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Weps うち明け話
#334
6人先発規定〜もし僕が…だったら
 あ、社長。私、考えたのですが、これをJリーグに提案しませんか?絶対、良いと思いますよ。

<何だ?何を提案するんだ?>

 Jリーグの規約に「最強チーム」という規定があるのは、知ってますよね?「ベスメン規定」とも言われてますけど。

<もちろん、知ってるよ。「Jリーグ主催のリーグ戦とナビスコカップには、その時点における最強チームで臨まなければならない」というやつだろ>

 そうですけど、それに「当該試合の直前5試合のリーグ戦で1試合でも先発した選手を6人以上先発させなければならない」という具体的な人数制限が入っているのも知ってます?

<数までは覚えていなかったが、聞いたことはあるな>

 その「最強チーム」規定の中から人数制限の部分を削除するようにJリーグに提案するのはどうでしょう?

<ちょっと待て。大会の運営やレギュレーションはJリーグが決めることだ。うちが口を出すことじゃないだろう>

 それが理由大ありなんです。Jリーグの主催試合で「最強チームで臨まなければならない」という規定は元々あったのですが、「当該試合の直前5試合のリーグ戦で1試合でも先発した選手を6人以上先発させなければならない」という人数の規定が追加されたのは2000年からなんです。

<2000年というと、浦和レッズがJ2にいた年だな>

 いや、それは関係ありません。
 あるチームの監督が過密日程がきつくてリーグ戦を優先するからと「ナビスコ杯には控え選手を出す」と明言したのがきっかけなんです。あまりにも露骨にその監督が発言したものだから、Jリーグとしても「最強チーム」規定違反の疑いで事情聴取したんです。クラブ側が「現時点ではこれが最強チーム」と弁明したので、処分のしようがなく終わったのですが、これがきっかけで「6人先発」という具体的な人数と、違反したときの罰金などの規定が加わりました。

<そんなことがあったな。だが、その人数規定を外す方がいいんだ?>

 この規定には、代表選手や外国籍選手、ケガ人が出た場合などの例外も設けてあるんですが、それでも「その時点での最強」という判断は当該チームの監督に任せるべきで、人数制限などで縛りをかけるべきではない、という声が強いんです。特に水曜日に行われることの多いナビスコ杯は、リーグ戦と合わせて中3日、中2日という連戦の間になります。どの選手をどこで使って、どう休ませるかというのは監督の裁量に任せていいのではないかということです。

<だが主力選手の多くを試合に出さないというのは試合を見に来てくれる人に失礼だから、ということで、そういう規定ができたと聞いたぞ>

 たしかに興行ですから、そのチームの持てる力を100パーセント発揮しなければいけないと思います。しかし何かの決勝であるとか、シーズン最終節だというならともかく、試合はまだまだ続くんです。一つの試合で全力を出し切って良いプレーを見せても、次の試合は戦力ガタ落ちというのもプロとしてどうかと思いますよ。いろんなことを加味して、すべての試合で良いプレーが見せられるようにするのがファンサービスだとも言えます。
 それに、どの選手が主力かというのは絶対値で決めらることじゃないんです。たとえば、相手のFWに背の高い危険な選手がいれば、他の面より空中戦の強さがDFを選ぶ基準になるかもしれません。相手と状況によって先発選手を替えることは、良い試合を見せるために必要なことなんです。
 それは疲労によるパフォーマンスの低下なども考慮に入れないといけないということです。ヘトヘトの日本代表選手より、フレッシュなルーキーの方が良いパフォーマンスを見せられるかもしれません。たしかに有名選手を見に来る人も多いかもしれませんが、ピッチで試合をするのは生身の人間です。名前がボールを蹴るんじゃなくて選手がボールを蹴るんですから。

<それはそうだな。93年の大会から日本代表選手がいない時期に予選リーグをやることが増えて、大会の価値が低く見られそうだったから、それを逆手にとってナビスコ杯を「若手の登竜門」という位置づけにしたんだ。96年から「ニューヒーロー賞」も新設して、それを確固たるものにした。若い君は知らんだろうが>

 ニューヒーロー賞ができたときに入社はしていませんでしたが、レッズファンだったから知ってましたよ。知ってますか?ニューヒーロー賞を獲ったのはレッズの選手が一番多いんですよ。

<その話は、いま関係ないだろ>

 そうでした(苦笑)。
 何が言いたいかというと、ファンは自分のチームに勝って欲しいという願いと同時に、ふだん見られない自分たちの選手を見たいという気持ちもあるんです。ピンピンしているレギュラー選手を外してまで若手を出して欲しいとは言わないにしても、疲れている選手を休ませるために若手を出すというのは、むしろ歓迎する気持ちが強いです。そういう対象となる試合は、水曜日に行われるナビスコ杯のことが多いですし、多くのファンは「ナビスコ杯では若手を出して欲しい」と思っています。Jリーグが謳っている「若手の登竜門」というのは完全にファンの間にも定着しているんですよ。それなのに、その登竜門を「6人先発規定」で塞いでしまうようなことは、ちょっと筋が違うんじゃないかと。
「最強チームで戦うこと」という規定そのものは必要だと思うんです。でも「6人先発」規定は、いろいろ合わないところが出てきているから改めた方がいいと思います。特に顕著になってきたのが2009年からで、この年から予選リーグが7チームで2枠を争う方式になりました。昨季は変更されましたけど。7チームのうち2チームしか決勝トーナメントに進めないというのは、予選リーグの第6節、第7節が消化試合になるチームが出てきます。「6人先発」規定の不都合さがよりクローズアップされてきたんです。

<君の言いたいことはわかった。だが、どうしてその提案をうちの会社がするんだね?>

「6人先発」規定ができるきっかけになったのはナビスコ杯ですし、いろんな不都合が言われている中で、この規定を変更できない理由の最大のものが、レギュラー選手を休ませることで、大会の価値を下げることになってしまうという、特別協賛スポンサーへの配慮だと思うんです。そこがある限り、変わらないでしょう。その壁を取り除けるのは我が社だけです。

<ヤマザキナビスコカップを、より多くの人から愛してもらえる大会にするために、「6人先発」規定を外して欲しいと提案するわけか。ヤマザキナビスコ社自身が>

 そうです。より大会の特色がはっきりしますし、すでに大会自体は定着していますから、人気が下がることはないと思います。その上、そのことが伝われば、多くのサッカーファンから「ナビスコ、よく言った」「ナビスコ、わかってるな」と言われることは間違いありません。私自身が仲間のレッズファンからそういう意見を聞いていますから。我がナビスコ製品の売り上げアップにもつながるんじゃないでしょうか。

<なるほど。売り上げアップも魅力だが、我が社への配慮が逆にマイナスを生んでしまっているのなら、こちらから提案してやらないとJリーグも言い出しにくかろうな。わかった。次の役員会にかけてみよう。ご苦労だったね>

 ぜひ、よろしくお願いします。

<ああ、それから君。この間、5月16日のフロンターレ−レッズ戦のとき、等々力競技場に君がいたという話を聞いたのだが本当かね?あの日、君はマーケティングのため、と言って18時に社を出て直帰したと思うが、そのまま等々力に行かないと19時に着くのは無理じゃないかね>

 え、あ、いや、それは、あの…。

<そうか、今回の提案の裏付けを現場で取っていたんだな。まさにマーケティング活動だ。よかろう>

 そ、そうなんです。ですから社長、6月6日も鳥栖でマーケティングしたいので出張にしてもらえませんか。

<ええかげんにせんかい>
(2012年5月24日)
EXTRA
 もし僕が、ヤマザキナビスコの社員だったら、でした。
 ナビスコ杯のときに代表が抜けると言っても、Jクラブにいる日本代表選手って少ないなあとあらためて思った昨日のアゼルバイジャン戦だった。
 さあ「もし僕が…だったら」は、シリーズ化されるだろうか?

(2012年5月24日)
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