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Weps うち明け話
#241
当事者
 大宮戦、結果もさることながら、4万人という入場者数が寂しかった。
 7月27日、京都戦を翌日に控えて行われたフィンケ監督記者会見の席上、「前節の広島戦は再開後、初めてのホームで3万7,000人という数字だったが?」という記者の質問に答えて、監督はこう言った。
「昨年のホームでの平均観客数と今までの今年の結果を見る限り、(同じカードで比べると)現時点では今年の方が若干増えています」
 僕も初耳だったたし、意外だった。そういう対比の仕方も一つの目安には違いない。そして計算してみると、同じカードを抽出した合計は、たしかに去年よりも今年がわずかだが上回っていた。
 だが、それは広島戦の前の数字。広島戦が終わってあっさりとマイナスに変わっていたし、大宮戦を経て昨年比マイナスはさらに増えた。つまりは今季のシーズン当初と比べて入場者が減ってきているということだろう。そこには経済状況だけでなく、ナビスコ杯を含むホームゲームでの勝率の悪さが影響していることは間違いない。
 浦和レッズといえど、チームの状況に関わらず応援のために試合に来てくれるサポーターがホームタウンに5万人、6万人いるわけではない。安くないお金と労力をかけて試合に行っても、勝利が見られないとあっては、スタジアムへの足が遠のく人が増えていっても無理はない。ゴールが決まったときの興奮、ひいきチームが勝利したときの満足感は、他では得られないものだし、いくら金銭を積んでも自由に購うことができない。その可能性にかけて埼スタに向かうには、今の成績は説得力に乏しい、ということだろうか。

 かつて浦和レッズのチケット販売は、どうやって売るかで苦労したことはなかった。93年から95年の前半かけての、キャパシティ1万人時代はもちろんのこと、95年8月からの駒場2万人時代でも、状況に大きな変化はなかった。大変だったのは、発売初日の混乱をどう防ぐか、ホームタウン在住者の差別化をどうするか、高騰するアングラチケット狙いの転売目的購入をいかに防止するかだった。あるいは、入場者の動向や要望を、席割りにいかに反映するかにも心をくだいた。またスタジアム入場前の待機列の整理、開場時の危険防止、開場後の過剰な席取り防止なども重要な仕事だった。
 ホームスタジアムが埼スタにシフトしだしてからは、さすがに全試合即完売とはいかなかったが、開幕戦や最終戦は発売日に完売し、そのほかの試合も強豪相手、近隣クラブ相手となると売り切れに近い状態だった。

 今はそういう状況ではない。Jリーグの他の試合と比べればレッズのホームゲームの集客力は今でも日本一だと言っていいだろう。だが、まとまった空席が目立つ埼スタは応援する熱度にも影響するだろうし、興行において「客が客を呼ぶ」ことがあるのと同様、「空席が空席を呼ぶ」こともありうる。
 サッカークラブにおいて、ホームゲームの入場者というのは経営の根幹をなすものだ。その数はそのまま入場料収入に反映するし、試合当日のグッズや飲食の売り上げにも関係する。パートナー企業がお金を出してくれるのも、レッズに対する支援の気持ちと同時にスタジアムでの看板などの宣伝効果も期待しているはずで、入場者が少なくなれば来季の契約にも悪影響が出るだろう。そういう点では、チームの強化という柱とともに、この入場者減少傾向への歯止め、いや、そういうネガティブな考え方ではなく、埼スタを満員に戻そう!という取り組みをクラブ全体で進めなければならない。
 27日の記者会見で、フィンケ監督は「そのことについて私が聞かれるのは間違っていると思います。なぜならば、それらの担当者は他にいるはずですから」と述べた。たしかに「担当者」ではないが、クラブの一員として監督も「当事者」であることは間違いないし、中でも重要な役割を担っている当事者でもある。まあ、あの記者会見では「入場者が減っているのは、あなたのせいではないですか」と詰問されたように受け止めて、そうう発言になったのだろうが(その質問自体、そういう語調ではなかったのだが)、去年との数字を比較してみせるところなどをみると、当事者としての自覚は監督にももちろんあるようだ。

「チームがこんな成績じゃ、人が減ってもしょうがないよ」
「チケットを売るのは俺の仕事じゃないよ」

 クラブの誰かがこんなことを思っていたら(思っていないと信じるが)、埼スタ満員などという目標(これ、目標にしているよね?クラブは)は達成できない。何度も言うが、入場者はクラブ経営の根幹なのだ、どの部署がどうこういうことではない。全員が当事者だ。
 クラブも、ホームが埼スタに移行してからは、たまにある空席を埋める努力はしてきた。それに関しては枚挙にいとまがない、と言っていい。だが、こういう入場者減が深刻化してからの新しい施策はまだ見えない。今こそ、埼スタを満員にするために、これまでにない施策を打ち出し、実行すべきではないだろうか。僕がここで具体的な提案をしてしまうと、スタッフの意慾を削いでしまうかもしれないから、それは直接言うことにして(試合後に、もう言ったが)、あることを振り返ってもらいたい。
 それは05年の10月5日、市原臨海競技場で行われるナビスコ杯準々決勝第2戦、ジェフ戦に向けて、レッズサポーターが浦和駅前でダンマクへの寄せ書きと、試合への応援を呼びかけたことだ。このコラムの#31にも書いた。もう一つ、レッズのJリーグ初優勝がかかった06年の12月6日の最終戦に向けて、サポーターが浦和地域の各駅でチラシを配布して盛り上げを図ったことだ。
 決してホームの入場者を増やすための行動ではないが、サポーターがスタジアムの外に出てサポート活動を繰り広げたことを思えば、クラブにもいろいろなアイデアと活動があってもよいのではないか。

 夏休み。あとホームゲームは2試合だ。
(2010年8月6日)
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