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Weps うち明け話
#329
監督にふさわしい理由
 開幕して初めての更新が今日。遅くなりました。
 今さらだけど、アウェイでの開幕戦の勝率の悪さは今に始まったことではなく、一度も勝ったことがないのだから「勝率」と書くのさえ憚られる。
 だけど、こう思うのだ。
 シーズンの成績が悪い→翌シーズンの開幕戦はアウェイになることが多い。
 シーズンの成績が悪い→たいてい監督は交代する。
 つまりアウェイで開幕戦を迎えるときというのは、監督が替わって初めての公式戦であることが多いということだ。始めて2か月足らずでは、まだチームが十分出来上がっていないから勝てないことも多い、と。それにしても14戦して3分け11敗の理由にはならないが(97年と03年はナビスコ杯の初戦を開幕として計算)。

 そんな言い訳を書こうと考えながら3月11日、広島から新幹線で帰ってきたのだが、17日、20日というホーム連戦に加え(なんで今年は春分の日が21日じゃないんだ!)、MDPの体裁や内容を大きく改編したことで例年にないほど忙しく、今日になってしまったという次第だ。
 しかし、あの超忙しい17日、20日を経験したせいか、今回のMDP403号は順調に進み、校了を待ちながら、何と試合前々日の木曜日にこれを書いている。

 今回、書こうと思うのは監督のことだ。
 クラブが監督を替えるとき、次期監督を選ぶ基準をいろいろ挙げる。その項目のほとんどが、前監督のマイナス面、不足していた要素を強く挙げることが多い。
 たとえば、かつてレッズには「監督が日本のこと日本人選手のことをよく知っている方がいい」という基準があったと思う。しかしオジェックからゲルトに替わり、さらにその後は、初めて日本で指揮を執るフィンケ。日本のことを知らなくてもいいから、基礎からしっかりやってくれる人、ということだったのだろう。
 フィンケからゼリコに替わったときに、「レッズのことをよく知っている人」という項目があったのも同様だ。
 すべての要素を兼ね備えている人を連れてくるのは難しいから、最低限これだけは、というポイントがある。それは前任者にもっとも足りなかったもの、ということになるのも仕方ないのかもしれない。

 そういう監督選びの要素に、こういうのはどうだろう。
 それまでJクラブの指揮を執っていた人で、レッズに対する勝率の良い人。
 日本とJリーグを良く知っていた方がいいことは前提として、その中でもライバルとしてレッズをよく研究し、敵として知っている人を今度は監督に迎えたら、少なくともレッズのマイナス面はよく見えるだろう。「かつてのアジア王者」「ビッグクラブ」「5万人以上のスタジアム」などという聞こえの良い言葉は横へ置いて、レッズにとってもっとも耳の痛いことをズバリと指摘する人。その人に任せたら、少なくともある部分は確実に向上するのではないか、と思ったりする。

 そういう意味で、感心したのは02年にオフトが就任したときのことだ。
 記者会見で「レッズサポーターについてどう思うか」と聞かれたとき「磐田の監督時代、選手にはこう言っていた。最初の20分は相手の応援がすごいだろう。だが、しばらく我慢すれば静かになるはずだ、と」と答えた。何のお世辞もへつらいもなかった。
「この人、すごいかも」と思ったし、実際にすごかった。自分の評判がどうだとか、やっているサッカーが面白くないとクラブの代表が公言しようが、構わなかった。契約時に森孝慈GMとかわした約束を果たす。そのことだけを考えていたようだった。
 サポーターにおもねることもなかった。僕は、少しは愛想の良いことを言って欲しかったので、何度か水を向けたが、「応援してもらうのはありがたい。今日もよろしく」以上の言葉は返って来なかった。
 そのオフトがやめるとき、僕が「あなたは就任の記者会見でレッズサポーターの印象を聞かれてこう(上記)言った。その印象は2シーズン経った今でも変わっていないか」と聞いたら「よく覚えてるな、そんなこと」と笑いながらこう言った。
「レッズサポーターは最後の瞬間まで粘り強く応援を続けてくれた。それによって勝てた試合もあるだろう。レッズサポーターは本当にナンバー1だ。どうかこれから10年もナンバー1でいてほしい」。
 僕が言わせたわけではない。サポーターが言わせたのだ。餞(はなむけ)の言葉として無理に言わせたのではなく、彼が以前レッズサポーターに対して抱いていたイメージを変えるような応援を、2年間してきたということだろう。実際に僕もそう思うし。

 5シーズン半、広島の監督を務め、10回レッズと対戦してきたミシャ。ミシャ時代の広島はレッズに対して分の良いチームではなかったが、自分が日本に来たシーズンにリーグ優勝したレッズ、そして自分が率いる広島が降格したシーズンにアジア王者になったレッズ。ほかのチームよりは注目していたのかもしれない。どれほどレッズに勝ちたかったかは、2010年の埼スタでの対戦で勝った後の記者会見で「ビールでも飲みたい気分だ」と言ったことでもわかる。ライバルチームの監督として、何も足さず何も引かずに冷厳な目でレッズを分析していたのではないか。
 ミシャに監督になってもらって正解だった。そう思う理由の一つを、土曜日のMDP403号に書いた。


(2012年3月29日)
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