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Weps うち明け話
#260
勝負強さ
 最終節、終了のホイッスルが鳴ったとき、僕はメーンスタンドの前列南側を歩いていた。試合後のセレモニーを上から撮影するために、早めに移動していたのだ。
 ちょうど神戸のベンチの辺りで、控え選手やスタッフがピッチになだれ込んで行くのが見えた。降格は時間の問題と思われた状況から巻き返し、FC東京の失速もあるが、最後は自分たちが連勝してJ1残留を決めたのだから、その喜びは無理もなかった。最後のこの試合にかける執念は全員、ものすごいものがあったのだろう。
 レッズも、いろいろな思いをこの試合にかけていたはずだ。ロビーのリーグ戦最後の試合、フィンケ監督退任による2年間の集大成を見せるべき試合、何よりもホームゲーム最終節…。みんな神戸のモチベーションに負けずに戦う気持ちでいたには違いない。だが、ピッチを見る限り、どんどん前から来る神戸にタジタジとなっていた感があった。引いて守られるより、出てこられた方がいい。そのはずだったのに。2年間の集大成を見せるはずだったのに、2年間でワーストに近い負け(点差はワースト)を喫してしまった。
 今季、神戸にはナビスコ杯で逆転勝ちしたが、リーグ戦では2敗。8月8日(日)の試合は、前半の終わりに神戸が1人退場になり、後半開始から11対10で戦う有利な展開だった。しかし後半7分に失点して、その後レッズは取れずじまい。もしかして、その状況が甘さを生んだのか、それとも10人になった神戸が負けて元々という居直りでぶつかってきたのか。いま思うリーグ戦では2試合とも気持ちで神戸が上回っていたのかもしれない。それはチームに備わっているものというより、状況が生んだものだろうけど。

 試合の分析というよりリーグ戦34試合を終わった印象で言うと、MDPの380号で大住さんも書かれているが、今シーズンは勝負強さが見られなかった。
 チーム力が弱い、というのではない。よく言われているように、パスサッカーは控え選手も含めて全体に浸透しているし、パスの種類も横から縦に比率が上がっていった。去年のようにDFラインがバタバタして失点することも減った。
 しかし去年の43得点43失点は、今年48得点41失点と改善されたかに見えるが、16勝4分け14敗だった勝敗は14勝6分け14敗とやや後退している。それは勝負どころで得点できていないからだ。
 大住さんの見方とあまりダブらないように言うと、1点差での負けが10試合あるのに対し、1点差による勝ちは6試合しかない。しかも試合展開を見ると、1点差勝ちの6試合のうち湘南戦は2−0からロスタイムに1点取られたもので、競り勝ったわけではない。一方、負けた10試合はすべて競り負けたと言っていい。さらにそのうち4試合が逆転負けで、うち3試合はロスタイムに決勝ゴールを食らっているのは誰もが記憶している。ちなみに逆転勝ちというのは今季ホーム名古屋戦の1試合しかない。
 また6試合あるドローはすべて1−1だが、追いついた引き分けが2試合で追いつかれたものが4試合と、これも勝ちきれなかった形の方が多い。このうちホーム鹿島戦のドローは悔やんでも悔やみきれないものだった。
 フィンケ監督はロスタイムでの失点について「とても不幸な形で勝点を失った」と言う。その言い方も間違いではないと思うが、こうまで多いと「勝負弱さ」と言った方が妥当だろう。10月23日の磐田戦、あるいは11月7日の広島戦。後半、同点にされたとき僕は「さあ、ここから勝ってみろ!競り勝つ強さを見せてみろ!」と心の中で叫んでいたが、かなわなかった。

 12月25日の天皇杯準々決勝までに、この勝負弱さを改善できるのか。フィンケ監督の性格から言えば、天皇杯優勝という目標は、自分がやってきたことの正しさの証明であり、サポーターへの置き土産であるだけでなく、監督交代という結論を出したクラブに対する「痛烈な皮肉」の意味が強いだろう。決して「最後のご奉公」ではなく。
 何がモチベーションになっても構わない。今季の課題の一つである勝負強さをどう回復するのか。トーナメント戦を勝ち抜くのに、それは不可欠の要素だ。そこがこの3週間の最大の強化ポイントだと思う。
 そして来季に向けても。
(2010年12月6日)
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