Weps うち明け話
#214
ハアハア
 やっぱりそうか。
 もしかしたら、と思っていたが、レッズの選手たちの体力は落ちていたらしい。
 僕は専門家ではないが、練習を見ていてハードかどうかくらいはわかる。なに単純なことだ。一つの練習が終わってから選手がハアハア言っているか、汗だくかどうか。そういうことだ。

 オフト時代、いろんなバリエーションの練習を見た。毎日メニューが変わり、選手たちは楽しそうだった。練習というよりもゲーム、試合という意味ではなく、遊びのゲームのようだった。いくつかはハートフルクラブのキャラバンやキッズで見るものだったから、正にそのとおりかもしれない。
 ただ終わったあと選手たちはハアハア言っていたし、いつしか汗だくになっていた。そのうち、これって気分転換も兼ねたフィジカルトレーニングか、と気がついた。10mダッシュを何本かやると嫌になってくるかもしれないが、選手たちは最後まで笑顔でしかも真剣にやっていたものだった。オフトが最初レッズに来たときに、選手たちに求めることの一つにまず「体力」を挙げた。もっと精神的なことやサッカーに対する考え方、みたいなものを予想していた僕は意外だったが、オフトはこう言った。「最後まで頑張れと言っても、走る体力が残っていなければ、気持ちだけでは頑張れないだろう?」と。

 その成果が目に見えてきたのは04年以降だった。いつだったか、ジェフ戦の前に「相手はフィジカルが強くて最後まで運動量が落ちないチームだが」という記者の質問に、監督のギドがこう答えたことがある。「フィジカルなら、うちの選手たちの方が強いと思っている。それは試合を見ていればわかるはずだ」と。たしかに、そうだったと思う。04年のセカンドステージ、素晴らしい勢いで優勝した背景には、最後まで頑張れるフィジカルの強さもあった。
 だが、ギドが監督を務めていた3年間は、ステージ優勝1回、天皇杯優勝2回、リーグ優勝1回と、最も輝かしい時期だったことは間違いないが、キャンプのときなどを別にして、日常的にフィジカル面の強さを維持、あるいは高めるための練習をしていたのか、というとあまり記憶がない。こう言うと、まるでギドを批判しているようだが、そうではない。事実として述べているだけだ。
 04年から5年間、コーチまたは監督としてチームを指導したゲルトは、自分が走ることが好きだったこともあり、よく選手に文句を言われながらランニングをさせていた。だからフィジカル面のケアはできていると思っていたのだが。

 12月15日、大原で今年最後のフィンケ監督の記者会見があった。そこで、来季の始動日には、今季の始動日よりも選手たちの体力的数値が上がっているだろうという話があった。そこで思い切って聞いた。今季、レッズを指導し始めたとき、もしかして選手たちの体力は予想よりだいぶ劣っていたのではないか、と。テキは笑いながら「その質問に対しては、1つのチャンスを活用したい。それはしゃべらないということだ」と答えた。もういい、それでわかった。
 何月だったか、アウェイ戦のバスツアーで一緒になったサポーターに聞かれたことがある。「清尾さん、あのサッカーで夏場はもつんですかね?」と。
 水内猛さんは「夏は無理だろ」と思っていたらしいが、僕は希望的観測も交えて「大丈夫じゃないですか」と答えた。根拠がなかったわけじゃない。キャンプからずっと練習を見てきて、選手たちのしんどそうな顔がもどってきていたからだ。練習中、1人が休んでいる時間が少なく、あるいは瞬発力が必要なミニゲームを多く取り入れていた。またバレーボールやバスケットボールをする日も設けていたが、頭はリフレッシュしても、終わってみれば体はなかなかハードだったと思う。04年以降、あまり目にしてこなかった練習の雰囲気が、メニューは違えど感じられたからだ。
 だが、数年間で徐々に落ちていった体力は、数か月の練習では戻らなかった。夏場の連敗はフィジカルだけが問題ではないと思うが、その影響があったことは間違いない。

 フィンケは監督として、レッズの選手たちの体力が自分の予想より劣っていた、という質問にイエスとは答えにくかったのだろうが、否定はしなかった。そして、1シーズン続けてきたフィジカルトレーニングが効果をあげてきたことも匂わせていた。2010シーズンはそこから始まる。フィジカル面だけでなく、いろいろなことが高い位置からのスタートになる。
 来季の始動まで、あと24日。
(2009年12月18日)
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