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Weps うち明け話
#340
9,963,807の顔
 336か。
 お、旧浦和市主要部の郵便番号だな。いや、デジャヴではありません。この書き出し、間違いなく2回目です。

 ただし今回の336は、コラムの通し番号ではない。
 先日、7月7日のサガン鳥栖戦が、1993年5月19日の名古屋グランパスエイト戦から数えて、浦和レッズのリーグ戦ホームゲーム通算336試合目だったのだ。これにはJ1だけでなく、2000シーズンのJ2リーグ20試合も含んでいる。
 実は試合数をテーマにしたかったのではない。あの鳥栖戦で、レッズのリーグ戦ホームゲーム入場者が通算9,963,807人に達した。つまり通算1千万人に迫ってきたのだ。

 知ってのとおり。336試合の中には、古くはJリーグ初の優勝が決まった93年7月7日の鹿島戦や、富山のホームゲームでサポーター約30人がグラウンドレベルに飛び降りた94年11月19日の横浜M戦、最近では鹿島の3連覇を見せられた09年の最終戦や、柏が初優勝した去年の最終戦も含まれている。J2降格が決まった99年11月27日の広島戦も。
 悔しい思い出ばかり挙げる必要はなく、福田正博がJリーグ初の日本人得点王に輝いた95年11月25日の横浜F戦、初のステージ優勝が決まった(決めた、とは言いにくい)04年11月20日の名古屋戦、リーグ優勝を決めた06年12月2日のG大阪戦、J1復帰を決めた00年11月19日の鳥栖戦もホームゲームだった。

 336試合で、のべ9,963,807の顔があった。
 同じ人が何度も来ているのだから、顔の数はそんなにないだろうって?
 いや、同じ人でも昨日の顔と今日の顔が微妙に違うように、試合のたびにその人の顔は違っていたはずだ。思いが違っていた、と言ってもいいかもしれない。
 これを読んでいるあなただって、6月23日の仙台戦と7月7日の鳥栖戦では、試合に臨む思いが違っていただろう。終わってからはもっと違っていたはずだ。そして思いは顔に出る。
 僕などは喜怒哀楽が顔に出すぎる、とよく言われるが、そうでない人でも微妙に変化する。336試合すべてに来た人がいたとすれば、336通りのその人の顔がスタジアムにあったはずだ。

 そして一方、共通したものもあった。それは、のべ9,963,807人のうち、ビジターファン・サポーターを除く、ほとんどの人の胸にあった「レッズ頑張れ!」の気持ちだ。その度合いや表現方法は違っていても、レッズが好きだ、という気持ちは共通していたはず。思いに色がついていたら、駒場や埼スタの上空は真っ赤になっていたのではないか。

 99年、レッズが残留争いをしていたころ、僕はスタジアムに行ったら、試合前に多くのサポーターと握手することを自分に課していた。それも今回は前回より多くの人、次回はさらに多くの人、というふうに試合を追うごとに増やしていくことを、自分の義務と決めていた(僕と握手した記憶のある人、いるでしょう)。
 50人くらいになると結構大変だった。アイドルの握手会みたいに、自分はそこに居て並んだ人が握手していってくれるわけでもないし、誰彼かまわず握手を求めていくわけでもない。ちゃんとお互いに顔を知っていて、今日は頑張ろうね、と握手してもおかしくない関係の人でないと、引っ込み思案の僕には無理だから、そういうサポーターが何人いるか、自分への試験みたいなものでもあった。
 その自分の小さな交友範囲を思うと、数万人が気持ちを一つにするホームゲームというのは素晴らしい力を持っているものだし、それがのべ数で埼玉県の人口の1.4倍近くになろうとしているのは、すごいことだと思う。

 36,193人。
 次のホームゲーム、7月28日の磐田戦で入場者がこの数字を超えれば1千万人の大台に達する。Jクラブの中で最も早く、そしてクラブ創立20周年を記念するこのシーズンに、ここへ来たことに誇りを持ち、その一つひとつの顔にあらためて感謝したい。
 スタンドの人々の顔は、入場者数ではなく試合の内容と結果で変わるものだと思う。28日、集まった人の(うちビジターファン・サポーターを除く)多くが心の底から笑顔になれるような試合を期待している。
 だが、後半30分過ぎにオーロラビジョンに映し出される数字が上記を超えていたら、いつもより少し濃いめの喜びが胸に去来するに違いない。
(2012年7月13日)
EXTRA
 チケットをもぎると、くす玉が割れて紙テープと紙吹雪が舞い「パンパカパーン、おめでとう、あなたが1千万人目のホームゲーム来場者です」…などということはない。
 特に、このクラブはそんなことをしない。入場者1千万人達成というのは1千万人目の人だけではなく、1人目から9,999,999人目の人たちと共に築き上げた栄誉だからだ。
 磐田戦に訪れた人みんなが1千万人を構成する1人であると同時に、記念すべき日の目撃者でもある。う〜ん、チケット買って入りたくなって来たぞ。もちろん仕事はするけど。

(2012年7月13日)
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