僕は毎朝、郵便局に寄って私書箱からMDPあての郵便物を受け取って出勤する。
ほとんどは、それだけの用だが、たまに代金の支払いなどの用事があるときもある。僕が寄るのはたいてい7時から8時半ごろで、郵便局のシャッターはまだ閉まっており、私書箱や郵便の時間外受付だけが開いている。ATMを利用しようとしたが、機械が用紙を受け付けてくれない。管轄外だとは知っていても、時間外受付の人に聞いてみるが、やはり「会社が違うので」とそっけない。どこに連絡したらいいかも「わからない」と言う。
仕方なく9時にシャッターが開くまで30分ほど待った。窓口でも処理できるはずだが、ついでなので「ゆうちょ銀行」のフロア係の男性に聞いてみた。「払い込み書」の形式が新旧二種類あり、僕が持っている払い込み書では時間外にATMでは払い込みできないという。なるほど。では、今ならどのATMでも支払いができる?OK。僕は1台のATMの前に行って操作した。やはり駄目だ。係の男性に言うと、違う機械を案内してくれた。機種が違うようだ。今度はうまくいった。係の男性がこう言う。
「実はさっきの機械はA社製でして、あとのはB社製なんです。A社製はときどき不具合になりまして…」
そんなこと説明されましても(笑)。
別の日、また郵便口座への支払いの用事ができた。用紙を見ると、またペイジー(時間外でのATMを利用できる用紙)ではないので、今度は9時に郵便局へ行った。B社製のATMで操作を始めたが、途中で「10万円を超える現金での支払いはできません」という表示。ああ、そうか。もう銀行なんだもんな。仕方なく窓口へ。払い込み書を出すと「10万円を超えますと本人確認が必要です。何か証明になるものはありますか」。運転免許証は表の車の中だ。持ってくる。「コピーを取らせていただいてよろしいですか」。そこまでするの?気分は良くないけど、仕方がない。了承して、お金を置いて処理を待っていると、呼ばれた。「払い込み書に書かれた住所と免許証の住所が違うのですが」。それはそうだ。「こっち(払い込み書)は会社で、こっち(免許証)は自宅です」と当たり前のことを説明する。
「住所が違うと処理できないのですが、こちら(払い込み書)の住所で証明するものはないですか?」
「名刺しかないな」
「名刺ではお受けできません」
でも、払い込み書には「株式会社清風庵 清尾淳」と印刷されている。そして僕が清尾淳であることが免許証の写真でわかるだろう。本人確認と言うなら、それで十分では?駄目?思わず少し声が大きくなり、窓口の女性が、ちょっと慣れた感じの別の職員に相談する。
「お客様、こちらがお勤め先で、こちらがご自宅ですか?」
「そうです」
「では、結構です。少しお待ちください」
さっきもそう説明したんだけど(笑)。
先に対応した女性が融通が利かなかったのか、僕がキレそうだったから処理してくれたのかはわからない。予定より10分程度多く時間を使ったが、支払いを終えて郵便局を出た。
郵便局での支払いで、二度続けてつまずいた。しかしいずれも、著しく不当な扱いを受けたとか、職員の態度が悪かったということはない。つまり何も問題はないので、郵政民営化はやはり失敗だったなどと声高に叫ぶ気はない。
こんな自分のウサ晴らしのようなことはコラムのネタにならないだろうと思っていた(しかも金融機関の公式サイトで)。だが、それからしばらくしたある日、仕事場近くの銀行の支店に行って税金関係の手続きをした。
そう言えば、ここでストレスを感じたことがないな。初めての手続きでわからないこともよくあったが、フロアにいる女性行員が実に手際良く教えてくれる。何を聞いても、対応がスムーズで的確、まるで愛想の良いパソコンのようだ。だから、多少不案内な事柄でも、ここに来れば問題なく処理できるだろうという思いがあり、その支店に行くのに全く逡巡や不安がない。
この違いはなんだろうか。一つにはフロア係の人の習熟度というものがあるだろう。しかしもっと根本的に、その会社全体での経験値の違いがシステムの改善を生んだのではないだろうか。
お客がどういう認識でいて、どういう戸惑いがあるから、システムをこう変えたほうがいい。机の上でだけ考えたシステムがそのままスムーズに機能することはあまりなく、長い間の現場での経験によって、より良いシステム、さらに最良のシステムが導き出されるのだろう。
レッズがサッカーの改革を始めてから2年目の3分の1を過ぎた。昨季はとにかく、つなぐ意識の徹底、というのが大きなテーマだった気がする。とにかくボールを失わない。できるだけ少ないタッチで味方につなぐ。それが、ときにゴールを目指す意識を上回ってしまったような場面もあったし、相手のプレッシャーがあまり強くない時点でのパスが多くて相手を崩すことにつながらない、ということにもなった。ボールを回して1年過ぎた、と酷評されても仕方がない(それでリーグ6位ならば上出来だ、とも言えるが)。
ボール回しの1年は決して無駄ではなく、今季はそこから前進した。実際に試合を見ればわかる。シュート数や惜しい場面が増えた。また安全第一のパスが減り、勝負のパス、すなわちこれが通ればビッグチャンス、というパスの選択が多くなった。これらは選手たちが1年間、現場での経験値を上げ、自ら感じた課題を克服しようと努めた成果だ。それを忍耐強く見守ってきたサポーターの成果だとも言える。
去年から見れば、ゴールには限りなく近づいた。だがそこで、また前進が停滞している気がする。チャンスをどうしたら得点に結び付けられるのか。シュートは個人の技術によるところが大きいというが、タイミングの違いや選手同士の思惑の差でゴールにならなかったものも多いと思う。
レッズはまた現場での経験値を上げている最中だ。去年よりもゴールに近い場所でもがいているのだから、そこから一歩進めばネットが揺れる。そう思う。 |