったミルフィーユのように思える。その層はシュガーだけではなく、ほろ苦いビターでできているものもある。この仕事をしていて良かったと思える最高のときだと言える。プラス気分のマックスだ。
 一方、街を歩いていて、周りの人によく目が行くことがある。朝、出勤途中の人や、今日の仕事を開始したばかりのような人に出会ってふと思うのだ。
 この人たちは、どういう仕事をしているんだろう。
 その仕事の喜びや苦しさはどのくらいあるんだろう。
 仕事とは別に、生きがいを持っていて、癒されたり、楽しんだりできるんだろうか。

 そんなふうに考えてしまうのは、たとえば10月13日(火)の朝だ。天皇杯で松本山雅に敗れた翌々日の出勤時だ。
 あんな結果を見せられた後は、どう仕事をしていけばいいのかわからなくなる。何を書けばいいのか、どんなMDPを作ればいいのか、自分はどうすればいいのか、何も手につかない12日だった。
 客観的に突き放して見ることができればいいのだろうが、それがなかなかできない。この仕事をしているからこその苦しさ。生活そのものになってしまったから、他に癒しや楽しみを求めることのできないつらさ。街を歩いている人を見て、この人たちはいいなあ、と思ってしまうのだ。

 だが街でいろんな人の社会活動を見ることによって立ち直ることもできる。
 自分だけがつらいなんて、とんでもない思い上がりだ。人がどんな苦しみを抱えているのか、僕にわかるはずもない。多くの人が何らかの困難にぶち当たりながら、毎日仕事をしているはずだ。その中には、僕のこの日の憂鬱よりもっと重いものがたくさんあるだろうし、生活そのものに関わることだって少なくないだろう。天皇杯でレッズに松本山雅に負けたことで、命まで取られるわけじゃないし、大金を賭けていたわけでもない。精神的なダメージは計り知れなくても、実害は何もない。そこから前に進んで行けるはずじゃないか。
 人間の社会活動の様子というのは、勇気を与えてくれる光景だ。

 この仕事をしているから耐えなければならないつらさ、精神的に落ち込んだときのボトムは深い。それは18年間で何度も体験している。だが、この仕事をしているからこそ受け取れる喜びのマックスは高い。それも、ここ数年何度か味わわせてもらった。
 投機とか大バクチには二の足を踏んでしまう僕だが、このマインドのハイリスクハイリターンはやめられない。
(2009年10月23日)
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