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Weps うち明け話
#264
12月29日、国立へ
「国立、行きますから」
 浦和レッズジュニアユースのキャプテン、須藤岳晟(たけあき)は、去り際に、明るくそう答えた。僕は何か言おうとして、言葉が出て来なかった。

 高円宮第22回全日本ユース(U−15)選手権に臨む浦和レッズジュニアユース。今季のチームは、監督(U−15担当)の池田伸康が「指導者いらずです(笑)」と言うほど自主的で、かつ結束が固い。ミーティングなども選手だけで自発的に行っているし、試合のときの水の準備やビデオ撮りなど、コーチが指示しなくても誰かがやっている。今年の3年生は19人で、全員が試合に出られることはないが、選手に取材すると口をそろえて「出ている選手も出ていない選手も一緒に戦っている」と言う。

 こんなことがあった。
 第25回日本クラブユース選手権(U−15)の関東予選を前にした6月のある日、FWの関根貴大が練習で足首を痛め、予選に出られないことがわかった。関根は中学1年生の夏から公式戦に出場し得点もしており、攻撃の中心を担う選手だが、昨年の夏から腰を痛め10か月近く戦列を離れていた。今年の6月5日、関東ユースリーグでようやく公式戦に復帰。3試合に連続先発出場。体力的には戻っていなかったが、プレーでは持ち味を随所に発揮し、完全復活を目指していた矢先だった。
 病院で診断を受けた関根は、クラブユースの関東予選が行われる7月3日と4日には間に合わないことをチームメートにうち明け、泣いたという。チームメートも泣いた。前年の夏からずっと自分たちが練習している横でリハビリに励んできた関根がようやくプレーできるようになり、一緒に全国を目指そうというときだけに、関根の無念さは痛いほどわかった。
「俺たちが関根を全国に連れていく」
 須藤を中心としたチームメートは、泣きながらそう誓った。
 攻撃でチームを引っ張ったのは進昂平だった。関東予選の2回戦、強豪の横河武蔵野を相手に1−0とリードしたものの拮抗した展開が続いた後半37分、勝利を引き寄せる貴重な追加点を挙げた。さらに全国出場がかかる3回戦では、横須賀シーガルズを相手に前半ハットトリックの活躍で試合を決めた。横河武蔵野戦でゴールを挙げた後、雄叫びを上げながら走っていった進が真っ先に抱きついたのは、リザーブに入っていた関根だった。

 その進が、9月にヒザの痛みが悪化し、戦列を離れた。高円宮杯の関東予選は11月7日からだったが、それまでに完全には戻らなかった。今度は「進を高円宮杯に連れていく」がチームの合言葉になった。とりわけ奮闘したのは関根だった。自分が出られなかった夏の関東予選で、仲間たちが踏ん張ってくれた姿を忘れることはなかった。
「今度は自分の番だと思った」
 体力も万全に戻った関根は関東予選3試合連続ゴールの活躍を見せた。しかし全国行きをかけた3試合目の川崎フロンターレU−15戦の後半、サイドの突破からクロスを上げた際、軸足を捻挫。プレーが不可能となり、交代した。試合は2−2の同点。大事な場面でピッチを去らなければならないことが悔しくて関根は泣いた。
 その涙をピッチの中の仲間たちは見ていた。須藤は「あいつの涙を見て、絶対に勝ってやると思った」と語り、GKの関口亮助は「関根やベンチで見ている仲間たちのためにも絶対にゴールは割らせない、と思った」と振り返る。終盤から押され気味となった試合を、延長も含めてドローで終え、PK戦に。そこでは5人全員がシュートを決め、関口が相手の4人目を止めて勝った。

 夏のクラブユース選手権準決勝。取材をしていた僕も、途中で決勝進出を確信するほど、レッズは清水エスパルスジュニアユースを圧倒していた。だが先制したあと追加点が取れないまま、疲れが見えた後半28分、同点にされると焦りが加わり、37分に逆転ゴールを許してしまう。見ていた僕が信じられない展開だったから、選手たちも同じだったのではないか。
 その敗戦と今回のPK勝ちという2つの経験を生かすときが来た。彼らには「優勝を期待しているぞ」といくら言ってもプレッシャーにはなるまい。自分たち自身が「このメンバーでやるのはこれが最後。いつも一緒に戦ってきた仲間たちと、3年間お世話になったノブさん(池田監督)のために、絶対に全国優勝する」と誓っているのだから。

 高円宮杯U−15。僕は19日の1回戦は取材に行けるが、23日の2回戦は外せない所用で、25日の準々決勝は天皇杯G大阪戦のため、取材に行けない。12月11日、レッズランドで選手たちに取材し、「19日は行くけど、その次は西が丘(準決勝=27日)まで行けないんだ。頑張ってくれ」とキャプテンの須藤に声をかけると冒頭の言葉が帰ってきた。国立は、29日に決勝が行われる場所だ。
 残念!「そうすれば天皇杯のトップと一緒に、いっぱいのレッズサポーターに見てもらえるな」と言える日程なら良かったのに!
(2010年12月14日)
〈EXTRA〉
 望年会参加のみなさん。今週末はよろしくお願いします。参加応募をいただいた代表者の方には、お返事を出していますが、万一連絡が行っていない方がいらっしゃいましたら、ご連絡ください。もし、今からでも参加の意思がある方はギリギリまで受け付けていますので、ご検討ください。
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