Presented by 埼玉縣信用金庫
Weps うち明け話
#263
感覚
 12月4日の最終節で、試合前にオーロラビジョンで流れた鈴木啓太の、18日、19日のシーズンチケットホルダー向けイベントの告知は見ただろうか。あの時間はコンコースで休んでいる人もいたかな。
 試合の2日前に大原であの映像を収録するとき、僕もたまたま近くにいたので何気なく見学していると、原稿を素読みしていた啓太が言った。
「これ、いいのかな…」
 最初に用意されていた原稿はこうだった。
「ファン・サポーターのみなさん、いつも応援ありがとうございます。(中略)日ごろの感謝を込めて、18日と19日にシーズンチケットホルダーのみなさん限定のイベントがあります…」と続いていた。
 ファン・サポーターのみなさん、と始めておいて、シーズンチケットホルダーの限定の、というところに啓太は違和感を覚えたらしい。
 あまり斟酌している時間もないので、「限定の」というところを「に向けた」と言い換えたバージョンも撮影して終わろうとした。
 だが、その場にいた僕も加わってもう一度考え直し、こういうメッセージにした。実際に流れたものだ。
「ファン・サポーターのみなさん、いつも応援ありがとうございます。今日はシーズチケットホルダーのみなさんにお知らせがあります。18日と19日に…」と。
 聞き覚えだから一言一句まで正確ではないが、こんな感じだったはず。まず会場にいるファン・サポーター全体に挨拶し、日ごろの感謝を述べる。そこでいったん話を終え、シーズチケットホルダーへの呼びかけに切り替える。それならシーズンチケットホルダー以外の人に失礼にはあたらない。

 啓太の敏感さに感心した。指示されたとおり原稿を読んで終わり、ということにはせず、これを聞いたファン・サポーターがどういう印象を受けるか、ということを考え、その結果、修正を提案する。そういう常識の持ち主だということを証明した。
 この秋から、レッドボルテージに選手が手分けして来店し、一日店員のようなことをやっている。クラブからの要請に選手が積極的に応えたものだ。その理由は?という問いに対し、啓太は即座にこう答えた。
「レッズが危機だから」
 入場者の減少という目に見えるもの以外に、いまレッズは難しいところにあるのではないか、と啓太は感じているらしい。レッドボルテージの一日店員を選手がやることで入場者が増えるとは啓太も思っていない。自分たちの仕事は、まずピッチでのパフォーマンスだ。だが、それ以外にもレッズを盛り上げることで自分たちにできることがあるなら、それには積極的に協力していく、ということだった。そういう啓太だから、あの収録の原稿にもこだわったのだろう。
 レッズがレッズらしさを失わずに、ホームタウンにより溶け込んでいくにはどうしたらいいか。選手の派遣や露出に限らず、まだまだやれることはあるはずだ。それをみんなで考えていく時期だと思う。
(2010年12月9日)
〈EXTRA〉
 フォローしておこう。敏感な読者は、こう思ったかもしれない。啓太の感覚は立派だが、もともとの原稿を作ったクラブの感覚が良くない、と。
 僕の仕事でも往々にしてあるが、これが書きたい!と強く思い込んだテーマがあると、そこを強調しすぎてかえって言いたいことが伝わらなかったり、逆効果だったりすることがある。ちょっと時間をおくとわかるのに、そのときは、これが100パーセントだ、と思ってしまうのだ。そんなときに、誰かに見てもらうと、ハッと気づくものだ。
 いまシーズンチケットの担当部署は、1人でも多くのホルダーに更新してもらおうと懸命になっている。だから懸命になりすぎて、最初のような原稿になってしまった。もし、直接の担当でない部署のスタッフに相談すれば、上記のような妥当な原稿になっていたはずだ。
 というわけでシーズンチケットホルダーのみなさん、12月18日、19日は初のシーズンチケットホルダー対象のイベントが埼スタであります。なるべくなら19日に参加して、18日は望年会へぜひ。
TOPWeps うち明け話 バックナンバーMDPはみ出し話 バックナンバーご意見・ご感想