Weps うち明け話
#249
終わりのメドは?
 今回はR指定解除です(笑)。
 本当は#248の後すぐに出したかったのだけど、MDPの週に入ってしまい、おまけに月曜が休みなので編集作業日が1日少ないことを忘れていて、火、水、木とMDP密度が濃くなってしまった。―これぞ、うち明け話だ。
 さて―、

 レッズが「人もボールも動く、夢のあるフットボール」というチームのスタイルを作ることを掲げて2年目。去年、いろいろなサッカー解説者に話を聞いたけど、多くの人が
「06年の優勝のころは強かった。しかしサッカーとしては面白みに欠けた」
「レッズがパスサッカーを志向するのは素晴らしいこと」
「だけど、時間はかかりそうだよ」
と語っていた。
 当事者である監督が「時間がかかる」というのは、エクスキューズと捉えられかねないけど、あまり利害関係のない外の人がそう言うのだから、ある程度覚悟しておかないといけないな、と思った。
 でも、その時間て、いつまで?
 2年目を迎えて、もう10月。いや、まだ10月なのか。
 今回のフィンケ改革にかかる時間のメドはどれくらいなのか。今年に入って、そういう疑問をずっと持っていた。
 どうなったら「人もボールも動く、夢のあるフットボール」がレッズに確立された、と言えるのか。試合の主導権を握ってパスを回して勝つ試合がしばらく続いたら、もうOKなのか。

 逆じゃないか、と思う。
 パスを回そう回そうと意識しているうちは、身についたとは言えない。パスをつなぐこと第一でやっている時期は、ボールを取られる可能性があるロングパスは優先順位が低くなる。つなぐだけなら簡単につなげるようになって、次にどの方向へ、という判断が加わる。さらに連係が良くなってくれば、味方の足もとだけでなく、スペースへのパスが増える。さらには出し手と受け手の距離が長くなってもつながるようになる。
 だから現象的には、スペースへのロングパスが成功してそこから点を取れるようになったら、チームに今のサッカーがしっかり身についた、と言えるのではないか。ただし追い込まれて苦し紛れに縦に出したパスがたまたまうまくいったというのではなく、近くにもパスコースがあるけど、今はロングパスが一番ゴールに直結するという出し手の判断と前線の選手の思惑が一致したプレーで。そして次にはまたショートパスも織り交ぜながら人数をかけて攻める、というプレーを披露できるようになっていれば。

 つまり、ロングパス1本でも点が取れるようになれば、今のチーム改革は高いレベルにまで到達したと言えるのではないか、という逆説的なことを言いたかったのです。#248の次に。サッカー的に分析するのではなく、禁煙の話から連想するのが、僕らしいところなのだけど。
(2010年10月15日)
〈EXTRA〉
 これで思い出したのがオフト監督時代。
 しっかりとした土台を築いて欲しいと請われて就任した同監督も「去年J2から上がったばかりのチームを優勝争いができるまでにするには時間がかかります」と02年の初めに答えていた。当時のクラブの塚本代表は「3年で」と言っていたのだから、それがメドにはなったけど、翌年サテライト担当コーチとして柱谷哲二さんが来たとき、聞いてみた。
 哲二「オフト、細かいでしょう」
 清尾「指導が細かいですね。代表のときもそうでしたか」
 哲二「細かい、細かい。でもこれをやっていけば強くなりますよ」
 清尾「そうですか」
 哲二「ただ、じ・か・ん、はかかりますよ」
 文字でどう表現していいかわからないから、「じ・か・ん」と書くしかなかったが、哲二さんは「時間はかかる」ことをかなり強調した。彼は別にエクスキューズする必要はなかっただろうから、オフトに任せると強くはなるけど時間はかかる、と経験的にわかっていたのだろう。そして確かに時間はかかり、強くなった。優勝を続けるには強烈な選手を何人か獲得する必要はあったが、チームのベースは上がった。ただ、あのときは「スタイルの確立」がオーダーではなく、優勝を争えるチームに、が課題だったからゴールははっきりしていた。
TOPWeps うち明け話 バックナンバーMDPはみ出し話 バックナンバーご意見・ご感想