Weps うち明け話
#227
感謝デー
 あれ、あの子は?
 久しぶりに駒場で行われた2月7日のレッズフェスタ。スタジアムの外で何やらチラシを配っている若い選手がいた。袖に「サイデン化学」のロゴが入っているウインドブレーカーを着ているところを見ると、ジュニアユースレディースの選手に違いない。彼女が持っているチラシには「レッズランド・ファミリーボウリング大会」とあった。
 レッズランドにボウリングレーンができたのか!と驚いたわけではない。ジュニアユースレディースの選手がそういう活動をしているのが珍しかったのだ。その後グラウンドに入ると、ピッチ内ではさいしんサッカー教室が開催され、周りではいろいろなイベントが行われていたが、その一つ、キックターゲットのコーナーは、ジュニアユースレディースの選手たちが運営していた。単なるお手伝いではない。参加の呼びかけや列の整理からまって、ほとんどすべてのことを高校生・中学生たちでやっていた。1月に全日本女子ユース(U-18)選手権で優勝したメンバーもいた。
 ふだん、なでしこリーグのホームゲームでボールボーイ(ガール?)などを務める姿を見ることはあるが、レッズフェスタで運営の手伝いをするのは初めてらしい。さっきのチラシ配布の光景と合わせて、ジュニアユースレディースが自分たちの活動としてレッズフェスタに参加しているという感じがした。

 6日に行われたNHKさいたまの「週刊サッカー王国」オフ会で「クラブのあるべき姿は?」という司会者の質問にこう答えた。
 選手がサッカーを職業として続けていられるのは、お金を払って試合を見に来てくれ、さらにグッズなども購入してくれるファン・サポーターと、年間数百万円、数千万円、数億円の援助をしてくれるパートナー(スポンサー)のおかげであることを、常に忘れないクラブであってほしい。
 そうであるならば、このレッズフェスタや、5日に行われたクラブ主催の「感謝の会」(スポンサー謝恩パーティー)は、ファン・サポーター、パートナーに試合以外で直接お礼ができる数少ない機会だ。「ファン感謝デー」というが、「その日だけでもファンに感謝する日」ではなく、「日ごろの感謝の気持ちを試合以外で表わす日」だということを、どれだけの選手が理解して、これらのイベントに参加しているのだろうか。
 選手は試合を見せて年俸をもらっている。それ以外のファンサービス活動をどこまですべきか線を引くのは難しい。レッズフェスタでトップチームの選手たちがキックターゲットの運営をやったら、周りに人が集まりすぎて収集がつかなくなるかもしれない。だが、感謝する気持ちは、姿勢や言動、表情に反映される。ファンやサポーターは、皮膚感覚でそれを感じ取るのだ。

 レッズフェスタの終了後、スタジアムの外に立って、帰っていく参加者たちにお礼を言っている橋本代表の姿があった。少なくない人が、「頑張ってください」と激励の握手をしていった。
 ある人は「代表がそんなところでお礼言ってるより、他にやることがあるだろう」と言うかもしれない。たしかに代表の仕事は他にもいっぱいある。だが、レッズフェスタのこの日は、ファン・サポーターの中に入って体温を感じることが重要な仕事だと思う。
 朝青龍の引退劇で、朝青龍自身より相撲協会や親方の姿勢の方が問題になっている。レッズでも、選手に自分たちを支えているのが何かを新人はもちろんベテラン選手にもしっかり教えるのは、クラブのスタッフだ。まずクラブスタッフが、感謝の気持ちを持っているか、そこから問われる。チームの強化がダントツに大事なことは言うまでもない。だが、並行してできることはある。

 それにしても、シーズン開幕前でなく最終節終了後に、埼スタから帰るファン・サポーターが橋本さんに駆け寄って握手をしていく姿を見たいものだ。
(2010年2月8日)
〈EXTRA〉
「私の1999.11.27」は、本日が締切です。詳しくは「#218」を。
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