Weps うち明け話
#216
今季のソウカツ・2 幸運だったのは新人たち?それともチーム?
 1999.11.27の話を#212で書いた。10周年記念事業は忘れていないので、もう少し待って。
 99年に成績が悪かった理由の一つは、補強の失敗だと言われる。失敗というか、高校、大学からの新加入以外に補強はしなかった。新加入が補強と言えるのかどうかは、フタを開けてみないとわからないところがある。このとき移籍による選手の獲得を見送ったのは財政難からだったというのが、今では明らかになっている。当時の監督だった原博実さんは、生え抜きの人だっただけに、実情をわかり過ぎていて、大きな資金のかかる補強をクラブに強く要求できなかったという背景がある。
 移籍による補強がなかったのは今季も同じだった。03年から07年のタイトル獲得メンバーが多く残っているという点は99年と大きく違うが、08年の混迷した状況から、サッカースタイルの変革と監督の交代だけで、チームを改善することができるのか、という不安はあった。ちなみに今季の移籍補強ゼロという状況は、新しい監督が選手の特徴やバランスを見定めてから、という大義名分があったが、その後、実は補強に使える資金がそれほど潤沢ではない、という状況が判明した。

 余談になるが、レッズは全体の財政規模が他のクラブに比べて大きいのだから、金がない、というイメージがわかない。だけど収入に応じて支出も大きいのだから、最初からそれをはっきり言った方がいいのではないか。米びつは確かに大きくなったけれど、中に入っている米は実は少ないんだ、と。

 まあ、それはともかく、今季新戦力として目立ったのは山田直輝、高橋峻希、原口元気らの新人。また新人ではないが、昨年まで力を発揮しきれなかったセルヒオ・エスクデロ、西澤代志也らが、計算できる戦力になったこともある。
 上で「新加入が補強と言えるのかどうかは、フタを開けてみないとわからないところがある」と書いたので、それに基づくと直輝らの活躍は結果オーライであり、厳密に言えば計算された補強とは言えない、ということになるのかもしれない。
 たしかにJリーグで実績のある選手や外国籍選手を獲得するような補強ではないが、クラブで数年間育成してきたという面を見れば、他の高卒、大卒の新人とは一線を画す。いわゆる移籍金のようなものはかからないにしても、中学生をJリーガーに育てるのにかかる総経費を計算すれば、1人当たりの育成費は決して安いものではない。
 03年から07年にかけてレッズがタイトルを獲得していった時期、移籍による選手補強はしても、若い世代の育成はあまりうまくいかなかったことが、選手の年齢構成がややいびつな形という現在の問題点となっている。トップチームに関しては確かにそのとおりだが、さらにその次の時代を担う選手たちの育成は、その03年以降の時期に経費をかけて行ってきたのだ。

 09年、ユース上がりの若手たちがこれだけ試合に絡んだのは、フィンケ監督が指揮を執り始めた年だからというのが理由の一つだろうと思う。それは選手たちにとって、幸運なことだと言えるが、逆にレッズにとっても、新しいチームのスタイルを作り始める年に、直輝たちが上がってきてくれて、良かった、いや助かった、とも言えるのだ。

 レッズが戦力的に厳しくなっていく、そのギリギリに育成の成果が間に合ったということかもしれない。
(2009年12月22日)
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