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Weps うち明け話
#272
重心
 GKが、シュートを取れそうな位置にいるのに重心が反対の脚にかかっていて、そっちに身体が伸びず、ゴールを割られるという場面がある。逆に言うと、シュートする側はGKがどちらの脚に重心をかけているか瞬時に見抜いて、その反対側に蹴れば得点の可能性が高まる、と言うのは簡単だが。
 剣道では右足が前、左足が後ろで、間を空けすぎず詰めすぎず、平行になるように構え、その形を崩さずに前後左右に動く、足さばきを最初に習う。どの方向にも素早く動けるような体勢を常に取っておくためだ。重心は両方の脚に均等にかかるようにしておくが、当然前に出るときは少し前がかりになる。それを悟られないようにして自然体から打って出るのが難しかった。後ろに重心がかかっているときにチャンスが生まれたら、出るタイミングが一瞬遅れスキを逃がすことになる。その駆け引きは、打ち合いよりも面白かった。

 1月18日(火)にペトロヴィッチ新監督の記者会見が行われた。クラブは昨年から「目指すサッカーの方向性は変えない」と強調してきた。だが当の監督はどうなのか。まずは発言から、その方向性を感じ取る機会だった。
 結論から言うと、「ボールポゼッションを高め、しっかりパスを回してゴールを奪う」ということでは、昨年までの2年間と変わらない。
 ただし文字で書くと、だ。文字だと伝わらない部分がある。たとえば自然体で立っているGKがどちらに跳ぼうとしているか、わからないように。
 ペトロの言葉からは、「点を取るために」「勝つために」という姿勢が強く感じ取れた。重心がポゼッションそのものやパス回しにではなく、「得点」「勝利」にかかっていると思う。昨年までの2年間も、もちろん点を取るためにパスを回すのだし、勝利を目指していることには違いなかった。しかしチームのコンセプトを大転換させるための時期として、必然的にパスを回すことに重心を置かざるを得ず、見た目には「パス回しのためのパス」のように映った時期もあった。その期間がなかったら、パスをつなぐことがファーストチョイスというチームコンセプトはなかなか徹底されなかっただろう。逆に言えば、この2年間を経て、重心をゴールへ移行させる段階に入れたとも言える。
 その重心のかけ方は練習でも垣間見えた。昨年までとは違う指示が飛ぶ。監督が替われば練習内容も変わるのは当たり前だが、選手たちも新鮮味を感じているだろう。まだ始まったばかりだが、チームは確実に変化しそうだ。その変化がどういう試合内容と結果をもたらすかはまだわからないが、そもそも練習開始の時期はそういうものだ。気分がポジティブならば未知の部分にワクワクするし、ネガティブなら未知の部分を不安に感じる。
 今の僕は、ペトロの重心のかけ方が楽しみになっている。
(2011年1月21日)
〈EXTRA〉
 もちろん、一気に薄くなったと見られるボランチのポジションをどうするのか、昨年の明らかな弱点だったセットプレーでの点の少なさと終盤の失点の多さをどう改善していくのか、などはっきりした課題はある。しかし、その課題もどう解決していくのか、今は楽しみの一つになっている。ちなみにセットプレーについては、20日の練習でマルシオ・リシャルデスが見せたコーナーキック(サーキットトレーニングの一つ)を、いっぺんに期待が高まった(単純な性格だ)。
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