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Weps うち明け話
#326
次の涙は
 いま指宿です。

 決してミシャ監督がはっきりそう言っているわけではないが、練習試合、あるいはゲーム形式の練習を見ていると、「こちらが主力組かな」とわかってくる。
 今回のように、10日間のキャンプで、6チームを相手に7〜8試合分も練習試合が組まれていれば、ほとんどの選手が計3〜4試合に匹敵する出場時間を与えられるはずだが、どちらの組でプレーするかは、我々以上に選手たち本人が気になるところだ。特に監督が替わったシーズンは、前年のレギュラー選手にポジションが与えられる保障はどこにもない。もっともレッズの場合は、監督が変わらなかったシーズンの方が少ないのだが。
 チームでの紅白戦的な練習では、時にメンバーが入れ替わる。着ていたビブスを脱ぐ選手、それを受け取って着る選手。両者の心持ちはどうなのだろうと思いながら、僕はその瞬間を見ている。

 その「主力組かな」と目される選手の1人に梅崎司がいる。08年にレッズに移籍してきた梅崎は、チームにいるときはレギュラー組にいることもあったが、その年のキャンプには代表などでフル参加していない。そして翌年からは、主力組でキャンプを過ごしたことがなかった。それどころかリハビリ中で別メニューの時期も少なくなかった。

「サッカー人生の中で、この時期にこういう立場でやれているのは初めてですね」

 梅崎の「初めて」という言葉は意外だった。「サッカー人生で」というのは、もちろんプロになってからの話だが、大分時代も最初のうちは主力組には入っておらず、力をつけたときはフランスに行っていたからだという。
 今季は、宮崎キャンプの仕上げに行った湘南ベルマーレとの練習試合を始め、指宿キャンプでのFCソウル、全南ドラゴンズ、カターレ富山との試合など、すべて「主力組」でプレーしている。3バックの左のアウトサイド。4バックのサイドハーフとは違い、担当するエリアは縦に長い。これまでの彼とは違う動きが要求されている。

「富山戦の後半途中からはだいぶ疲れてきました。でも運動量が要求されるサッカーだし、そういうポジションを任されているので、チームで一番走ってやろうと思ってやっています」

 そう語る梅崎の言葉には、「いっぱいいっぱい」という雰囲気ではない、余裕が感じられた。

「すごく充実しています。今季のオフも気持ち的に余裕を持って過ごせましたし」

 梅崎は、2010年の後半、ケガが完全に癒え、試合にも出るようになった。2011年のオフは、「始動時には身体を仕上げておいてやろう」というぐらいの気持ちで自主トレにも励んでいた。しかし昨季の前半はあまり試合に絡めず、背番号7が先発陣に名を連ねるようになったのは、9月の末からだった。
 昨季、梅崎の涙を何度も見た。ナビスコ杯準決勝のG大阪戦が終わった瞬間、両こぶしを握り締めて泣いた。そして決勝では鹿島の表彰式を見ながら悔し涙を流した。
 思えば、梅崎司が本当の意味で浦和レッズの選手として過ごしたのは、あの時期が初めてだったのではないか。サッカー選手として100パーセントの状態で毎日を過ごせ、サポーターの期待を背負って先発としてピッチに出て行く。そういう立場に戻っていなければ、あの涙を流すこともなかった。昨季の梅崎の涙は、真の意味で浦和レッズの主力になったからこそ流れたものだ。

 言わば、トッププレーヤーとしてのスタートライン。そこに立って梅崎は2012シーズンのキャンプを過ごしている。今季、もう涙はいらない。次に赤いユニフォームの袖で顔を拭うのは、彼がこれまで得たことのないもの=タイトルを自分自身の力で獲得したときであって欲しい。
(2012年2月17日)
EXTRA
 さて、今日はKリーグ覇者の蔚山現代戦。韓国勢にまだ勝っていない中で、どんなプレーを見せてくれるか。指宿に来て、練習試合のゴール8点は全部写真に撮れているが(オフィシャルの写真は俺だぞ〜って、普通かそれぐらい)、まだ梅崎のゴールを撮っていないのだ。おっと、試合が11時15分からに早まった。もう行かなきゃ。

(2012年2月17日)
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