Presented by 埼玉縣信用金庫
Weps うち明け話
#280
今できることを
  #278で「3冊目の幻になるかもしれないMDP4月2日号」と書いたためか、読者・サポーターの方から「幻のMDP381号を販売して義援金にできないでしょうか?」というご意見・問い合わせをいただいた。ほかにも「ガンバ戦のMDPはレアものになるね」とよく言われる。
 結論から言うと、3月12日・G大阪戦用のMDP381号は完成していない。説明するとMDPの印刷工程は、はホームゲームの前々日夕方に3分の1を、前日の夕方に残りの3分の2を印刷し、試合当日の早朝に製本する、というもの。だからこの号については、17ページから32ページまでは10日のうちに印刷が終わっており、地震が発生した11日の14時46分といえば、残りの1〜16ページおよび33〜48ページの印刷に入る寸前だったらしい。地震がある程度収まってから設備の点検を行っているうちに、翌日の試合中止の連絡が来た、ということだ。だから3月12日付の381号は、形としては裏表に8ページずつ印刷されたB2判の紙があるだけで、ホームページに告知は載せていても冊子としては完成していない。
 そして、16日の試合開催の是非については月曜日の14日に発表ということだったから、11日の時点では16日のナビスコ杯清水戦が381号になるという前提で仕事を進めた。すでに編集作業が半分終わっていた清水戦用MDPの内容と、中止(延期)になったG大阪戦用MDPの内容を合わせて新しく企画を立て直し、土日はそれに対応して動いた。だが、やはり16日も中止となり新381号も幻に終わった。ちなみに、もし「3月いっぱいはJリーグ開催なし」の決定が夜まで延びていたら、新381号も3分の1は印刷せざるをえなかったかもしれない。
 というわけで、本当に幻で終わっているので、販売するようなものはできていない。印刷が終わった分を、将来何らかの形でお見せできる機会があるかもしれないが、募金のお礼としてお渡しするようなものではないと思う。
 だがアイデアとして提案していただいたことは非常にうれしかった。レッズとして地震と津波の被災者のためにできること、それを可能なあらゆる形でやっていきたい、というサポーターの気持ちの表われだろうし、それにMDPも役立てるんじゃないか、と考えていただいたことは光栄だ。

 僕も考えた。
 さいたまスーパーアリーナに、原発事故の災害から避難して来られた福島県の方々が大勢おられる。レッズの練習が再開したら、1日くらいアリーナで練習をして、みなさんに見てもらうのはどうか、と。
 だが現場で仕事に当たっている人の話では、避難して来られた方々の健康状態、精神状態は、とてもそういうものを見て心が和むとかいう状況ではないらしい。たしかに、スーパーアリーナのコンコースは寝泊りするようにできている施設ではないのだから、そこで何日も過ごし、しかもそれがいつまで続くのか先が見えない今の状況で、非難して来られた方々に共通して必要なものは、そういう気晴らし的なものではないだろう。
 今これができるのではないかということと、今これが必要だということは必ずしも一致しないのだ、とわかった。
 そういう意味では、いまレッズが被災者のためにできる一番効果的なことは、義援金の募金活動だろう。ナビスコ杯があったはずの16日を皮切りに、この連休では19日(土)大宮で、西武ライオンズの選手たちの募金活動に協力。20日(日)、21日(月・祝)にはレッドボルテージで募金を呼びかけた。
 16日の募金のことは#279で紹介したが、実はレッドボルテージでやると聞いたときは「通行者が多い駅近くと違って、店内で募金を訴えても効果があるのだろうか」と不安だった。しかし行ってみて驚いた。選手たちは店の奥で募金箱を持つ係と、道路に面した店の前で呼びかける係に分かれローテーションで交代しているのだが、協力者の多いこと、多いこと。たまたまボルテージに買い物に来た人、ホームページで活動を知り協力しに来た人、それだけではなく、店のある旧中仙道を歩いている人が選手たちの呼びかけを聞いて、募金だけをしに店に入ってくれるのだ。店の反対側の歩道を歩いている人がわざわざ道を渡ってきてくれたことも少なくなかった。そういう、打てば響く、ような反応を見て選手もうれしかったのではないだろうか。
 そしてボルテージ2日目の昨日21日。休日ではあるが、朝から雨。人出は前日よりも少ないだろうから、募金の集まり具合もどうかと思っていた。だが両日とも参加した原口元気に終わった後聞くと首をかしげて「そんなことはない」と言う。実際、集まった金額は、前日より50万円も多い174万円余。原口の感触は正しかった。

 その原口を20日、21日と見ていて、気がついたことがある。ふだん、どちらかというとぶっきらぼうに見えることがある原口だが、募金箱を持っている表情がすごく優しいのだ。もちろん、ほかの選手たちも感謝の気持ちを表しているが、特に原口は表情が豊かに見えた。決して2時間も「作り笑顔」ができるほど、器用な男ではないはず。そのことを本人に聞くと、やはり意識していたわけではなく、ただ募金してくれた人へ心の底からありがとう、という気持ちになっているからではないか、と言う。自然にああいう表情が出るのは、人間として素晴らしいことだと思う。
 それがサッカー選手として、どうプラスになっていくかは、わからない。だが、未曾有の大災害がきっかけではあるが、この自主トレ期間、レッズが主で行った募金活動に「いま自分ができることはこれだけだから」と3回とも参加した、まだ20歳前の若者が再開後のピッチで何を見せてくれるか、注目してもよいと思う。
(2011年3月22日)

EXTRA
 その再開がいつになるのか、15時30分現在、まだわからない。事務所が停電で情報が途絶えているからかもしれないが。

※写真数枚 
(2011年3月22日)
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