Presented by 埼玉縣信用金庫
Weps うち明け話
#288
FAX
 2001年から代表に就任した塚本高志さんは、「レッズのサポーターたちは、日本一のサポーターになんかなりたくはない。日本一のチームのサポーターになりたいんだ!」と言って、選手やクラブスタッフの尻をたたいた。
 多方面にわたって他とは次元の違う応援ゆえに、日本一のレッズサポーター、と言われることが多かったJリーグ初期のころ、それが心地良くなかったか、と言われれば、心地良かったと思う。少なくとも取材していて、それは誇らしく感じた。
 だが「応援で日本一になっても仕方がない。チームを日本一にしなければ」と多くのサポーターが思い直し始めた。冒頭の言葉がいつ生まれたのか、誰が言い出したのかは定かでないが、僕がそういうニュアンスのことをはっきり思ったのは、1999年の12月31日だ。いや、もう年が明けていたかもしれない。いずれにしてもレッズのJ2降格が決まった約1か月後だ。

 テレビ埼玉をまだ「テレ埼」と呼んでいた時代。局のスタジオにサッカー関係者数人とレッズサポーター数十人が集まって激論を交わす生番組の収録が行われていた。テレビ朝日の「朝まで生テレビ」的な番組をテレ埼が企画して、実施したのだ。僕もテレビに映らないようにして、スタジオの片隅でその討論会を見ていた。
 詳しい内容は省くが、視聴者からのFAXも受け付けており、その中に鹿島サポーターからのものがあった。ニュアンスしか覚えていないが、それで十分だ。
 それは「レッズは弱い。だがチームは弱いが、レッズサポーターの凄さは認める」というものだった。
 FAXを送った鹿島サポは、純粋にそう思ってエール的なものを送ってきたのかもしれない。だが、もしレッズサポーターの怒りをあおろうと企図したものだったら、それはかなり功を奏したのではないか。
 チームは弱いが、サポーターは凄い。そう言われて喜ぶレッズサポーターが1人でもいただろうか。僕は痛烈な皮肉に受け止めた。そして「いつか、日本一のチームを応援する日本一のサポーター」、そう浦和が呼ばれるようになりたい、心に刻んだ。

 だから、ということではないだろうが、鹿島アントラーズは最も勝ちたいチームの一つだ。よく「絶対に負けたくない」と言うけど、そうじゃなく「勝ちたい」相手。もしかしたら鹿島戦では、自分たちが勝つところを相手のサポーターに見せたい、という意識がどこかにあるのかもしれない。そうだとしたら、あの日のFAXがその気持ちを引き起こしているのだろう。

(2011年5月20日)

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