Presented by 埼玉縣信用金庫
Weps うち明け話
#316
2011シーズンとは・その3
 12月18日(日)、浦和市内で、7月3日に亡くなった鶴川健さんの「旅立ちの会」が行われた。
 鶴川さんは「#301献杯」で書いたように、ご自分がなくなったことを「3か月間は他言しないように」と奥さんに遺言した。実際には8月に僕たちに知らされたのだが、お別れ会はすぐには行われなかった。「3か月間は」という本人の遺志を周りも受け止めて、時が経つのを待っていた。
 3か月間というと、10月上旬。だが、そのころになっても「会」が開かれるという話はどこからも来なかった。連絡が来たのは「4か月間」を過ぎた11月半ばだった。そして開催が12月18日。
 みんな、この日を心待ちにしていたはずだ。僕もそうだった。早くお別れしたかったわけではない。鶴川さんとの思い出をみなさんと語り合いたかったのだ。本来なら「縛り」が解けた10月上旬に開催されてもよかったはずが、12月にまで延びた理由。はっきりとはわからないが、もし僕も主催者の1人だったとしたら、リーグ戦が終わってから、せめて残留が確定してからと主張しただろう。自分たちが忙しいからではない。鶴川さんに「何やってんですか!こんな時に!」と叱られてしまうからだ。万が一、レッズが降格していたとしたら、「私の会なんて、レッズがJ1に復帰してからにしてください!」と言われていただろう。そんな人だ。
 その頑固さをよく知っている人たち約60人が集まった会だった。

 ところで、もし鶴川さんがご存命でお元気だったら、何度か会って(飲んで)、今季のレッズについてお叱りを受けていただろう。僕が叱られるのも変な話だが、鶴川さんとの関係で言うと僕の方がクラブに近い立場だから、会って話しているうちに、そうなってしまうのだ。もっとも、僕とは違うところからの情報を鶴川さんはいっぱい持っていたが。

4.ペトロの理由

「清尾さん、どうなんですか、ペトロは」
『選手に求めるのは、去年までとだいぶ違うサッカーですから、簡単じゃないですよね』
「そもそも、どうしてペトロだったんですかね。監督としての実績、ほとんどないでしょ。フィンケがやってきたサッカーを継続してやるって、確信がクラブにはあったんですかね」
 そう言われても僕にも詳しい情報はないから、推測するしかない。
『サポーターからの支持が見込める、というのが一番じゃないですか。入場者が減ってるのを何とかしたいから』
「どうしてペトロでお客が増えますかね。ペトロは絶大な人気があったのは確かですけど、それを知ってるサポーターが、いま何人いますか?」
『半分もいないでしょう』
「お客が減っているのは、埼スタがホームになってからレッズを見に来た人たちが、勝てないからとか、サッカーが面白くないからとかの理由で、来なくなっているんじゃないですかね。だとしたら、駒場時代に人気があった選手に監督をさせても、それでお客が戻ってくることはないんじゃないですか」
『ただ、入場者の減はクラブの経営にとって深刻な問題だし、何とかしたい、という思いがクラブには強いんじゃないですかね。それに、レッズに対する愛情、という点ではペトロは疑いようがない人だし』
「でも、清尾さんが言うみたいに、これまでのサッカーを継続する、と言っておいて、試合内容が違うじゃないか、と指摘されたら、引いて守るんじゃなくて試合の主導権を握るサッカーという意味では変わっていない、と説明するんじゃ、信用されなくなってしまいますよ」
『そのとおりだと思います』
「お客が減ってるんでしょうが、それでも2万人、3万人が埼スタに来てるのはどうしてですかね」
『昔も最下位をさまよっていたにも関わらず駒場は満員だったし、J2にいたときも土曜日ならだいたい1万6千人以上入ってました。それと同じ理由で、成績が悪くてもサッカーが面白くなくても、レッズが好きだから、というより自分らの闘いだからスタジアムに来るという人が多いんじゃないですか』
「私もそう思うんですがね、今みたいなことをやっていたら、試合に来なくなった人たちが戻って来る前に、今でも来ている人たちが愛想を尽かしちゃうんじゃないですか。あの人たちが、もうレッズは自分のクラブじゃない、と見放したら、どんなに強くなっても、二度と戻って来ないかもしれませんよ」
『それは僕も心配しています。浦和レッズから浦和レッズらしさがだんだん無くなってきている、という意見をいろんなサポーターから聞きますし』
「浦和レッズらしさというのは、どういうものだと思っているんでしょうね。今の代表やクラブのスタッフは」

 こんなに和やかな会話だけではなく、ときに喧嘩に近い激論もはさんで、酒が進んでいく。時間があるときの僕と鶴川さんは、そんな関係が多かった。今年だったら、上記のような話をたくさんしただろう。鶴川さんと話すことで、自分の考えをまとめることもあった。

 あらためて、鶴川さん。ありがとうございました。
(2011年12月21日)
EXTRA
 もう一度、鶴川さんとの議論を楽しみたかったので、勝手に登場してもらった。
 今季の監督がゼリコ・ペトロヴィッチに決まった理由はいろいろあると思うが、これもその一つであることは間違いないはずだ。僕も、ペトロにレッズの指揮を執ってもらうというのは興味深かったが、それがこのタイミングがベストだったのかどうか。結果として、シーズンを全うせずに解任という経歴を彼に残してしまったことが残念でならない。
(2011年12月21日)
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